donor firstの視点でクラウドファンディングの返礼品を考える~公益財団法人パブリックリソース財団から学ぶ~

設立から一貫してdonor first(寄付者起点)のポジションで運営している公益財団法人パブリックリソース財団。個人的に好きな団体なので、いつもチェックしているのですが、自分が担当ファンドレイザーだったらこういうことしたかった!と思えるクラウドファンディングの返礼品を提供されていたので紹介したいと思います。

パブリックリソース財団とは

公益財団法人パブリックリソース財団は、2000 年より、特定非営利活動法人パブリックリソースセンターとして運営を開始し、NPOなど非営利事業体のキャパシティビルディングやマネジメント強化、SRI(社会的責任投資)にかかる企業の社会性評価やCSR 支援事業、そしてオンライン寄付をはじめとする寄付推進事業などを展開してきました。そして、2013 年1月、「公益財団法人パブリックリソース財団」となった歴史ある財団です。

・寄付と助成実績

2017年度は5,500件、約1億3千万円の寄付を受け、約7千4百万円の助成を行いました。

・donor firstとは

パブリックリソース財団の最大の特徴はdonor first(支援者起点)であることです。事業報告書に説明があるので抜粋します。

パブリックリソース財団は「ドナーファースト」、寄付者起点の財団です。 寄付者という個人(または企業)の持つ意志を尊重するものですが、その意志の中に他者との「分かち合い」の精神を見出します。 弊財団が掲げる「ドナーファースト」とは、寄付者個人の利益を目的とするのではなく、 寄付者の持つ「人間愛を基本とした利他性」という価値を尊重するものです。 それはすなわち、「ヒューマンファースト」につながると、私たちは考えます。 例えば、「オリジナル基金」をつくるとき、誰を支えたいのか、何を大切にしたいのか、 寄付者と一緒に解決すべき社会的課題を見つけ出し、基金をつくります。 そして、最良のパートナーとなるNPOや社会的企業あるいは有為な若者を見つけ出します。 寄付は助成金、奨学金となってパートナーの活動を支え、寄付者が望む社会へと一歩一歩近づいていくのです。 その実践の成果を測り、感謝とともに寄付者にお伝えするとき、寄付の手ごたえを実感していただけます。 このような「寄付・助成・実践・成果・感謝」が、新しい価値と社会を創造するフィランソロピーのサイクルなのです。 寄付者お一人おひとりの思いや志が広がるとき、 誰もが希望を失わず、生きがいをもっていきいきと生きられる社会を享受できるのだと信じています。

パブリックリソース財団で基金をつくると、以下のような寄付をNPOにすることができます。これは、寄付者が直接NPOに寄付をする行為ではなかなか得られない、非営利活動について熟知している財団だからこその付加価値であると思います。これが100万円から設定できるのはすごいことです。

支援者の思いを聞き、信頼できる寄付先を選定・助成し、報告だけでなく、その団体を伴走支援まですることで、寄付のインパクトを最大化してくれます。

・「信頼できる」寄付先NPOの選定と寄付する仕組みの提供

寄付先となる「信頼できる」NPOの選定を積極的に行っており、合わせて寄付をする仕組み「Give One」も提供しています。名前の由来は「だれもが所得の1%を寄付する社会」の実現です。2001年からサービス開始の前身のガンバNPOの仕組みから換算すると18年以上の実績がある日本で最初のオンライン寄付サイトといえます。

このサイトに登録するには、審査があり、①先駆性②リーダーシップ③信頼性④持続性⑤オンライン寄付への適合性をクリアした団体が掲載されます。そして、毎年活動報告書の提出が必要で、不正行為があった団体はリストから外されます。最近は休眠団体や、活動の実績はないが寄付だけ集めてある団体が多い中で、こうした一定の基準を超えている団体をリストするのは、小さい規模であってもいい活動している団体に寄付したいと考えている寄付者にとって価値があります。

あい基金のクラウドファンディングの返礼品について

こうしたdonor firstを貫いているパブリックリソース財団の基金の1つに『あい基金』があります。そのクラウドファンディングの返礼品が寄付者の気持ちに応えるよいものだったのでご紹介します。

・あい基金とは

パブリックリソース財団では、寄付を集め、それを原資に非営利団体に助成をする基金を複数管理しています(2017年度で17基金)。その中の1つである、あい基金は2015年12月に日本初の女性のための草の根基金として誕生し、様々な地域課題の解決向けて取り組む女性を応援する目的で開設されました。

あい基金は、企業、行政、大学、NPOなど多様な場で働く女性や、企業が立場を越えて協力する、日本初の、女性のための基金です。豊かになったはずの日本に立ちはだかる女性の貧困問題は、非正規雇用やシングルマザー、親の介護などに起因し、負の連鎖が次の世代に及ぶことで将来の経済不安に繋がる深刻な社会リスクをはらんでいます。あい基金は、寄せられた寄付をもとに、地域社会の課題解決を目指しながら、女性がいきいきと働く”生業”の場づりくや女性の潜在的な力を発揮できる取り組みを実現するNPOや社会的企業などへの資金提供を行います。

・あい基金のクラウドファンディング『ギビングサークル』とは

そんなあい基金は2019年6月10日から8月9日までに100万円を集めるクラウドファンディングを寄附型のAll or Nothingで行なっています。

クラウドファンディングでは、寄付者に対して返礼品を用意し、それを誘因にして支援を集めます。よくあるのが、グッズをあげたり、活動報告会にご招待、代表が訪問してお礼といった団体から寄付者に対して一方的にお渡しするものです。

今回のクラウドファンディングのページでは以下の説明があります。

「あい基金」は、これまで個人や企業の方からいただいた寄付を元に助成事業を行ってきましたが、寄付者の方々から、❝寄付がどのように役立っているのか、もっと現場を知りたい!❞、❝寄付で支援する先を自分たちで決めたい!❞、❝寄付者同士で交流したい!❞といったご意見を頂くようになりました。そこで今回私たちは、寄付者の皆様が、一緒にこの先の未来について考え、現地の活動家とともに、社会を主体的に変えていくことを実感できる場、あい基金ギビング・サークルを立ち上げました。あい基金のギビング・サークルでの活動を通じて、寄付される方自身が、地域の社会課題を深く学び合い、成長を感じながら、現場の活動家とともに、社会を変えることを実感できる、手ごたえのあるプログラムを目指します。

寄付者同士のつながり、寄付先団体の活動家とのつながり、社会問題を多様な視点で理解する機会などを得ることができます。

・ギビングサークルとは

今回ギビングサークルという言葉を初めて聞いたのですが、サイト内に以下の説明がありました。

ギビング・サークルとは、個人が自発的に集まったり、学校や教会、コミュニティなどを拠点に集まったりして少額の資金を出し合い、NPOや社会起業家を支援する活動集団をさすことが多いです。米国では、女性主導によるギビング・サークル活動が盛んになっており、多くの女性によるサークルが組織されていて、一人あたりの寄付額は多様です。日本においても、寄付者の方から、“どこに寄付したらよいのかわからない”、“よい団体や活動の見分け方がわからない”、“寄付がどのように役立っているのかわからない”、といった意見をいただくことも多々あります。そこであい基金では、寄付者自身が学ぶ場をつくることで、社会を変える手段の1つである❝寄付❞を通じて、現場の活動家とともによりよい地域づくり、社会づくりに参画できる仕組みを作りたいと考えました。

ちょっとづつお金を出し合い、活動家を支援しつつ、会話や勉強会で寄付者も学んでいく場のようです。

具体的には4つのメニューがあります。

1. 応援サポーター:3,000円

活動報告書の送付、月一メルマガの送付、

2. I Club member (アイクラブメンバー):10,000円

活動報告書の送付、月一メルマガの送付、授賞式・活動報告会(年1回)への参加

3. I Club Gold member (アイクラブゴールドメンバー): 30,000円

活動報告書の送付、月一メルマガの送付、授賞式・活動報告会(年1回)への参加、メンバー限定のセミナー・交流会への参加(年1回)

4. I Partners (アイパートナーズ):100,000円

活動報告書の送付、月一メルマガの送付、授賞式・活動報告会(年1回)への参加、メンバー限定のセミナー・交流会への参加(年1回)、書類審査で通過した団体の現地訪問、助成先選定の投票権(一人1票)

・素晴らしいポイントはどこか

このクラウドファンディングの返礼品の素晴らしいポイントは、I Partners (アイパートナーズ):100,000円の内容です。

これまでこうした助成団体選定プロセスは100万円だしてオリジナル基金を設定しないとできない経験でしたが、その1/10の価格で、寄付先の選定や現地訪問、助成先の決定の投票権などを得ることができます。また、同じように社会貢献しようとしている人たちとつながりがもてたり、関心があるが10万はちょっと・・・という人もどういうものかわかる情報提供の機会が提供されています。

これまで非公開だったプロセスを公開し、寄付者・財団関係者・非営利団体が参加してつくりあげるものにしていることが価値があります。また、ファンドレイジングの手法的に優れているのは、クラウドファンディングという単発寄付で、実利感→共感→仲間感という会員制度で必要な関与度を高める導線をつくりきっていて、これが素晴らしいポイントです。

さいごに

市民から寄付を集めて、すぐれた団体に助成をするコミュニティ財団は、なかなか寄付集めが難しい側面があります。それは、活動団体のように直接受益者に向き合っているわけではないので共感を得にくいからです。そうした中で寄付者と一緒に社会問題について考え、活動家と会話し、社会貢献したいと考えている人達と共に寄付先を決めていく場をつくっていくことでファンドレイジングする今回の手法は、本来コミュニティ財団が果たす役割を体現しているものです。こうしたギビングサークルによるファンドレイジングは多くの財団のクラウドファンディングに影響を与えるモデルとなるものと思っています。


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今給黎 辰郎

ファンドレイジング関連

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