BRAC創設者・会長のファズレ・ハサン・アベドさんのお話を聞いて~「ソーシャルビジネスが世界を変える」フォーラムの共有~

2019年2月12日に開催された日経Business Innovation Forumに参加してきました。世界的に有名なバングラディッシュのNGOであるBRAC創設者・会長のファズレ・ハサン・アベドさんの来日記念で「ソーシャルビジネスが世界を変える~持続可能な社会を目指して~」のタイトルでした。

登壇者

第一部 基調講演「ソーシャルエンタープライズが世界を変える BRACの取り組み」

アベド氏がBRACを創設された経緯や取組んできたことについてのお話がありました。

ファズレ・ハサン・アベド氏の経歴

BRAC創設者兼会長。1936年4月27日バングラデシュ生まれ。ダッカ大学とグラスゴー大学で学び、会計の専門家としてシェル・オイル社の経営幹部に就任するも、1971年のバングラデシュ独立戦争勃発後に退職し、ロンドンに渡って祖国独立戦争の支援運動に身を投じる。「ヘルプ バングラデシュ(Help Bangladesh)」というキャンペーンを展開し、バングラデシュ独立戦争への関心を高めるため資金集めに尽力した。戦争終結後、独立国となったバングラデシュの経済の壊滅を目の辺りにすると同時に、祖国に戻り始めていた数百万の難民救援と生活復興が急務となっていたため、バングラデシュ北東部の辺境地において帰郷難民の生活復興支援を目的にしたBRACを設立。以降、BRACとともに貧困農村地域の生活向上という長期的課題に取り組んでいる。貧困層の自立的な生活向上につながる能力開発を目指すアベッド氏のもと、貧困緩和と貧困層の権利拡大がBRACの第一の活動目的となっている。アベッド氏のリーダーシップと40年以上にわたる活動により、BRACは、事業の規模また多様性において世界最大の社会開発団体に成長。世界のNGO100団体を掲載したGlobal Journalで、BRACは唯一アジアでトップ10にランクされた。(抜粋)http://future-of-asia.nikkei.jp/asia2013/speaker06_01.html

BRACはグラミン銀行と連携してマイクロファイナンス(市民向けの小口の融資)を行うことでソーシャルビジネスを支援していました。例えば、当時100万人に貸付をしていたのですが、そのうち13万が裏庭などで野菜などの作物をつくる人達でした。生産量を増やすためには、良い種が必要ですので①BRACによりよい種を輸入、②バングラデシュ国内で種をつくるようにする、③改良する技術を習得し、他の作物にも拡げる、といった活動をBRAC主導で行っていました。

他にも、地域の職人が作る服や小物などの工芸品がなかなか売れない状況を解決するために、1985年にアーロンという店舗を都市部で開設し、プロモーションや販売を行ったり、買い手のニーズを伝えました。今では、8つの都市に21の店舗があります。

<アーロンのネットショップ>

また、畜産においては牛乳がなかなか売れなかったので、バングラデシュの首都ダッカに、低温殺菌や冷凍保存する施設を作ることで品質と価格を高めるようにしたり、乳牛の人工授精などで生産量を増やす仕組みをつくりました。

現在ではインフラ整備も進めていて、BRACネット(KDDIも株主)というISPを設立し、全土に高速ネットワーク網をつくる活動をしています。

アベド氏は「日本の明治時代は官民が連携し、産業革命を起こしていったが、バングラデシュでは官・民・NGOが連携しておこなっている」とコメントしてくださいました。確かに、日本の場合は、大きな会社がインフラや設備を作り、品質と量を全国に供給する仕組みの中に、関連の中小企業や、小売業がつながっていました。バングラデシュではこれらをソーシャルビジネスとして拡げていった背景が見えてきました。

第二部 パネルディスカッション「社会的課題解決への多様なアプローチから見るソーシャルビジネス」

以下のパネリストとファシリテーターによりソーシャルビジネスについて情報提供がありました。

冒頭、ファシリテーターの笠原様より、ソーシャルビジネスの定義は、社会問題をビジネスの手法で解決することを意味するとのお話がありました。

<パネリスト>
池上 秀徳氏 (公文教育研究会 代表取締役社長)
功能 聡子氏 (ARUN 代表)
山田 順一氏 (国際協力機構(JICA)理事)
吉野 慶一氏 (Dari K 代表取締役)

<ファシリテーター>
笠原 清志氏 (跡見学園女子大学 学長)

KUMON(日本公文教育研究会)の取り組み

社長の池上様よりお話がありました。公文は51か国で事業展開し、425万人に教育を提供しています。BRACと公文が連携しバングラデシュでも提供をしています。

公文は1954年に高校の数学教師であった公文公(くもん とおる)が息子のために始めた学習指導法を「公文式」として始めたものがきっかけとなりました。まだ利益がでていない1962年から児童養護施設で公文式による指導を開始しており、当時からソーシャルビジネスとして社会課題解決とビジネスを結び付けていました。今では、フリースクールや放課後ディ、児童発達支援施設などにも広げており、公文式の特長であるインクルーシブな学びの場を提供しています。

バングラデシュでは、富裕層・中間層向けにフランチャイズ契約に基づいた教室の提供を行い、その事業の利益を元に、貧困家庭向けの施設:BRACスクール向けに教育を提供しています。

「Profit Companyだから世界に拡がった」と池上様が言うように、持続可能性に必要となるのは利益が出続けることと、その組織の継続を多くの人によって望まれることが重要とのことでした。

Dari Kの取り組み

代表の吉野様よりお話がありました。Dari Kはインドネシアのカカオの生産から販売までを扱い、フェアトレードを超える取り組みをしています。

日本のが輸入しているカカオの80.6%がガーナから輸入されます。そして、0.3%がインドネシアです。日本から一番近いインドネシアからたくさん輸入できればコストも軽減されるのでは?という吉野様の問いから始まった事業です。

吉野様は実際にインドネシアに行き現地調査をしたところ、農業における収入は簡単にすると以下の式に表されます。

収入 = 生産量 × 価格

カカオは気候変動に敏感で、通年より雨が多かったり、台風の被害があると30%~50%も収穫量が下がってしまうそうです。また、価格はニューヨークやロンドンの国際相場で決まってしまうため、例え生産量が減っても価格に転嫁できない仕組みという仕組み的にもうからないようになっているそうです。

そこでDari KではDari K独自の基準をもうけカカオの生産、チョコレートへの加工、販売といった一連の流れ全てを管理し高価値化しています。

当日配布物から抜粋

気候変動が大きいことへの対応としては、カカオの木はパームヤシ等とは異なり他の植物と植えても大丈夫です。そのため、レイヤーを4つに分けてココナッツ、バナナ、カカオ、パイナップルと高さを変えて多様な作物をつくることで、カカオの生産量が落ちても他の作物でカバーするようにしています。

また、これまで多くの国際機関がカカオの生産技術などを伝えにきましたが、いくら生産力を上げても価格が決められていることや、気候変動への対応ができないことなどで生産者のモチベーションは上がりませんでした。Dari Kでは、独自基準で生産から販売まで一貫しているので価格を変更することができますし、買取りをしていることで、生産者もモチベーション高く取り組んでいるそうです。

残留農薬対応や体験ツアーのお話など興味深いお話が他にも多かったです。

ARUNの取り組み

NPO法人ARUN SEED代表の功能様よりお話がありました。ARUNは、カンボジアやバングラデシュなどの途上国の、農村起業家と投資家をつなぐことでソーシャルビジネスを推進する役割りを担っています。

投資家ー社会的投資機関ー起業家ー社会の関係性を以下のように解説してくださいました。ARUNは経営支援や情報、ネットワークによって投資家と起業家を結び付けています。

そして、事例としてbookmybaiというインドで多い家事労働者と企業とのマッチングの会社の事例をご紹介くださいました。インドではカースト制度や給与未払い、契約書の不備などで、なかなか家事労働者の労働力を活かすことができませんでした。そこを仲介し、マッチングの仕組みを提供しているのがbookmybaiです。

bookmybaiのような社会問題をビジネスで解決する事業を推進し、投資家から資金を募り、事業を成功させて、利益を投資家に還元したり、各種情報提供をしていることがわかります。

JICAの取り組み

理事の山田様より、JICAのODAの取り組み方針が大きく変わった「アラブの春」に関するお話が冒頭ありました。

外務省ホームページより抜粋:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol87/index.html

■2011年の「アラブの春」とは?
北アフリカのチュニジアで発生した反政府デモに端を発し,中東・北アフリカ諸国に拡大した「アラブの春」は,長期独裁政権が続いていたチュニジアやエジプトでは大統領が退陣,リビアでは反体制派との武力衝突を経た政権交代が行われるなど,かつてない大規模な政治変動となりました。それまで極めて限定的にしか政治参加できなかった一般の民衆が変革の原動力となった点がこの政治変動の大きな特色で,経済的格差や独裁政権による統制,政治参加の制限等に対する民衆の不満の高まりがその背景にあります。反政府運動に参加した民衆はツイッターやフェイスブックなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)や衛星放送等のメディアによって連帯と情報共有を図っており,かつてないスピードで国境を越えて民主化運動が拡大していきました。

当時JICAは、チュニジアにて大学建設などのインフラ整備を行っていました。その結果、大学進学率は4割程になり当時のアフリカの基準としてはとても高い割合となりました。しかし、大学卒業後に就く仕事がなく失業率は6割という状況で、格差は拡がっていきました。そこで起こったのがアラブの春です。JICAはこの教訓を経て、インフラ整備だけではなく包括的な取り組みをしていかなくてはいけないと認識したそうです。

現在SDGsに全世界が取り組む時代になり、それを実現するための費用はとても大きいものとなりました。毎年多額のODAの支出がありますが、それだけでは足りないので企業の支出が必要となっています。そこで、JICAは大企業・中小企業向けにSDGsビジネス支援として、基礎調査・案件化・普及、実証、ビジネスとそれぞれのフェーズに助成金を出して支援をしています。

例として、オフグリッド太陽光事業のWASSHAの事例をご紹介くださいました。アフリカの各地では住まいの明かりがランタンで賄われています。ランタンで使用する石油は30円/日ほど。それを太陽光パネルを使用した自家発電とランタンの組み合わせを25円/日で貸し出すもので、ランタンに比べてLEDで明るく、かつ携帯電話の充電にも使える優れたソリューションとして受入れられています。

まとめ

今回のフォーラムでソーシャルビジネスはSDGsを進める上で重要なソリューションの一つであることがわかりました。

印象に残っているのは、Dari Kの吉野さんが言っていた、「キャパシティビルディングで成り立つのがNPO」との言葉です。起業家が認識した社会問題を解決するために、組織基盤の強化のみで成り立つものと、そこから成長・発展して継続的に活動しないと解決できないものがあると思います。

いずれにせよ、社会問題解決のために活動している団体は、寄付や投融資を含めた幅広い意味の「投資」を受けて、事業・寄付・助成金含めた「ビジネス」を成り立たせる必要があることがわかりました。

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今給黎 辰郎

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