ヘルパースケルター 2章
20××年2月18日AM6:59
ピピピッ…
7時にセットしたアラームは、毎日1分前になり始める。 今までより、1時間多く眠れたことなのか、昨日の焼肉の影響かはわからないがかなり目覚め良く目覚めた。 シャワー、メイク、着替え等普段のルーティンワークも軽かった。 新生活とはこうもいいものかと
寺田:…今日から頑張ろ!
小さな気合いを入れて鏡を見つめる。 初日だしと白のブラウスに黒のパンツスーツにジャケット、コートと完璧な防寒で家を出る。 昨日は気づかなかったが、かなり家から職場までは近い。 地下鉄で2駅である。
駅から徒歩7分、ここまで誰にも会うことなく出社時間30分前に到着して扉を開けるも鍵がかかって入れなかった。
寺田:嘘…。まじで?
9時始業30分前出社は当たり前じゃないのかと思いながら前で待つ。
??:寺田さん?
寺田:はいっ!おはようございます!
??:おはよう
寺田:伊藤さん、いきなり後ろから声かけないでくださいよ。びっくりしたじゃないですか。
伊藤:あはは、ごめんね僕が鍵あけの日なのに時間より前に来させちゃったねー。
思ったより、明るい。○○さんに昨日怒られて引きずってないかは確認しておこうと思った。
寺田:大丈夫ですか?昨日のこと
伊藤:んー、大丈夫だよ!だって僕○○さんが好きなんだもんっ
はぁ?ボクっ娘のデレ?しかも○○さんが好き?
伊藤:正確に言うとそんなに怒ってないなーってすぐわかったし
寺田:そうなんですね
この人達にしかわからない距離感に疎外感を得た
伊藤:うちのみんなはね、みんなお嬢や○○さん、秀一さんに悠樹君たちみんな家族以上に大事なんだよ
明るい笑顔を見て、嘘はないんだろうなと納得した。
伊藤:事務部の中は入ったこと無いでしょ?昨日梅と一緒にデスク掃除したんだよー
寺田:ありがとうございます
可愛くデザインされた事務部の文字、なんとメルヘンチックな事かと思いながら中に入ると綺麗に整頓された事務所って感じだった。 その中で新品の携帯にPC、そして社員証が置かれた机を見つけて
伊藤:寺田さんは、そこの机ね
寺田:はい!
仕事が始まると思い、気合いを入れ直す。
伊藤:てか、寺田さんじゃなくて、名前で呼んでもいいかな?僕のことも理々杏って呼んでよ。タメなんだから
寺田:そんな、伊藤さんは先輩ですし…。てかなんでタメって
伊藤:あー、昨日ご飯行ってる間に色々調べさせて貰ったから。雇用保険とかあるから、ごめんね勝手に
寺田:あっ、それは別に大丈夫ですよ。すみませんまだ前の会社の源泉貰えてなくて…。
…ガチャ
梅澤:…うーす
寺伊:おはようございます(おはー)
梅澤:あー、蘭世ちゃんの源泉若月さんが回収したって
伊藤:じゃあ、完璧ですねー!
梅澤:今日からよろしくね
寺田:はい!よろしくお願いします!
梅澤:秀一さんから、今日の10時から蘭世ちゃん借りたいって聞いたからそれまでに基本的なセットアップだけしちゃおうか
梅澤:パソコンにカードリーダーが刺さってるでしょ、それに社員証かざしてみて
言われたまま、社員証をカードリーダーにかざす。 出勤の文字と、今日行うであろうタスクが全てデスクトップに表示される。
梅澤:今日のタスクは基本的にこれを見て欲しいかな、携帯には全社員の番号とメールアドレスが入ってる所属も多分入れたから
なんとまぁ行き届いた会社か…と感動した
寺田:私の今日のタスクが挨拶と…センター業務ってなってますけど何をするんでしょうか?
梅澤:あー、それはねうちの仕事の流れを覚えてもらう研修だよ
伊藤:しかも、蘭世ちゃん元々経理だったんだね。超即戦力じゃん
寺田:えっ、なんでご存知なんですか?
梅澤:あっ、言ってなかったねうちの会社定例会以外は自由出勤だからさ出勤時点で全社員に今まで蘭世ちゃんの今までの経歴が全社員に行くようになってんのよ
寺田:すごい…。誰が作ったんですかこんなシステム
入社したら普通は、自分でこんなのも作成しなきゃいけないはずなのに
梅澤:若月さんだよ、正確に言うと若月さんのお姉さんが作られた。挨拶とかめんどいだろ?って言いながら
伊藤:あー、言いそう笑
寺田:へー、私の源泉を回収して頂いた方とは別なんですね。
梅澤:「うん、私も何回かしか見たことがない若月さんの弟さんだよ
会社内にそんなに会わない人がいるとはそんなに大きな会社かと少し身構えながら次の説明を聞いた。
梅澤:タスクに関しては、全員が全社員のものに入れるから依頼は基本的にここを見てね。あと期日は絶対に書くこと
寺田:はい!
伊藤:てことで、明日の18時から歓迎会しますー!
伊藤が言い終わるタイミングで、梅澤さんと私のPCと携帯に通知音が来る。 参加者は3名、輪に入れたことが嬉しかった。
梅澤:私からは以上かな、そろそろ秀一さんが来られるからコートと荷物は持って動いた方がいいよ
返事はするがセンター業務で外出するのかと思いそそくさと荷物をまとめた
ちょうど9:50に秀一さんが事務部の部屋に来られた。
秀一:おはよー、寺田ちゃん昨日はありがとねー。
寺田:こちらこそ昨日はありがとうございました!
秀一:あの後、お嬢めんどくさくなかった?
タクシーで暴れに暴れていたがさすがに彼氏に言う内容では無いので苦笑いで返した。
それで察してくれたのか、秀一さんは梅澤さんを見て
秀一:もう行けそ?
梅澤:はい、システム説明と内容は伝えてます。
秀一:じゃあ、行こうか
寺田:はい!
梅・伊:行ってらっしゃいませ
あんな風に行ってらっしゃいと言われたのはいつぶりかわからないが嬉しかった。
~~
「…やっぱり、今回の1件あの人たちが絡んでいたか」
悠里:…はい。悠樹より先に報告をと思い寄せさせて頂きました。
遡ること1時間半前、上谷悠里は鈴木○○の家に居た。
○○:悠樹にはまだ伝えるな…。それとお前は大丈夫なのか?義理とは言え父親が今回の1件絡んでるんだぞ
悠里:あの日からこうなることはわかってました。なので俺にこのまま処理を…。
○○:あぁ、ただ今の現状でお前に指示は出せない。お嬢の決裁がいる
悠里:…ですが、悠樹個人で動き始める前に形をつけるべきです。奴が独断で壊す前に
○○:お前1人では無理だろう…俺も出る
悠里:○○さんが出張ることでは無い…。それこそお嬢が許さないはず…
○○:悠哉さんを殺るには、お前1人じゃ荷が重いよ。一緒に死んでやる
○○の笑顔は、悠里の張り詰めた感情を溶かすには十分だった。
○○:1日くれ、お嬢に話すのと悠哉さんをとる計画を立てる。
悠里:…わかりました。では悠樹の監視は引き続きしつつ、上谷悠哉の動向を洗い出します。
○○:あぁ、俺はお嬢の決裁を取っておくよ。無理なら独断だ
○○:…亡霊退治と洒落込むか
空虚な笑みが2人を包んだ。
~~
事務部を出た2人は、まず事務部の隣に入っていった。
秀一:おつかれー!
??:お疲れ様、急にどうしたの?
秀一:PC見てねぇのかよ、渡さん
奥宮:今来たとこでね、まだ出勤してないんだよ
秀一:まぁ、新人の挨拶ですよ
奥宮:奥宮渡です。よろしくね
寺田:…寺田です!よろしくお願いします
今の自分の仕事を作った人、悠樹くんがこの人を殺してしまうかもしれない人は思ったより数倍優しい雰囲気の持ち主で秀一さんと談笑してた。
奥宮:寺田さん、申し訳ないね今回の1件面倒に巻き込んでしまって
丁寧な口調。着ている服装も青のスーツには丁寧にプレスが施されていた。
寺田:いえ、きちんと回収できるよう鋭意務めさせて頂きます。
返答を聞いた、2人から笑顔がこぼれた。
奥宮:あぁ、珍しいなきちんと応対できる子は初めてじゃないか?秀
秀一:そうですね、梅澤も伊藤も当時は…うすっ、はーいしか言わなかったですもんね
奥宮:お前も○○も変わらんかったぞ、成長したなお前ら
秀一:ありがとうございます
奥宮:本当はカフェで積もる話でもなんだが、この後11時からアポがあってね。また、何かあれば気軽に声をかけてくれ
寺田:こちらこそよろしくお願いします。
2人は頭を下げ部屋を出た。
奥宮さんの部屋を出たあと、数部屋回ったが皆さん留守だった。
秀一:どいつもこいつも、定例会明けで飲んでやがったなー
と愚痴を言いつつ嬉しそうだった。
寺田:…奥宮さん良い方でしたね
この人たちを裏切っているかもしれない恐怖から言いきれていない自分がもどかしかった
ためらった言葉に秀一の反応は意外で綺麗な笑顔で
秀一:だろー!あのおっさんに俺は鍛えられたからよ。恩人だぜ
寺田はこれが秀一の魅力なんだと思った。綺麗なのだ驚く程に疑われている人でも関係なく平等にみんなを愛してる。こんな人になりたいなと思わせる魅力だった。
秀一:そろそろセンターに行くか。
遂にだ、頬を叩き気合いを入れる。 センターは麻衣の部屋と書かれた隣の部屋でかなり大きいフロアだったそこに4人の男女がタバコを片手に談笑していた。
秀一:おつかれー!
一同:お疲れ様です!
秀一:紹介しよう、今回入った事務部の寺田さん
寺田:寺田です!よろしくお願いします!
??:よろしくね、私はアテンドセンターのセンター長を務めてる北見明だ
タバコの火を消して、こちらによって握手をする。爽やか系の男の子だ。
北見:秀さん、あとのメンバーはこっちで
秀一:あぁ、任せるよ
北見:山崎怜奈、彼女は君と同じ民間上がりの子だから君が来てくれてすごく喜んでたよ
山崎:よろしく、お互い大変かもだけどがんばろ!
北見:あそこにいるのが、高宮望
北見さんもだが、ここの男性陣は総じてお顔がお強い…。
高宮:…可愛いっす。好きです!
寺田:へ?
??:ほんとにやったーw
手をぱちぱち叩きながら、笑ってる女の子、この子も可愛い…。
高宮:岩本!てめぇ嵌めやがったな
岩本:岩本蓮加っす、こいつ性犯罪者なんで近づいちゃダメっすよw
やはり、ここの人は一癖ありそう
北見:岩本、高宮その辺な
北見さんからもだ、この冷たい感じ周りをピリッとさせてくる。
北見:てことで、今日1日歓迎するよアテンドセンターへようこそ
パチパチパチ、皆からの暖かい拍手を受けて頭を下げた。
秀一:じゃああとは任せた!俺は○○のとこ行ってくる
北見:かしこまりました。じゃあ寺田さんまずはそこの空きデスクのパソコンに社員証かざして
寺田:はい
すごい、この会社社員証をカードリーダーにかざせばどこでも仕事出来ちゃう
北見:受付ってファイル開いてくれる?
言われるがままに開けるとメールボックスが開いた
開いたメールボックスを見て寺田は絶句した。未読メール999件+ということは最小値で1人あたり1000件、4人だったら250件は捌く計算だ。しかも驚きなのは全て、昨日の19時以降から今までに届いているのである
寺田:これをみなさんで?
北見:いーや、これを山崎と俺と3人で
北見:大丈夫、まずは届いた依頼を分類分けするのが俺らの仕事、その後は営業に振るのか事務部に振るのかそれともあの馬鹿2人に振るのかを決める
寺田:仕訳ってことですね。
山崎:やっぱり経理だったから得意?
寺田:ある程度は…頑張ります!
北見:昼までに済ますぞー
~~
伊藤:今頃、崎さんと北見さんに圧倒されてる頃かなぁ?
Excelを叩きながら、梅澤に振る伊藤
梅澤:んー、もしかするとエースになってるかもよ?笑
伊藤:北見さん達って化け物って言ってたじゃん梅
梅澤:寺田ちゃんも化け物ってこと笑
伊藤:明日聞こー笑
~~
寺田:北見さん、頂いた選考基準のシートから漏れたぶんは全てお2人に振ってよろしいでしょうか?
北見:NO.368の件なら共有から期日を本日解答にして流しちゃって
岩本:…蘭世ちゃんヤバっ
高宮:11時でもう800件捌いてる…
山崎:ふふふ
正直、この仕事は楽だった今までのように中身を確認してこちらで送信をするのではなく、ある程度のラインをつけて各所に割り振る、割り振り後の対応も迅速かつ丁寧に来る。 この会社、いる人間がめちゃくちゃ優秀なのだ寺田は初めて仕事が楽しいと感じていた。
~~
コンコンコン
秀一:居るぞー
悠樹:失礼致します。
秀一:珍しいな、どうした?
悠樹:稟議書のハンコ欲しくて…笑
秀一:ほんとそれでしか来ねぇなお前は、確認しておく期日は
悠樹:本日17時半に受け取りに来ます
稟議書を置き、悠樹は立ち去った
秀一:さてと、悠樹の稟議は…はぁ?
秀一:これはこれは、重たいな
内線からプルルルと響く
秀一:俺だ、どうした?
○○:会社か、いつもの喫茶店に12時に来れるか?
秀一:いいぞ、麻衣も呼ぶか?
○○:お嬢には後で話す。まずは2人きりで話したい
11:50
2人は何も言わずとも、10分前にいつもの喫茶店に集まる。
○○:早かったな
秀一:人の事言えるかよ。んでどーした?
○○:これに何も言わずハンコ押せ
秀一:上谷悠哉処理に関してか?
○○:…なぜそれを!
秀一:声がでけぇよ、悠樹がさっき持ってきた
○○:悠樹が?
秀一:あぁ、恐らく悠里以外にも探らせてたのかもな
○○:上谷兄弟の名前は伊達じゃないからな…。
○○:んで、秀どうする?俺のを通すか悠樹を通すか
秀一:…悠樹のは通せねぇよ。あいつのには悠哉さんだけでなく、渡さんのことも処理対象だった…。
秀一:もしかしたら悠樹は、諮問委員会を開かせたいのかもな…。
○○:俺らだけでなく、麻衣も巻き込んで通すつもりか…。悠樹の決行予定日はいつだ?稟議に書くだろ。
秀一:…予定時刻は明日の26時。場所の記載はない
○○:明日か…。まずはここを延ばすか
秀一:そうだな、今日の17時半に受け取りに来る。そこがチャンスだ。
○○:わかった、それまでに上谷悠哉の処理案を提示する。
秀一:すまない…。
○○:頭を下げんな、お前らを綺麗なままにするのが俺の仕事だ。
○○:…月は太陽がねぇとダメなんだよ
北見:すげぇな、もう終わったぞ
時刻は12:05期限の昼には間に合わず寺田は落ち込んでいた。
山崎:大丈夫だよ、普段より多いのにあの2人より早く終わらせちゃったんだから自信もって
寺田:でも、期限はお昼でしたし…。
北見:すまん、うちの昼は13時からだ
岩本:この時間なら、梅たちとご飯行けるねー!
北見:そうだな、美波に聞いてみるか!
梅澤さんのこと名前で呼ぶんだぁって北見さんを見てしまった。
山崎:あぁ、梅澤さんと北見さん付き合ってるから笑
2人が並んでイチャイチャしてるとか眼福でしかない。ありがとう神様
北見:…あっ、美波今から昼行こうとしてるんだけどどこ居る?…おう!わかった寺田さんやばいからうちにくれない?…そーゆーのじゃないよ
岩本:なんだかんだ、きたみんって梅にベタ惚れだよねw
高宮:提案して3秒で電話かけてたよ、場所どこだと思う?
岩本:どこでもいーよw
北見さんの電話が終わり、みんなで会社を出る。慣れとは怖いものでこの屋敷みたいな場所も2日目にして怖く無くなって、みんなと笑いながら話をしてる。 今までは、いつメールの返信が来るかわからずデスクから離れられなかったから皆で仕事中お昼に行くことなどなかった。
道中は、岩本さんと高宮くんが話しかけてくれた。 午後からは2人のお仕事に付いて行くらしい。少しだけ楽しみだった。
梅澤さんと伊藤さんは穴場だという定食屋さんにいて私たち5人を待っててくれた。
北見:早くきなよ、置いてくぞ
3人は笑顔で走った
To Be Continued
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