光浦靖子【後編】今年の目標は「ビッチ化計画(バブルよもう一度!)」

(このインタビューは2015年3月11日に掲載したものです)

推理小説仕込みのプロファイリングで相談者を丸裸にし、思いがけない暴走展開で悩みを笑いに変えてしまう光浦靖子さんのTVブロスの人気連載が、『お前より私のほうが繊細だぞ!』となって文庫本になりました。最近は、「エセ人見知り」に危機感を抱いているそうな。そんな光浦さんが見つけた新たな道筋とは—— 。

担当編集者の太鼓判!
すべての悩みは「お前より私のほうが繊細だぞ」という気持ちからきているという光浦靖子さん。感性が豊かで、細やかで傷つきやすいから、こんなに悩んでいるだというアピールでしょ、というわけです。そんなところまで見抜いている光浦さんですから、その回答の研ぎ澄まされ具合も格別です。私は「服装がヒョウ柄化する母」という悩みに対しての「現実的な自由を求めた結果、おばさんはヒョウ柄化します」という答えがとても好きです。
(幻冬舎・竹村優子)

みんなが弱気になっている気がする

—— お悩み相談をずっと続けていると、自分の悩みに対しても解決の道筋が見えてきたりしますか?

光浦 そうですねー。コラムの中では、さんざん人に「こうやりなさい」って言いながら、最後に「私? やるわけないだろ」ってよくひっくり返すんですよ。

—— やっぱり人と自分とは違う?

光浦 自分のことだと、感情が乗っかっちゃうもんね。顔も名前もわからない人のたったひとつの文章からだと、ずいぶん引いた距離でものを見るからいくらでも言える。でも、自分のこととなると感情が先走っちゃって、全然無理ですよ。

—— 世の悩みには「他人になら言えるけど」ってことがたくさんあるんでしょうね。

光浦 うん。悩んでる人って本当に多いよね。あと最近よろしくないのは、ニセ人見知りが多すぎる。

—— ニセ人見知り、ですか?

光浦 私も人見知りの代表みたいな感じだったけど、本当の人見知りは自分からそんなことは言えないってことがだんだんわかってきました。
 逆に自分から「人見知りです」って予防線を張る人は、ただの横着な人。そう言っておけば大丈夫、みたいな。

—— 「人見知りです」と言えば、自分からしゃべりかけなくても済むという感覚。

光浦 そう。で「繊細だから自分からは行けなくってー」とかさ。
 前回と言っていることが矛盾しちゃうんだけど……。コンプレックスを売りにして笑いに変える、それがお笑い。でも、最近は本当に弱い人じゃなくて、わりと普通の人が、ニセのコンプレックスを都合よく利用しちゃうんですよ。

—— わかる気がします。

光浦 私はお笑いと出会ったとき、なんてハッピーで素敵な世界なんだ! ってカルチャーショックを受けたんですよ。コンプレックスとか、みんなが恥ずかしがるようなことを言ったら笑いになる、だから見せることの方が正しいんだと思ってやってきた。でもそのうち、最初っから自分の負の部分を盛って見せるようになった。

—— 負の部分を盛る……。

光浦 自分のランクを一個下げとくと、得するじゃないですか。ケンカって、ポジションが上の方が損。キャリアも年齢も上の者が損するシステムだと思うんですよ。そうすると、いかに自分が弱いかを先にアピールしておけば、なんかよくわからない、目に見えない権利がいっぱい獲得できる。
 そういう利用の仕方を、みんながなんとなく感じて、わりと天然で実行して、ラクな方に行き始めちゃったのかなあってことを最近感じてます。

—— 確かに、最近普通の人が、“こじらせてる”とか自称するようになった気がします。

光浦 そうそう。簡単に言えば、女同士だと「私モテないし」って言ってたら敵にならない、みたいな。それのややこしいバージョンとか細かいバージョンが今世の中にいっぱいあって、それで全員が今弱気になっちゃってるんじゃないかなって。だって弱い方が楽だから。

—— 確かに。

光浦 やたらと低い階段の取り合いばっかりしてる。ちょっとしたことで「私は貧乏ですけど、金持ちのあの発言は~」って指摘したりね。自分を卑下することが、やっかみとごっちゃになりはじめとる気がする。なんかよろしくないよね。

2015年、光浦靖子はバブルなビッチに!?

—— 弱さを競い合うこの状況を、どう打破したらいいんでしょうね?

光浦 だから、別に芸人としてというより、ただの40代として、ちょっと考えてることがあるんですよね。いろいろ考えた結果、次にうちらがやらないといかんのが……。

—— なんでしょう。

光浦 「ビッチ化計画(バブルよもう一度!)」っていうコンセプトで、今年は生きていこうと。

—— えっ(笑)?

光浦 ごめんなさいね、すごく話が飛んでる気がして、これ、うまく記事にまとめられないと思うけど(笑)。今の話みたいに、自分のなかで長い長い、もっと細かい自問自答がありまして、出した結果が、「ビッチ化計画(バブルよもう一度!)」なんです。

—— えっと、ビッチ化計画はなんとなくわかる気もするんですが……、「かっこ、ばぶるよ、もういちど」ってなんですか?

光浦 いやね、私と同じ43歳の、結婚してないテレビスタッフがね、今年の正月、苗場にスキーに行ったらしいんですよ。それ聞いたときに大笑いして、なんてかっこいいんだ! と思ったんですよね。よし、じゃあ40代の、嫁にも行けない女がちょっとおもしろいことやるかと。小さな世界でバブルよもう一度と願うかと。

—— あー、確かに振り切れてて、かっこいいというか清々しいですね。

光浦 苗場ってのが、またたまらんよね。さっき、弱いふりが蔓延しているって話したけど、下へ下へって卑下することに対抗するには、バブル時代くらいに実力もないのに自信満々であることかなって。

—— 自信、ですか。

光浦 根拠のない自信ね。とにかくいつも少数のところへ行きたがるのは、商売柄もあるけど、クセなんですよ。で、いまもっとも少数なのは、セクシーさ……性に対する貪欲さ。あとは「この人バカじゃない?」って言われても「へへーん」って笑える、強さだと思って。いろいろ考えた結果、そして彼氏がほしいという切実な願いも込めて、2015年の目標「ビッチ化計画(バブルよもう一度!)」にたどり着いたんですよ。

—— 今までと真逆ですね(笑)。

光浦 真逆です。

—— でも、少数のところに行くっていうのは変わってないですね、きっと。

光浦 そうですね。

—— いちばん最初は人見知りであることが、人に言えない時代だったから、人見知りをあけっぴろげにする芸人さんたちがテレビでも注目を浴びた。それが広まって、そこに全員が乗っかっている今の状況に、光浦さんは危機を持ってるわけですね。

光浦 私もかつては確かに、開き直るとラクだなって思ったのよ。でみんなに「開き直ったほうがラクだよ」って伝えてるうちに、開き直り合戦になってしまった。やっぱり人間、ラクすることばっかしてるといかんのだね。

—— ビッチ化計画の具体的な内容は決まっているんですか?

光浦 とにかくまずは髪を伸ばしてワンレンにする(笑)。

—— あははは、なんだかよくわからないですが、すごく楽しみです。

光浦 もうぼちぼちクソババアになってきたんで、想像しているよりも自分は強いんじゃないかなと思ってるの。多少バカにされても「うっせえコノヤロウ!」って戦っていこうと思います。

(おわり)

光浦 靖子(みつうら やすこ)
1971年愛知県生まれ。幼なじみの大久保佳代子と結成したオアシズでデビュー。バラエティ番組、ラジオ等出演するほか、舞台やコラム執筆など多彩に活躍。著書に、『傷なめクラブ』『男子がもらって困るブローチ集』『子供がもらって、そうでもないブローチ集』など。

構成:釣木文恵 撮影:吉澤健太

お前より私のほうが繊細だぞ! (幻冬舎文庫)

傷なめクラブ (幻冬舎文庫)

男子がもらって困るブローチ集 (Switch library)

子供がもらって、そうでもないブローチ集 (Switch library)

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IMAZINE編集部

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