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くんちゃん «小説»

くん姉、といつも呼んでいたの
6つ年上の姉従姉妹
彼女には4つ上の仲良しの姉が居て
ひとりっ子のあたしは
いつもすごく羨ましくて
二人の後を追いかけ回した

お前のお襁褓を替えてやったんだ、の話は
いい加減にしてほしかったけど

小学校にあがったら
くん姉と毎朝一緒に行くんだと
信じていたあたしは
家も小学校も違うし
そもそも
くんちゃんは中学生になるんだと言われ
大泣きしたのを覚えている

ブラジャーのことも
生理のことも
母より相談にのってもらった

お互い大人になり
あたしは早い結婚をして
実家を遠く離れ
くん姉は遅い結婚をして
実家の近くにアパートを借りたそうだ

偶然同じ頃に子供を産み
実家に帰ったタイミングで
何年かぶりに会った

二人目が欲しいんだけどね、と言うと
あたしはこの年で産んだんだもん
まだ大丈夫よと
あの頃のように笑った

くん姉はその後もう一人男の子を授かり
自分のことを後回しに
子供中心の暮らしをしたのだろう
病が見つかった時は
もう手遅れだったそうだ

幼い子供を二人残し
びっくりするほど
呆気なく

気丈な叔母は
父親が仕事の間
孫たちを預かり頑張っている

かみさまとやら
何故二人の子供から母親を奪ったのですか
一人だったら良いのかと言われてしまうのわかっているけれど
けれど
何故

お互い偶然にも
ありふれた名字の男を捕まえたせいか
子供の名前が古臭いところも
一緒だったね

あたしはその後は子は授からず
なんの因果か
薬を売る仕事についた
おかしいと感じたら
躊躇わず医者に行ってくださいと
つい客に余計なことを言う店員
姉ちゃんも同じ仕事してるってね
考えること一緒だね

貴女と同じ名前を見ると
小さく呟いてしまうの
くん姉
くんちゃん



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