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なおみはみな実になりたい

最近よく参加している異業種交流会では、会の最初にアイスブレイクの質問がある。自己紹介とともに、質問の答えをひとことで答える形式だ。

とある回の質問は「1日だけ誰かと入れ替わるとしたら誰になりたい?」

あこがれの芸能人になってみたい、猫になってゴロゴロしたい……それぞれの参加者が思い思いの回答を挙げていく。

そうこうしているうちに私の順番が回ってきた。どうしよう、これといった答えが思い浮かばない、とっさに出てきたのは

「そうですね、私、田中みな実とかになってみたいですー」

田中みな実さん。言わずと知れた有名人だ。しかし特に彼女の熱心なファンというわけではない。雑誌をめくっていてインタビューが目に止まったら読むかな、という程度だ。

キー局のアナウンサーを経て女優に転身し、バラエティ番組や美容雑誌でも活躍していて、なんかちやほやされててうらやましいな、という気持ちもないわけではない。

ただ同時に、表に出る立場として彼女が抱える苦悩も何となくではあるが想像できる。

ではなぜ私は田中みな実になりたいのか。ひとつ挙げるとすれば、「確かな技術力がありながらもそれを前面に出さずに戦える強さ」のようなものを感じるからだ。

そう感じるきっかけになったのが、毎週楽しみに聴いているポッドキャスト番組「OVER THE SUN」の一幕。

彼女はこの回に偶発的な形で数分間だけ登場するのだが、そのわずかな時間が強烈なインパクトだった。

この番組のパーソナリティーであり、アナウンサー時代の先輩にあたる堀井美香さんが彼女に「あなたいつも、私たちみたいなおばさんの相手して大変でしょ」みたいなことを投げかける。

すると彼女が芯の通った声でこう応えるのだ。

「そんなことない、とんでもないことです」

とんでもないことです。今どきこんな正しい日本語を使える人がどれだけいるだろうか。

大げさかもしれないが、私はこの短いやり取りに彼女の真髄を見た気がした。

あざとい小悪魔キャラ、のようなわかりやすい型にはめられがちな彼女だけれど、その役割はしっかりとこなしつつも、決してそれだけにとどまらない。

それまでの経験から得たスキルは存分に活用しながらも、「私はこれが得意です」「こういうふうにやりたいです」のような主張はせず、あくまで周囲や世間のニーズに合わせて自分の形を柔軟に変えていく。

同じことが自分にできるとは思えないけれど、1日だけ入れ替わることができたなら、彼女が放つ光のからくりがほんの少しでも理解できるんじゃないかという気がしてならない。



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