枯れることなく生きていけたら。

「今までの人生の中で全盛期はいつでしたか?」


数年前にライターをしながら掛け持ちで働いていたバイト先で、大学生の後輩にこのような質問をされたことがある。何気ない会話だったが、個人的にとても印象に残っている質問だった。


「今だよ」


自分はそう答えた。きっと彼は「学生時代だったよ」という答えを予想していたと思うのだが、自分の口から迷うことなく出てきたのは、「今」という答えだった。


当時は駆け出しライター・編集者で下積みの状態、それだけでは食べていけず、アルバイトをしなければいけない。社会的に見れば決して恵まれた立場ではなかったのだが、「プロの編集者・ライターになる」という目標に対して進んでいた頃で本当にそう思えていたのだ。


その後、ありがたいことにサッカー、スポーツの仕事に携わり、今も音楽という自分の好きなことの一つを仕事にできている。


そして、他にも将来的にやってみたいことはある。しかし、本当に自分の奥底にあるのは「好きなことを仕事にする」ことではなく、「自分を枯らさずに今を生きていく」ということなのだ。


30歳を過ぎ、20代には想像できなかった経験や、お仕事をさせてもらったりする機会に恵まれた。(もちろんトップの方々に比べれば、自分の経験など大したことがないものだ。)


しかし、それらの経験は、始めこそ緊張感や充実感を感じるのだが、積み重なり慣れていけばその状態が当たり前になってしまう。自分の成長を感じられる反面、新鮮さが失われていることで寂しい気持ちになったりもする。


だからこそ、植物ではないが、自分を枯らさないように常に今の自分に水を与え続ける。新しい要素も自分の中に取り込んで、新鮮さを失うことなく生きていきたい。自分の究極的な目標はきっとそういうところにあるのだ。


今の自分に水を与え続けながら生きていく。そして、その変化、成長を前向きに捉えて生きていく。それができている内は、「全盛期はいつでしたか?」という質問に対して「今です」という答えをはっきりと口にすることができるのだと思う。そんなことをふと思った土曜日の夜。

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