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Y Combinatorが教える困難の対処法

Airbnb、Coinbase、Dropbox、といった世界的なスタートアップを育てていることで有名な世界的アクセラレーターであるY Combinator(通称 YC)。そのYCのパートナーを務める2人が、トラブルや挫折、ネガティブなイベントが発生した時のメンタリティーについて紹介します。

以下、How to deal with setbacks から要約


トラブルは必ず起こる

Michael:
スタートアップ創業者としての経験、YCのパートナーとしての経験から言えるのは、トラブル・困難・挫折はいつか必ず来るという事です。一切トラブル無しで進むことはありえません。

Dalton:
スタートアップでの経験を今振り返ると、トラブルに対応し続けた日々だったように思います。まるで朝になると日が昇るように、トラブルも毎日やってきました。

Michael:
スタートアップにとってまず最初に経験する挫折が資金調達です。

Dalton:
「自分は特別だと思っていた」、「皆が調達できているから自分もできると思った」、このような幻想を現実世界は粉々に打ち砕きます。そしてうまく進まない状況に苛立ち、他人に責任があると思いたくなるのです。YCに応募してくれるスタートアップでも同じです。「自分は人脈があるので採用されると思った」、「友人が採用されたから自分もいけると思った」、実際はそんなに甘くありません。

Michael:
こういった挫折をうまく対処できる人と、そこで止まってしまう人の違いについて考えてみましょう。私が思うに、挫折を対処できる人の特徴はそこから何かしらの学びを得られる人です。YCで採用されなかったとしても、プロダクトを改善して翌年に再度応募してくる人たちです。反対にうまく対処出来ない人は、トラブルが発生するとそこでゲームセットと考えてしまう人たちです。

Dalton:
資金調達の話題に戻すと、私はこの話をよくします。それは、「資金調達に失敗した」というニュースリリースは表に出て来ないという事です。つまり、必然的にTechcrunchなどのメディアでは、成功記事が中心になり、読み手は誰でも成功できるような印象を持ってしまうのです。しかし、現実はラウンドが進む毎に調達件数は減るので失敗ケースの方が多いのです。表に出てくる成功記事の裏では無数の挫折が存在しているのです。


現実は映画ではない

Dalton:
映画を見ていると、挫折した主人公が突然ビッグチャンスに恵まれ、ドラマチックな音楽とともに大成功するシーンを見ます。

スタートアップはそんな世界ではないと断言します。むしろ真逆です。突然の大成功は存在しません。YCに採用されたとしても、資金調達に成功したとしても、地道にプロダクトを作り上げるのです。大口顧客をゲットしても、それで将来が確約されたわけではありません。ひたすら地道に、プロダクトを改善してはローンチする、という作業を継続していくのです。それがスタートアップです。

Michael:
しかも、それを10年近く継続しないといけません。創業して2、3年でエグジットしてお金持ちになれると思ったら大きな間違いです。

Dalton:
プロダクトのローンチも映画のように直ぐに顧客がついて、一躍有名なサービスに駆け上がるようなことはありません。大抵はローンチしても、誰の目にも留まらず、誰からも関心を得られず、静かな状態が続くのです。仮に注目されたとしても、「UIが悪い」、「誰がこんなの使うのか?」、「こんなプロダクト自分なら3日で作れる」、このようなネガティブコメントの方が多いのです。それに滅気ずに地道な作業を続ける事が成功する一番の近道なのです。これが現実です。


トラブル・挫折から学び、他人の手本になる

Michael:
私がスタートアップのCEOをやっていた時、一通のクレームが届きました。その時は、それが大惨事だと思ったことを覚えています。しかしその後、法律事務所からの嬉しくない手紙、イタリア総理大臣が所有する会社からの訴状、UFC(アメリカの総合格闘技団体)からの訴状、海賊版についての国会証人喚問、と試練が続きました。自分は他人よりも苦労したと言いたいのではなく、考えもしない事が次から次へと起こるのだという証拠です。

Dalton:
大きなチャレンジ、大きな課題を解決しようとするほど、トラブルと挫折も大きくなってきます。そういうものです。

トラブルはコントロールできません。しかし、トラブルにどの対応するか、感情をどう制御するかはコントロール可能です。最初は怒りや不安に苛まれる事もあるでしょう、徐々に経験を積み、トレーニングしていけば良いのです。最初からコントロール出来る人はいません。今では偉大なアントレプレナーも茨の道を歩みながら前に進んだのです。

Michael:
特に創業者や会社の上位層が注意しなくてはいけないのが、自分の振る舞いが部下に伝染するということです。上位マネジメントが適切にトラブルや困難に対応すれば、そこから部下は学んで適切に対処出来る可能性が高まります。逆に怒りや反感などネガティブな対応をすると、同じ様な反応を部下もすることになるのです。良くも悪くも部下は上位マネジメントから学びます。ある種、楽観的な開き直りとも言える様な振る舞いが求められる場合もあります。「なんとかなるでしょ」と言ってみると、同僚・部下も安心して「なんとかなる」と思えるものです。

Dalton:
冷静に対処するひとつのコツがあります。それは、現状を再確認することです。キャッシュが尽きそうなのか、プロダクトを販売出来る状態にあるのか、リカバリが取られる状態なのか、サーバーをリブートするみたいに一つずつ状況確認を行うと、案外落ち着けるものです。

Michael:
最悪のシナリオを想定しておく事も冷静に対応するコツだと思います。「顧客を全てロストした」という最悪のシナリオに比べたら、幾分マシに思えることもあるでしょう。

最後にまとめると、これらが私達からのメッセージです。

・トラブルは必ず発生する
・どう対応するかは自分次第
・挫折から学んで次に活かす
・部下や同僚の手本になるように対応する


How To Deal With Setbacks


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