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Instagramとおじいさん

仕事の合間にカフェでランチを食べていた。

横に座ったおじいさん(推定70歳)が声を掛けてくる。

「Instagram使ってますか?ちょっと教えて欲しいんだけどね……」

おぉぉ、怪しい。何かの詐欺だろうか?どうして私はこんなに見知らぬ人に声を掛けられるのだろう。年に2~3回は道を聞かれたり、電車の乗り方なんかを聞かれたりする。イヤホンで耳を塞いでいるにも関わらずだ。今回もまた然り。

でも、人に声をかけられるとどうしても無視することはできない性分。

「はぁ、私にわかることでしたら。」

ちょっと洒落たシャツを着て、シュッとした体格のそのおじいさんは、Instagramの写真をアップするのに手間取っているという。その日は知り合いの命日で、故人の在りし日の写真をアップしたいのだという。その故人とは、なんと結構な大物俳優だった。芸能事務所関係の仕事をしているらしい。携帯の写真フォルダに入っている写真を白黒に加工して投稿したいというのだ。

怪しさが増す。有名人を話題に持ってきて気を引くつもりなのだろうか。フォルダの写真を覗くついでに、お孫さんの写真や、若い女性の写真がちらほら見られる。

「お孫さんですか、可愛いですね。」

「いやぁ、もう大きくなっちゃってね。5年前だよ。こっちはね、ジムの若い女の子達なんだけど、この子達がストーリーズっていうのに僕との写真をあげちゃって。聞いてみたら、24時間で消えるから大丈夫って言うんですよ。昨日の夕方の6時に出たやつだから、今日の夕方6時には消えるってことでいいんですよね?」

やり方がわからないという割には、ストーリーズは知っていたりと、変なところで詳しい。ジムで一緒に撮った写真のお姉さんたちも、スタイルがよくてモデルのようだ。二人の女性を両脇に置いて、肩を抱いている写真が成金のようである。何が目的なんだろうと訝しみつつ、写真を投稿する手順を教えていく。最も、自分もInstagramに関しては、閲覧するばかりで投稿などしたこともないのだが。

「うん、よしわかった、あとはわかると思うから、家に帰ってやってみます。」

(今やらんのかい!!!)

「よかったらアカウントフォローしてくれませんか?」

(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……!!まぁ最悪捨ててもいいアカウントだからいっか!!)

「あ、いいですよ。でも私直接アカウントフォローしたことないので、やり方わかるかな……」

「あ、それはね、僕わかりますよ。芸能事務所なんかの仕事してるとね、変な人からフォローされたりメッセージ来たりするんだけど、次の日になるとその人のアカウント凍結されちゃってたりするの。ほんと、こうやって直接声かけてフォローしてもらうほうが何倍も信頼できますよ。」

(アカウント用QRコードは出せるのかよ!見知らぬ人に声かけたほうが信憑性があるって、今時どんな価値観だ……!)

なんだか面白かったので、最悪アカウントは捨ててしまおうと思い、そのままアカウントを相互フォローした。

最後は丁寧に「どうもありがとうございました」とお礼をしてくれて、紳士は去っていった。

新手のナンパだったのだろうか。

その後、彼のアカウントを覗いてみると、更新はされていない。凍結もされていない。本当に何のために話につきあったのだろう。ひとつわかるのは、きっと嘘はつかれていなったであろうこと。いろんな人がいるもんだなと、楽しい、嬉しい、不思議な気分になった日。







野やぎさんの企画に参加してみました!楽しい企画です(^ ^)

最後まで書いてみました。実話なので小説ではなく日記になってしまいました。ここから物語に昇華してくれる人いないかな 笑


#冒頭3行選手権

https://note.com/noyagi/n/na95519df7399

家族に美味しいもの買ってあげたいと思います!世界平和をお祈りしに神社へ行きます!