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ダリ展(京都市美術館)・あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術(京都国立近代美術館)

(全文公開の投げ銭制記事です)

本日、京都市美術館で開催中のダリ展と、京都国立近代美術館で開催中の「あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術」展を鑑賞しました。ダリ展は2016年9月4日(日)まで京都市美術館で開催された後、2016年9月14日(水)から12月12日(月)まで国立新美術館へ巡回します。「あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術」展は2016年9月11日(日)まで京都国立近代美術館で開催されます(巡回なし)。

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7月下旬から8月にかけて、私は夏休みのごとくのんびり過ごす予定で、実際自宅で昼寝しながら絵を描いたりデータ入力の仕事をする日々が続いた。そうしていたらしばらく美術館に行っていないなあと思って、ネットで調べたら、なんと京都の二大美術館でどちらも見たい展覧会を開催しているではないか。まず京都市美術館は「ダリ展」。ダリの、あの美術の教科書で見た時計が曲がっているような絵はあまり好きではなかったのだが、その歪んだ世界を見ておくのは勉強になると思ったし、「あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術」展はフライヤーの写真を見たらこれは見てみたいのばかりで「これはハシゴするしかない!」と思い、朝早くに自宅を出た。

バスを乗り継いで自宅から約1時間、開館約15分前に京都市美術館に着いてみると美術館入口前に行列がありましたがその数は10名ほど、やっぱり印象派やフェルメールや若冲ほどは人気がないのかなと思っていたら私の後ろの続々と人が並んだ。でも数十名というところで開館、余裕をもって入れた。

まずは、ダリ展。サルバドール・ダリ(1904-89)の全貌に迫る、日本では約10年ぶりの展覧会というだけあって様々な画風の絵を見ることができた。初期の風景画などは優しい感じがした。そこからキュビスムの影響を受けた作風を経て、シュルレアリスムの代表格と言われる奇々怪々な絵に変わっていくが、その画風を確立してからでも、いくつかの変遷がある。まずは、広島・長崎の原爆投下に影響を受けた絵を描いていること。それらの絵は極めて写実的で重々しくて、私は少なくともその絵を欲しいとか飾りたいとかは到底思わないのだけれど、そういうことに影響を受け、絵にするということは大事なことだと思った。

それから、ダリの仕事は挿絵や舞台美術、映画、広告、宝飾品、そして文学と多彩にわたることは重要だと思った。ダリはその独特の世界をどうやって大衆向けに表現したかというのは参考になった、例えば曲がった時計も、小さな宝飾品にすると持っていたくなる。舞台や映画の装置も、非日常を表現するのにダリの世界は向いていたのだろう。また、インクや水彩で描かれた挿絵は、時にギラギラと感じる油絵と違って、軽やかで、しかも自分の世界を表現していた。私は「不思議の国のアリス」の一連の挿絵が、家から腕が出ていたりとか虫が這いまわっていたりとか、独自の世界を保ちつつ、カラフルで夢のようにやわらかい絵になっているという点で一番好きだ。

ダリはその画風はあまり見習いたいとは思わないが、科学に関心をもち、立体視の絵など様々な実験をしたというその姿勢は見習いたいと思った。

そして、「あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術」展。パリで活躍する美術評論家ミシェル・タピエが見いだした1950年代の欧米の最新の美術作品群を、タピエは「アンフォルメル」(未定型なるもの)と名付け、それらは日本にも上陸して日本の戦後の美術にも大きな影響を与えた。この展覧会は日本の美術においてアンフォルメルの果たした役割を問い直すものだった。

アンフォルメルといってもその展開は多様で、特に日本では洋画、日本画、書、染色、工芸などあらゆる分野に及んだといっていい。そしてその迫力。墨が、絵の具が紙やキャンバスの上を走り回る。私ももっと自分の絵に疾走感が欲しいとこれらの絵を見て思った。まあ出品作家の中には例えば「具体」のメンバーのようなアクション・ペインティングをやるような人もいるから、私も作品を見ていてせめてキャンバスの上を走り回りながら描きたいと本気で思った。そういうわけで私の絵とも大いに共通点があったわけだが、あえて違いといえばこの展覧会の作品は黒を基調とした暗い感じのものが多かったが、私の絵はカラフルなものが多い。私は自分の個性を伸ばしたいと同時に、これらの作品から多くを取り入れたいと思った。この展示で一番気に入ったのは嶋本昭三の「作品」。大きな赤の塊がいくつも積み重ねられ、今にも崩れ落ちそうなその迫力に圧倒された。

良い展覧会を2つも鑑賞できて、本当に良かったと思っている。

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