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カスタマージャーニーマップに落胆した君へ

この記事を読んでいるということは、意気揚々と書いてみたカスタマージャーニーマップから、なにも得られず落胆しているところだろう。

安心してほしい。
自分にもその体験がある。
調査データからジャーニーマップを作成するワークショップで、
「ふ〜ん...で?」って空気に、参加者全員がなったことは今でも忘れない。トラウマだ。

ただ、もう一度よく振り返ってみてほしい。
その案件でジャーニーマップを書こうと思った瞬間を。

「UXっぽいことがしたくて、ジャーニーマップを書いてみたかっただけ」じゃないのか?
「ジャーニーマップを使えばラクに良いデザインができる」と思ってなかったか?

ジャーニーマップの本質

ジャーニーマップはそのシンプルさ、汎用性の高さと、習得も容易なことから様々な場面で紹介される。

「ユーザーの行動や発言を、時系列に沿って並べる。」

基本はこれだけだ。
そこにユーザー課題や施策の欄を、用途にあわせて追加していく。

ユーザー行動を横軸にとり、縦軸で考察をしていくことにより、行動全体を俯瞰してペインポイントへの施策を考え出せる。 と教科書には書いてある。

ただ、教科書には、施策アイデアの出しかたは書いていない。
そう、君が落胆したように、ジャーニーマップを書いただけでは施策はでない。

なぜならジャーニーマップは行動を時系列に並べた”ただの図”であり、
そこから何を読み取り、施策アイデアに落とし込むのは君自身なのだ。
ジャーニーマップは可視化をするだけ。
空欄を埋めると答えが出てくるようなフレームワークではないのだ。

体験設計の本質

そもそもUXデザインとは、共感と共創のプロセスである。

複雑で多様化するユーザーニーズに対応するため、ユーザーを知り、共感し、様々な切り口で解釈することで、ユーザー本人も気づいていなかった課題をあぶり出し解決する。

つまり、「ラクしていいデザインができるフレームワーク」ではなく
「ユーザーに共感して、泥臭く知恵を絞り出すプロセス」なのである。

ユーザーへの共感なくしては体験の設計なんて出来っこない。

共感のためにどうすればいいか

まずは、ユーザーのことをきちんと知ること。

そして、ユーザーの特徴的な行動や、感情的なエピソード、一見無駄だと思われるような情報も含めて、知ったことをすべてジャーニーマップに記載し、可視化する

UXデザインに必要な「共感」とは、かわいそうだねーつらかったねーといった「他人事の共感」ではない。
ユーザーの行動や感情を「自分ごと」にすることである。 

ユーザーはしょせん他人である。
他人の感情なんてわからないのである。にんげんだもの。
だから、自分に置き換えて考えるのだ。

ジャーニーマップから施策アイデアを出すときに以下のような議論をしてみてほしい。

・自分もユーザーと同じような行動や感情になった体験はないか?
・そのとき自分は誰に(サービスに)どうしてほしかったのか? 

他人の行動を時系列に並べただけでは、でなかったアイデアが出るはずだ。

主観こそユーザー目線の第一歩

こんなことを書くと、それはユーザー目線ではないのでは?と思われるかもしれない。

そう思っているうちは、ユーザーを他人事に扱っている証拠だ。
「ユーザー目線に立つ」とは「ユーザー(と同じ)目線に(自分が)立つ」
ということである。主語は自分なのである。主観なのである。

たとえば、数あるユーザー調査の中で、一番ユーザーのことが理解できる手法がある。それは参与観察だ。
自分自身がユーザーと同じ世界に身を投じ直接観察すること。
ユーザーの行動だけでなく、その背景や感情も主観的に感じ取れる。
百聞は一見にしかず。百見は一体験にしかず。

また、インタビュー調査の場合、ユーザーは悪気なく嘘をつく。
その嘘も、インタビュアー自身にその分野についての主観的な肌感があれば見抜くことができるが、ないと見抜けない。(これにもトラウマが...)

自分自身の主観的な体験があってこそ、他人を理解し共感できるのである。
人生経験豊富な人は、他人の人生相談がうまいのも同じ理屈だ。

これは、勝手な思い込みで分かったつもりになる、ということではない。
あくまで、”ユーザーと同じような”体験や、感情になった、主観的な出来事にフォーカスしなければならない。

客観的な調査を実施したうえで、自分自身の主観的な体験から、ユーザーに共感するということである。

普段からの心がけ

共感力を磨くためには普段からの研鑽が必要である。

・他人の行動をみて、自分も同じような行動をとったことはないか?
・そのとき自分は、どんな感情で、誰にどうしてほしかったのか?

この二点を普段から意識することで、他人の行動を自分ごとに置き換えて考えるトレーニングになる。

何も入ってない引き出しからは何も出てこない。
中身を入れる活動をしてこそ使える引き出しになるのだ。

安心してほしい。
君が憧れているデザイナーたちも、はじめはできなかったのだ。
日々の積み重ねが君をきっと強くすると信じて。

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