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平田オリザ『下り坂をそろそろと下る』

面白かった。
『下り坂をそろそろと下る』は東日本大震災以後、目を背けきれなくなってきたこの国の綻びについて、劇作家・演出家という著者の立ち位置から対峙し、発言していると思う。

「それぞれがそれぞれのプロフェッショナルとして『これから』について(社会への関わり方について)物を言う」という本をぼくは読みたいのだが、意外なほどそういう本は少ない。

この本は大人から子どもへの責任ある言葉にも読める。今の状況をリアルに捉え、「これから」を生きていく術をどう身に付けさせていくのか。

それにしても平田オリザのリアリストさ、戦略的なしたたかさ、言葉の平易さ、プレゼンの上手さにはいつも驚く。たぶん本当に頭のいい人なのだ。

『Coyote』の安西水丸特集も面白く読む。この人の絵や線はこちらが年を経る度に好きになっていく感じがする。何枚もイラストが見れて嬉しかった。

『Coyote』平松洋子特集は数ヶ月前に読んだのだけど、とても面白い。二十年前と比べると信じられないくらい雑誌を買わなくなったのだけど、平松洋子特集では頭からしっぽの先まで読んで、久しぶりに雑誌を読む楽しさを思い出した。

平松洋子を知らない人でも、本好きな人かつ、かつて雑誌が好きだったにはおすすめです。

これを読むと小川洋子と平松洋子の本をめぐる対談本『洋子さんの本棚』がどうしたって読みたくなるのですが、それがまた輪をかけて面白い本なのです。
雑誌がきっかけとなって、さらに何かに繋がっていくというのは雑誌を読むことの幸せの一つだと思う。 『Coyote』が次は何を特集するかちょっと楽しみ。

(二〇一六年五月)

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