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生きているだけで

2月7日72日目。

ここ数日は国道や道道が通行止めになるほどの吹雪が続き、これでこそ北海道のひだりうえだよなあと、この地で語られる「春待つしかあるめえ」という言葉がすぐさま脳裏に浮かぶ。ホワイトアウトを経て晴天を迎えた時の心持ちはこの地に住む人しか味わえない謎の生き延びた達成感がある。今日無事。

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30代半ばともなると、周囲からごく個人的な人生に関するお声かけやアドバイスをいただく機会も増える。そんな時は愛想笑いをしつつ心の中でうっせぇうっせぇうっせぇわ、とつぶやいている。

生きているだけでじゅうぶんしんどいし、それと同じくらい楽しい。周りを見るとめちゃめちゃ稼いでいる人もいれば、田舎で自分の城を持って慎ましく幸せに暮らしている人、公営住宅でこっそりペットとともに過ごし、穏やかに一生を終える人もいる。暮らしぶりはそれぞれ違って、おそらく幸せの価値基準も違う。本当に自分や誰かの人生について考えるだけできりがないし、しょうもないなあとも思う。

比べることで切磋琢磨につながる、というようなこともあるのだろうけど、こと人生においてはスタート地点もスピードも目的地も何もかもがひとりひとり違うので比べることに意味はない。そうわかっていても、油断をすると何かと比べて悲観してしまいそうになるのが業の深い人間だ。

「春待つしかあるめえ」という言葉は一人で暮らすおばあちゃんがふとつぶやいた言葉だけれど、勝手に意味を見出して深い言葉のように感じている。遠い未来を見据えて一喜一憂するよりも、今過ごしている季節と、ひとつ先の季節に期待を持ちながら生きていたい。

今日の一枚。ホワイトアウト後の晴天はいつもよりもいっそう青く感じる。

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雪のスクリーンも青空を写す。

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