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2018年最後のキスは,押入れのなかで。

この先,どんなにしんどいことや辛いことがあったとしても,
この人と一緒なら,絶対に大丈夫。
何があっても幸せに暮らせる。
そんなすごいことが,80億分の1の確率でいま目の前で起こっていることが
またすごいことで,
感動して,込み上げてきた涙が止まらなくなることがある。


京都祇園四条のスターバックスで,モーニングのコーヒーを飲みながら,
昨日書いておいた,ちょっと(だいぶ)感情的な日記を読み返す。
祇園四条はわたしのお気に入りの場所。
店内はわりと静かで,好みの音楽が流れる。
間違いなく,穏やかで良い時間が流れるなかで,
やはり昨日のことを思い出すと,一人でも,おかしくて吹き出しそうになる。

たしかに,日記に書いた通り,昨日とおとといをまたがる夜,
わたしは彼と,濃厚な時間を過ごしたと言っても良い。
でも,本題はそこではない。
ん?(タイトルより)押入れのなかでやったの!?って?
いやいやさすがにないです(笑)

まあちょっと。日記に書いたことの後の出来事について,
良ければ聞いて欲しい。


昨日をさかいに,わたしと彼は,2週間ほど会えなくなることになっていた。
理由は,お互いの帰省と,わたしに就職関係の用事があるため。
そして昨日の早朝には,彼のご家族が彼の家に来ることになっていた。
その日,わたしは彼の家にいた。
朝6時頃に彼家族が来るというから,5時半くらいまでには
わたしは自宅に帰れば良いと考えていた。
ご家族に会うのは気が引けた。
言ってもわたしも彼もまだ学生の身分。昼間会うなら良かったけれど,
早朝でのご対面は,なんとなくちょっと気まずくて,ハードルが高かった。

ということでわたしと彼は5時に起床したわけだが,
その3分前に,彼のスマホに着信があった。
「今着きました。」

甘かったー…!!!!

寝起きで,パジャマで,洗顔も歯磨きもしていない状況。
こんな姿で。彼家族とお会いするというのは,
もっとも,最悪な状況だ。
わたしは焦って,どうしたら良いか分からなくなる。

ピンポーン。

ベルが鳴る。とりあえず彼の弟が来た。
弟は,寒いから部屋に入らせてくれと言っている。
わたしは部屋の片隅に座り込んだまま,
弟が入ってきた。
ゆっくりと部屋を見渡して,そしてわたしと目が合った。
弟はびっくりしている。疑問と動揺が伝わってきた。
パジャマ姿の女が,兄の部屋の隅で座り込んでいる…!?
弟の反応を見る限り,このままご両親と会うのは,やはりやばそうだということが分かった。

ピンポーン。

来た…!
やばいぞ。やばいの一言で,とっさにわたしがとった行動は,
押入れのなかに逃げる,ということだった。
そして,わたしの存在を知らないまま,
ご両親が部屋に入ってきた。
たわいのない家族の会話が聞こえてくる。あたたかい。
一方押入れのなかはというと,
真っ暗で,狭くて,物音を立てないためにも,微動だにできない。
あ,そういえば,わたしの下着,干したままになっていないか…!?
カバンや上着も,見えるところに置いてあったはずだ。
久々に会えた息子が,普段どんな生活をしているのだろうかと,
ご両親はきっと部屋をじっくりと見渡しているに違いない。
やばい,これはバレるぞ…。余計に焦って,気が張り詰める。
次第に腰も痛くなる。寝起きの低血圧でふらふらしてきた。おならも出そう。
もう本当に,最悪の状況だ。
けれどもふと冷静に,この状況のことを考えてみると,
何だか面白おかしくなってきて,今度は笑い出しそうにもなる。
いや実際,吹き出していたかもしれない。
押入れで息をひそめるなんて,小学生の頃のかくれんぼ以来?
いや,そんなことはどうでもいい。
とりあえず早くここから解放されたかった。
早くみんな出発してほしい。
でも,なんせ彼も寝起き状態なわけだ。
荷造りもしていなかったようだし,まだ時間がかかる。
彼はわたしに気を遣って,家族たちに先に車に戻っているように促したりするが,
なぜそう急かすのかと,かえって家族たちを怪しませることになる。

20分くらい経っただろうか。
結局わたしはバレることなく,家族たちは車に戻ったようだった。
彼は,弟にはわたしのことを内緒にするように言ってくれたようだった。
部屋のなかにあるわたしの持ち物も,偶然上手に気づかれずに済んだようだった。

最後に出発前の彼が,押入れの扉を開けた。
「ごめんね。」と一言。「隠れる必要もないようにすれば良かったね。」
わたしはちょっとすねてみる。緊張がほぐれ,どっと疲れてきた。
「そろそろ行かなくちゃ。」
「また2週間後に。」
わたしは押し入れに入ったまま,彼とそっとキスをした。彼は出ていった。

すごくスリリングな朝だったけど,すごくおかしな朝だった。
それが,2018年最後の,彼との出来事。
それから1日が経った今,そしてきっとこれからも,
この出来事を思い出しては,ひとりでクスっと笑うことになるだろう。

弟くんには申し訳なかったな。
今度は,前もってご家族にもお伝えして,ゆっくり会おう。


あんまり,彼のことをSNSに書いたりしないから,
ちょっと新鮮で,ちょっと恥ずかしい気持ち。

そして、おのろけでもあるこの投稿を最後まで読んでくださった方がいらっしゃれば、ありがとうございました。

京都祇園四条のスターバックスにて。
そろそろ混んできたから,このあたりで。

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