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101年目の田園調布 都市構想の未来。

都市計画とか再開発とか地形が大好きな いなつち☆稲田智 です。

今年で開発から101年目を迎えた「田園調布」について書きたいと思います。

都市計画や地形好きにとって、渋沢栄一の理想を実現した田園調布という町はとても魅力的な存在です。

田園調布が実際どんな町か、どういう思想で造られた町かということ、そしてこれからの都市はどうあるべきか、についてわかりやすくお伝えできればと思います。

実態に即して地図や写真を交えながら、できるだけ町の雰囲気がわかるように情報をまとめています。

これさえ読めば田園調布という町が何たるかは一通りわかると思います。長文となりますが、読み物としてコーヒー片手に楽しんでいただければ幸いです。

(イメージをつかみやすいよう写真をふんだんに盛り込んだため、画像読み込みに時間がかかるかもしれません。あらかじめご了承ください。)

さて、田園調布と聞くと、「高級住宅地」「有名人」「世田谷区(ないし調布市)」「田園都市線」って思われる方が多いと思います。

しかし、これらの印象は、一部は正解で、一部は間違っています。

1.地図でみる4つの田園調布。

田園調布は蒲田とか羽田空港で有名な「大田区」にあります。世田谷区とか調布市ではありません。(厳密には一部は世田谷区)

下の赤丸のように、東京都大田区の西端に位置します↓すぐ隣は世田谷区です。

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大田区っていうと、蒲田のイメージが強すぎてアレなんですが、実は「田園調布」とか「久が原」とか「山王」とか、高級住宅地と呼ばれる住宅街が結構あります。

で、その中の田園調布なのですが、実は「田園調布」と名のつくエリアは4つあります。ここではそれら4つのエリアを地図で確認していきたいと思います。

①大田区田園調布。

一般的に田園調布というと、このエリアを言います。田園調布と一言で言ってもそのエリアはかなり広いです。下の地図赤枠の範囲が「大田区田園調布」です。

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多摩川、中原街道、環八に囲われた範囲です。最寄駅は、東急東横線・目黒線の「田園調布駅」と「多摩川駅」です。「田園」と付くからと言って、田園都市線ではありません。

②大田区田園調布本町。

実はここ以外に「大田区田園調布本町(ほんちょう)」というエリアもあります↓

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田園調布とは中原街道を挟んで蒲田寄りに隣接してます。福山雅治の歌で有名になった「桜坂」はここ田園調布本町にあります。

桜坂↓

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③大田区田園調布南。

さらに、「大田区田園調布南」というエリアがあります↓

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田園調布本町からさらに新幹線を挟んで蒲田寄りにあります。ここまで来ると最寄駅は田園調布でも多摩川でもなく、東急多摩川線の「沼部(ぬまべ)」になります。

④世田谷区玉川田園調布。

そして、世田谷区にも一部田園調布があります。「世田谷区玉川田園調布」です↓

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田園調布から見て自由が丘寄りにあります。田園調布3丁目に接しています。

このように、一言で「田園調布」と言ってもかなり広いエリアです。自由が丘のほうから沼部のほうまで、田園調布と名の付くエリアが広がっています。

2.写真でみる田園調布5つのヒエラルキー。

一般的に田園調布というと、最初に示した「①大田区田園調布」を言います。ここからは、この①にフォーカスを当てたいと思います。実はこの田園調布の中には、丁目による5階層のヒエラルキーがあるのです。

田園調布は、1丁目から5丁目まであります。そのヒエラルキーの頂点に君臨するのが、「3丁目」です。1丁目ではありません。

3丁目がまさしく、みなさんがイメージする「ザ・田園調布」だと思います。

イメージを確認するため、ヒエラルキー順に景色を写真で見ていきましょう。

第1位  田園調布3丁目。

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田園調布駅を中心に、同心円状、放射状に道が広がっています。

旧駅舎。今はシンボルとして立っているだけで駅機能はありません。かわいい駅舎です。↓

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駅前のロータリーです。↓

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東急スクエアガーデンサイトより旧駅舎を望む。↓

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駅前の同心円の中心部。田園調布の由来が書かれています。↓

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田園調布駅前のペリカンコーヒー。一軒家のような落ち着いたカフェです。↓

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放射状の道にある銀杏並木。両脇にはお屋敷しかありません。個人宅なのに警備員が常駐してたりします。↓

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同心円の道。↓

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宮殿のような邸宅。↓

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ヨーロッパ建築のような邸宅。↓

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円柱状の邸宅。↓

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広大な邸宅↓

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日本邸宅↓

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デザイナーズな邸宅↓

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桜がきれいな邸宅↓

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ただただ大きい邸宅↓

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緑豊かな邸宅↓

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小さき花の幼稚園。お受験幼稚園。↓

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カトリック田園調布教会。ここの鐘の音は田園調布中に響き渡ります。

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宝来公園。池に巨大化したアカミミガメが何匹も生息しており、よく子供がひっぱりあげて、ひっくり返して遊んでます。↓

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第2位  田園調布4丁目。

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3丁目から宝来公園通りへ下って、さらに登ったあたりにあります。3丁目ほどでないにせよ大きな家が多いです。↓

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3丁目にも引けを取らない邸宅↓

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高いところにある邸宅↓

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ボリュームのある邸宅が多いです↓

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道はこんな感じです↓

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4丁目の端っこは坂になっており、武蔵小杉方面が一望できます。とても眺めが良いです。↓

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落ち着いた町並みです↓

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第3位  田園調布5丁目。

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坂上と坂途中には大きな家もありますが、坂を多摩川側へ下りると一気に庶民的になります。アパートとかも現れます。

坂上を見てみます。少しボリュームは減りますが、可愛らしいおうちが多い印象です。坂上にあるので眺めが良さそうです↓

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桜に囲まれた低層マンションもあります。↓

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急坂。坂の名前が「急坂」です。
坂の下まで5丁目。その向こうは多摩川。
ちなみにこの坂、電動アシスト自転車でパワー「強」にしても登れません。↓

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写真だと急さがよくわからないんですが、左の道と比べてみます。右が急坂。ぐいんと曲がって一気に降りる↓

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馬坂。国分寺崖線の端っこなのでとにかく坂が多いです。↓

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名前はついてなさそうですが急な坂。景色がいいです。↓

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改めて、例の「急坂」ですが↓

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やはり坂を見たら降りたくなります。せっかくなので降りてみましょう↓

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序盤、急です↓

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横の家とか土地平らにするの大変そうです↓

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建築中の家も地盤強化が大変そう↓

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一見平に見えますがまだまだ坂は続きます↓

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ゆるやかな坂が続き、丸子川にでて終点です。標高40mから一気に下りました。↓

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坂下の丸子川沿いは桜がきれいです。

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こちらも桜↓

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坂下、多摩川に近づくと、かなり庶民的な雰囲気になります↓

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第4位  田園調布2丁目。

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田園調布駅の同心円状(3丁目)の反対側です。駅前にはお店が多いです。↓

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スターバックスコーヒー。↓

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いろんなお店。↓

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高級食パン専門店「嵜本ベーカリー」。食パンが超絶ふっくらしてて、エシレバターで食べるとおいしいです。↓

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駅から離れると住宅街になります。道の脇に桜があります。この道に桜が植わっているのが、2丁目らしい光景です。↓

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こちらも道に桜。↓

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第5位  田園調布1丁目。

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割と庶民的な風景になります。↓

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普通の家が多いです。↓

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1丁目でも、たまにお屋敷があります。柵の上に金のトゲトゲが。↓

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こちらも急な坂があり、坂上が住宅地、坂下が多摩川駅や公園となっています。

富士見坂。↓

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どりこの坂。↓

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ちなみに、「どりこ」ではなく「どりこの」です。「どりこの」というのは昔あったリポビタンDみたいなドリンクらしいです。開発者の医学博士髙橋邸がこの近くにあったことからこの名がついたそうです。今風に言うと、「モンスターエナジー坂」でしょうか。

坂を下りると、田園調布せせらぎ公園という旧多摩川園跡地の広い公園があります。(厳密には坂上にも広がって存在します)3万平方メートルあります。↓

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緑がいっぱいです。↓

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ロッジ的なものがあり、ここで緑を眺めながら読書をしたりしてる人がいます。↓

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鳥さんがいます。ザリガニもとれます。ハクビシンの目撃情報もあります。↓

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大階段↓

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大階段の上にも広場があります。↓

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滝もあります。湧水もあるそうです。↓

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田園調布せせらぎ公園を抜けて、多摩川駅を超えると浅間神社があります。祭のときは盛り上がります。↓

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浅間神社は見晴らしが良いです。↓

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さらにその先には、多摩川台公園という南北に長い公園があります。古墳が10基ほどあるそうです。田園調布せせらぎ公園の倍の6.6万平方メートルあります。↓

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橋を渡って奥に行けます。↓

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一番奥に広場があります↓

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多摩川台公園からは、空気が澄んでいると富士山も見えます。

富士山と富士通(川崎工場)↓

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多摩川台公園を下り、多摩川沿いの多摩堤通りから多摩川と武蔵小杉が見えます。↓

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浅間神社の下、多摩川沿いには「多摩川ダイナー」というお店があります。フィッシュ&チップスなど何食べてもおいしいです。クリスマスのチキンはここに頼みます。↓

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バーベキューも全部おまかせでやってくれます。↓

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桜や電車、多摩川を見ながらの食事がおいしいです。↓

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オープンな感じがさわやかです。↓

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さらに同じ系列店で「ディライト」というお店もあります。こちらも、桜を見ながらハンバーガーなどをみなさん食べています。↓

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多摩川が近いので、釣り具とかを昔から売ってるお店があります。↓

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丸子橋を望む↓

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多摩川駅は1丁目にあります。駅に近づくほど緑が多くなり、駅から離れるほど緑が少なくなるという不思議なエリアです。↓

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多摩川駅前の通りは車両通行止めにしてよく市場みたいのをやってます。↓

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青空個展というのをやってました。↓

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さらに「田園調布倶楽部」というレストランがあります。何食べてもおいしいです。↓

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1丁目〜5丁目まで雰囲気を見てきましたが、大体イメージはおわかりいただけたでしょうか。

田園調布エリアは、幹線道路沿い以外は基本的に第一種低層住居専用地域であり、建ぺい率50%、容積率100%です。

なので土地は半分は空けなければならず、なおかつ2階建までしか建てられないので、街並みは品川区などど比べるとかなりゆったりしてます。日当たりも良好です。

自然は本当に豊かで、特に多摩川駅側(1丁目)は大きな公園が2つあったり、多摩川の河川敷が近いこともあり、緑が多いです。

多摩川河川敷↓

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夏の夜に自転車に乗っていたとき、服にカブトムシがぶつかってきたこともありました。子供たちは公園でザリガニ釣りをやったり、多摩川で魚釣りしたりしています。私は田舎育ちですが、下手な田舎よりもカブトムシやザリガニが取れるんじゃないかと思います。

その他、番外編。

フォーカスから外した大田区田園調布本町と大田区田園調布南に関しては準田園調布的なイメージにあり、世田谷区玉川田園調布は田園調布3丁目とほぼ同格です。

玉川田園調布は名前だけみるとエセっぽいんですが、実は最初に田園都市株式会社が分譲したエリアで、田園調布3丁目とほぼ同格の扱いとなります。なぜ分離されているかは次の章で解説します。

3.年表でみる田園調布6回の地名変更。

田園調布のおおまかな地名の変遷です。
(丁目の再編含む)

①1889年以前
上沼部村、下沼部村。

②1889年(1回目変更)
調布村。
一部、玉川村。

③1923年
地名の変更はないが、調布村と玉川村の一部を「多摩川台分譲地」として分譲開始。
調布村にちなみ、目蒲線「調布駅」開業。

④1926年
地名の変更はないが、駅名を「調布駅」から「田園調布駅」に改名。
(多摩川台分譲地の一般呼称「調布田園都市」より)この頃より、田園調布の名がなじんでいく。

⑤1928年(2回目変更)
東調布町。(北多摩郡調布町との重複回避のため「東」をつける。)
一部、玉川村。

⑥1932年(3回目変更)
東調布町→大森区田園調布1丁目-4丁目。
玉川村→世田谷区玉川田園調布。玉川村は大森区田園調布に入ることを希望するが入れてもらえず。

⑦1947年(4回目変更)
大田区田園調布1丁目-4丁目。
世田谷区玉川田園調布。

⑧1960年(5回目変更)
大田区田園調布1丁目-4丁目→1丁目-7丁目
世田谷区玉川田園調布。

⑨1970年(6回目変更)
大田区田園調布1丁目→大田区田園調布南
大田区田園調布2丁目→大田区田園調布本町
大田区田園調布3丁目→1丁目
大田区田園調布4丁目→2丁目
大田区田園調布5丁目→3丁目
大田区田園調布6丁目→4丁目
大田区田園調布7丁目→5丁目
世田谷区玉川田園調布

ここまでで現行のラインナップになりました。もともとは沼部(ぬまべ)という地名だったんですね。

そして玉川田園調布は田園都市株式会社が調布村と玉川村を一体的に開発したのに、区になるときに分離させられてしまったというかわいそうな運命なのです。

むしろ今となっては「世田谷区」を名乗れるからラッキーかもしれませんね。

4.田園調布2つの交通事情。

①電車事情。
東急東横線・目黒線の田園調布駅、または東急東横線・目黒線・多摩川線の多摩川駅が使えます。都心から遠いイメージがあるかもしれませんが、そんなでもないと思います。

東急東横線は、みなとみらい線に乗り入れ、横浜の先のみなとみらいや元町・中華街に直通で行けます。また、東京メトロ副都心線に乗り入れており、渋谷、原宿(明治神宮前)、新宿(新宿三丁目)、池袋に直通で行けます。

東急目黒線は東京メトロ南北線、都営三田線に乗り入れており、目黒、白金台、麻布十番、六本木一丁目、永田町、四ツ谷、市ヶ谷、飯田橋、後楽園、三田、日比谷、大手町、神保町、水道橋などに直通で行けます。

また現在、東急新横浜線を建設中であり、いずれ新横浜に直通で行けるようになる予定です。新幹線に乗るのが楽になりますね。2022年開業予定。↓

田園調布駅から主要駅への所要時間

自由が丘  2分
武蔵小杉  4分
学芸大学  5分
目黒  8分
中目黒  8分
渋谷  11分
二子玉川  11分
代官山  13分
恵比寿  14分
表参道 16分
原宿(明治神宮前)16分
麻布十番  16分
品川  17分
川崎  17分
横浜  19分
新宿(新宿三丁目)  20分
六本木  20分
新横浜  20分
赤坂  22分
みなとみらい  22分
新橋  24分
池袋  26分
元町・中華街  27分
日本橋 29分
東京  29分
銀座 30分
羽田空港国際線ターミナル  31分
お台場(東京テレポート)  32分
羽田空港国内線ターミナル  33分


だいたいの場所には楽に行けますが、唯一北方に行くのは少し面倒です。東北新幹線や北陸新幹線に乗るには、一度東京駅まで出ないと行けないためです。

②クルマ事情。
ただ、電車で移動するのは一般の方で、車移動が多いようです。田園調布は環八と中原街道で囲まれているので、車移動が便利なのでしょう。

メーカーは感覚的には、メルセデスが圧倒的に多いです。駐車場の5台全部がメルセデスとかはよくある光景です。

その他にBMW、レクサス、ボルボ、ポルシェ、アウディ、アルファロメオ、ジャガー、国産車が満遍なく走っている印象です。しかし、やはりメルセデスの多さが目立ちます。

超高級車で言うと、フェラーリやランボルギーニなどの車はあまり見ません。ロールスロイスやマセラティなど落ち着いた車を見ます。あと最近はテスラやBMW iシリーズなどの電気自動車をよく見ます。

朝、高級車で運転手がお迎えに来て、家の前で待っているというのがよくある光景です。

ロールスロイスファントムでのお出迎え。↓

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5.田園調布6つの買い物事情。

田園調布住人がスーパーを使う場合、以下のいずれかのはずです。(配達してもらってる人を除く)

①ナショナル田園
環八沿いの玉川田園調布にあります。高級系です。輸入食材もあって面白いです。↓

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②プレッセ田園調布。
東急がやっている高級志向のスーパーです。田園調布駅前、2丁目側にあります。無駄に高いです。同じものならオオゼキとかオーケーストアで買った方がいいでしょう。何万もするワインとか高級品も売っています。

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③OTENTO(オテント)田園調布。
田園調布1丁目の中原街道沿いにあります。小規模スーパーです。地元のお年寄りに愛されています。

④オーケーストア田園調布。
田園調布本町にあります。安くて庶民の味方です。

⑤オオゼキ雪が谷。
雪が谷大塚駅前にあります。田園調布1丁目、田園調布本町の住民が使いがちです。オーケーストアと並んで安いです。

⑥東急ストア雪が谷。
雪が谷大塚駅前にあります。田園調布1丁目、田園調布本町の住民が使います。

スーパー以外での買い物は、お隣自由が丘か武蔵小杉のグランツリー、二子玉川高島屋、二子玉川ライズあたりが多い印象です。基本的に都心には行かず、東急沿線で済ませる傾向にあると思います。

お店があんまりなくて不便と言われがちな田園調布ですが、これはエリアによります。田園調布3丁目、4丁目、5丁目はたしかにお店はほぼないですが、それ以外の田園調布はスーパーもコンビニも近くにあります。

また、田園調布1丁目、2丁目、本町あたりは東急池上線の雪が谷大塚駅や御嶽山駅が近いので、そちらの商店街やスーパー、イオンで買い物することもあります。

6.田園調布地価ランキングベスト7。

田園調布の地価は23区で比べるとそれほど高いわけではありません。2019年の公示地価で、平均235万円/坪です。

田園調布地価ランキング

田園調布域内で公示地価をランキングすると概ね以下の通りです。
※地点が同じ丁目の場合は上位側の地価のみを示しています。

①田園調布3丁目  356万円/坪
②田園調布2丁目  346万円/坪
③玉川田園調布2丁目  231万円/坪
④田園調布4丁目  221万円/坪
⑤田園調布1丁目  180万円/坪
⑥田園調布南  171万円/坪
⑦田園調布5丁目  139万円/坪

例えば、蒲田370万円/坪、大森303万円/坪、大井町336万円/坪などと比べても安いぐらいです。

3丁目は良好な環境を保つため、田園調布憲章という町の決まりで、最低敷地面積が165平方メートルと決まっています。そのため土地総額が高くなるということなのです。

田園調布憲章に当てはまらない丁目については、最低敷地面積に縛られないため、23区内で家を買おうとしている人にとって手が届かないわけではありません。普通に大田区で買うイメージの価格帯であり、品川区や世田谷区、目黒区などよりも安いです。

7.渋沢栄一による田園都市構想。

田園調布の歴史は、1898年にイギリスのE.ハワードが提唱した田園都市構想まで遡ります。

産業革命が進んだイギリスでは、都市に人口が集中し、環境悪化、長い通勤時間、失業などひどい状況になっていました。

ハワードは「都市と農村の結婚」という都市の経済的利点と、農村の良好な自然環境を共存させる職住近接型の田園都市(Garden City)構想を生み出しました。

ハワードが提唱したのは「自立的な」田園都市であり、そこには職場も住居も公園もあってその都市だけで生活していける良好な環境です。

中心に庭園があり、そこから同心円上に、コンサートホールなどの公共施設、中央公園、住宅、グリーンベルト、商業・工業地帯、鉄道の順に広がっていく。そのような緑あふれる自立的な都市が田園都市の定義です。

イメージ図は下のWikipedia参照。↓

渋沢栄一はこの考えを日本に持ち込み、1918年田園都市株式会社を設立、そして造られた町が調布田園都市(田園調布)なのです。

実際の田園調布は、住宅と公園がメインであり、全住民の働き口を満たすまでの商業・工業地帯はありません。働く場合は、都心の会社に通勤しなければなりません。

したがって、いわゆるベッドタウン的なものであり、ハワードが唱えたような「自立」はしていないため、ハワードのいう田園都市とは文脈が異なる都市であると読み取れます。

しかしながら、田園都市構想を先駆けて日本に導入し、独自の進化を遂げさせた点において、非常に賞賛に値する実績であると言えます。

8.都市構想の未来。

渋沢栄一が持ち込み独自の進化を遂げた田園調布ですが、やはり本当の意味での「自立した」田園都市が未来の日本には必要だと思います。

最近は、都心回帰になってきているようですが、やはりベッドタウンから都心への遠距離通勤は厳しいものがあるのでしょう。

都心も決して環境がよいとは言えませんから、都心の中に緑を持ち込み、緑と調和しながら住めるような職住近接型が未来の都市のあり方ではないかと考えます。

渋谷田園都市、品川田園都市など、その都市圏で生活が完結するような世界が理想的ではないかと思います。そうすると通勤ラッシュもなくなるでしょう。

ここで思考実験として、「品川田園都市」という品川駅圏域での田園都市を考えてみます。

田園都市の概念では一番中心部が庭園、外側に向かって公共施設、中央公園、住宅地区、グリーンベルト、オフィス・商業施設、一番外側が品川駅となります。

しかし、田園都市株式会社が最初に分譲した洗足田園都市や田園調布がそうであったように、田園都市の中心には駅や商業施設を配置した方が都市開発としては無理がないようです。

そこで、本来の田園都市の定義からは異なりますが、各区域の順番を入れ替えます。品川駅を中心に庭園を設け、そのまわりを商業施設やオフィス、その外側をグリーンベルトで囲って、その外側の天王洲アイル、新馬場、大崎、白金、高輪、港南に住宅地区を配置したらどうかと考えます。↓

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道路は住宅地区から品川駅に向かって敷設し、自動運転バスやトラム、自転車などで中心部のオフィスへゆったりと近距離通勤するような都市です。

中心部には駅や商業施設はありますが、庭園があるのと、その外側がグリーンベルトとなっているため、緑豊かな良好な環境を維持できます。

このような田園都市を品川だけでなく、渋谷、新宿、池袋、上野、東京などに作り、それらを山手線でつなげることで、都心に有機的田園都市群を作ることができます。

単なる都心回帰ではなく、それを昇華させる必要があります。既存の駅や公園など活かせるところは活かしながら、ハワードや渋沢栄一が目指した理想郷を実現し、より人間らしく豊かに暮らせる未来を期待します。


ここまで読んでいただきありがとうございました。田園調布という町がこれからの都市計画のヒントになれば幸いです。

おわり。

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