見出し画像

【小林よしのり】反ワク陰謀論漫画家


小林よしのり

(よしりん企画)東京都
陰謀度 5 ★★★★★

小林よしのり

【陰謀要素】
・反ワクチン ・反TPP ・性加害擁護

【マネタイズ】
・漫画家

【関連陰謀論者】
井上正康 宮沢孝幸中川淳一郎
水道橋博士 ・有本香 ・松田学 ・西村幸祐

【メモ】
◆1953年8月31日生まれ
◆福岡大学 人文学部フランス語学科卒


■ 戦争論

漫画家・小林よしのりは少年ギャグ漫画『東大一直線』『おぼっちゃまくん』でブレイクしたのち、大人向け一般雑誌での連載『ゴーマニズム宣言』でも売れてその名を上げた。

アニメ版 おぼっちゃまくん

ゴーマニズム宣言では同和差別問題に切り込み、さらには薬害エイズを取り扱って国と戦ったかと思えば、今度は日本の誇りを守るために第二次世界大戦における日本について描いた。
小林はタブーをタブーとせず戦う姿勢を見せた社会派ギャグ漫画家だった。

ちなみに薬害エイズを取り扱ったシリーズでは、薬剤被害者で現在陰謀論者へと堕ちてしまっている川田龍平が主人公的位置付けで登場していた。

さて、ゴーマニズム宣言で第二次世界大戦の日本を主題とした『戦争論』シリーズ。この秀作は、敗戦国となって日本自虐の左翼思想に染まっていた日本社会の空気を一変させるほどの大ヒット作となった。

1998年刊行

しかしその作中で小林は参考文献を精査できずに参考にしている箇所があり、陰謀論とも思える内容や都合の良いミスリードもいくつか含まれていた。
それを鵜呑みにした世代が後のネトウヨとなる下地を育むきっかけともなってしまっていたのだ。

作中の陰謀論を一つ紹介すると、日本が真珠湾に奇襲をかけることを知っておきながらアメリカ側は敢えて真珠湾奇襲をさせたという説だ。
それは当時、厭戦ムードの強かったアメリカ国民の怒りを惹起させるためにわざと日本にアメリカ領を攻撃させて甚大な被害を負って、反撃という名目で日本に戦争を仕掛ける口実を作りたかったフランクリン・ルーズベルト大統領の罠だった。という単純かつもっともらしい陰謀論だ。
「リメンバー パールハーバー」
その陰謀論はアメリカを悪く仕立て上げる補強材料として役に立った。
詳しくは下記リンク先を参照。▼▼

その陰謀論の採用は、戦争論の作者であった小林が専門分野ではなかった戦争を題材としたための多少のミスだが、ご都合主義の思い込みから結果的に誤った表現をしてしまっていたのだ。
下記リンク先の古谷経衡氏による『戦争論』解説も分かりやすい。▼▼


■ 反TPP

『戦争論』をヒットさせた後も愛国心を発揮して次々と意欲作を生み出していた小林だったが、その愛国精神が暴走する姿がゴーマニズム宣言の『反TPP論』で顕わとなった。
愛国精神に紐付く保守の保守による保守のための反TPPを訴える小林に賛同する読者は多かっただろう。他国におもねらず、TPP協定に反対して自国の生産者や生産品を守るという美辞麗句はウケが良かったからだ。

しかし交通や通信技術が発達した現代の、経済門戸が開かれて行く国際社会において、モノやサービスの行き来を阻む内向きの姿勢が良いのかというのはまた別問題だ。
小林にとって『反TPP論』は漫画の世界でキレイゴトを言って自分の読者ファンを喜ばせるには十分な作品だったろう。だが小林の愛国心ゆえの凝り固まった保守思想による自由度の低い発想では、国際社会における日本の立場を逆に危うくしかねないという外交面での現実的問題があった。

2012年刊行

ネトウヨなど多くの極右思想の持ち主はTPPのメリットは度外視して、TPPによって差し迫る恐れのあるリスクのみを拡大解釈して不安を煽る傾向にあった。
そんな不安を煽る陰謀論者の有名どころ鈴木宣弘堤未果だ。共に保守側の立場で誤った農業政策を打ち出している。日本での反農薬を含む農業陰謀論の蔓延は、この2人の仕業によるところが大きい。
「今だけ、日本だけ」良ければいいという保守の皮を被った鈴木宣弘と堤未果にとって、国家の外交課題に目を向ける責任感は無い。

(左) 堤未果    農業陰謀論コンビ    (右) 鈴木宣弘

反TPPは、きらびやかな愛国ドレスを着飾った陰謀論ビジネスとして有効だ。本が売れるし講演会にも呼ばれ、あまつさえ愛国者として讃えられる。


■ 反ワクチン

独自の理論から反ワクをこじらせてしまった小林よしのり。
小林は未知のウイルスに対して脅威を抱く日本人と政府の姿を見て、過剰に怖がり過ぎていると強く感じた。
そして小林のコロナに対する持論が正しいものであるという確証バイアスから、コロナやワクチンに関して自分にとって都合の良い情報を与えてくれる人との付き合いが増えて行ってしまった。行き着く先はエコーチェンバーフィルターバブルという陰謀論者が大好きなバイアスまみれの世界だ。

確証バイアスとは、自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向のことです。

(出典:kaonavi 人事用語集

エコーチェンバー現象とは、自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくる「反響室」のような狭いコミュニティで、同じような意見を見聞きし続けることによって、自分の意見が増幅・強化されることを指す。

(出典:IDEAS FOR GOOD

フィルターバブルとは、「インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること。

(出典:wikipedia フィルターバブル

下記の2つの著作はそれぞれ、反ワク陰謀論者・井上正康、同・宮沢孝幸との共作だ。井上と宮沢のヤバさは既に紹介している。そんな相手の言う言葉を取り込む小林の耄碌ぶりに、コロナ禍の闇と悲哀を感じずにはいられない。。▼▼

2021年刊行
2021年刊行

かつて薬害エイズ問題に際して弱者救済のため国を相手に漫画家として戦った小林。
それから四半世紀の時を経て、またしても国と相対する立場を取る。しかし今度の小林は反ワク陰謀論に染まり切っていた。
小林にとっての「大義」は陰謀論者権力不信を抱く者、そして懐疑主義者からしか支持されなかった。
小林はコロナに関する書籍を出せば出すほど多くの国民にとっての敵となっていたのだ。

皮肉なことに、これこそまさに『脱正義』である。

2022年刊行
1996年刊行 薬害エイズ事件シリーズ作品

■ 裁判敗訴

小林は、陰謀論者・山口敬之への名誉感情侵害肖像権侵害があったとして民事裁判で2023年10月に敗訴。計132万円の支払いを命じられている。


■ 性加害擁護 (2024.2.23 追記)

ジャニーズ問題という繊細な話題に対し、かつて日本人男性が持っていたとされる同性愛文化、そして芸能文化という切り口からジャニー喜多川の少年らへの性加害などを擁護する小林。▼▼

現代には現代に適した価値観や行動様式が求められる、というのが人類の歴史における普遍的な在り方だと思うのだが、どうやら小林にとってそうではないようだ。
個人のアイデンティティーや生き方は自由ではあるものの、それをいったん行動や発言に移そうとなると法や世間の目に耐えられるものでなければならない。ジャニー喜多川の行為は刑事事件で有罪判決を受けたものではないとしても、過去にそれを民事裁判で実際に否定できず、その後も被害を訴える告発が多数あって、その性加害行為が無かったと言うのがもはや難しい状況にある。であるならば、ジャニー喜多川による少年らへの性加害があったと考えるのが自然で、それが事件化していればジャニー喜多川の逮捕・起訴、有罪判決は免れなかっただろう。そういった犯罪者となり得る可能性の高い人物と、加えて芸能界という限定空間での文化を含めて理解を示すつもりで擁護することは、法や世間に対する「逆張り」行為でしかない。

そして『日本人論』では『SPA!』で連載されていなかった描き下ろし部分において、性加害疑惑をかけられて、疑惑の解消がまだ済んでいない松本人志氏を引き合いに持ち出そうとしていることも窺える。これは松本人志サイドによる裁判の進行を待って、その状況に応じたかたちで引き合いに出すのであれば問題は無いが、裁判進行以前にジャニー喜多川の件と重ね合わせるように扱うのであれば大変危険である。(いや、単行本発売前だから私もその『日本人論』の内容を確認してないんだけどさ。←「おまいう」案件になりかねないのでセルフツッコミ)

小林は『コロナ論』で完全なる陰謀論者へと堕ち、あまつさえ現代の価値観と法律を超えた論を展開。前後を見失い、自分の価値観を絶対的なものだと捉えて強行に発信する小林の様は、後に退くことのできない陰謀論者最終形態への第一歩である。


■ 陰謀度 評価変更 (2024.2.23 追記)

小林の陰謀度をLv.4と評価していたのをMAXのLv.5に変更

その理由は前述した、『日本人論』にある。
当noteでは、コロナ(COVID-19)に関する誤った認識や陰謀論を声高に唱えるか、またはそれを後押しする行動が観察された場合に陰謀度をLv.4以上とすることを基準としている。
『コロナ論』までは小林の陰謀度評価をLv.5に近いLv.4と評価していたが、『日本人論』で陰謀論者特有の悪質ムーブが継続的に観察されたため、そのレベルを最高度に引き上げた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?