見出し画像

カラフルな彼女の故郷



2月の末、ベトナム人の友達の故郷を訪ねた。
彼女とは大学時代にアルバイトをしていたカフェで出会った。シフトが被ると、私は彼女の故郷の話を聞くのが楽しみで、いつしかベトナムを旅することが夢のひとつになっていった。
何より、いつも穏やかで笑顔でいるけれど、心の内に熱いものを秘めている彼女の人柄に惹かれていて、また会いたいと強く願っていた。

連休で有給を取るのはかなり大変だった。けれど、どうしても行きたかった私は自分の意思を通そうと思ってできる範囲で奮闘した。忙しい毎日なのに、「楽しんできてね」と送り出してくれた上司と先輩たちには頭が上がらない。


7時間のフライトを終えてホーチミンのタンソンニャット空港に着いた私と友人を、彼女は満面の笑顔で迎え入れてくれた。
暑さと紫外線の強さ、交通量の多さに驚く私たちを見て、可笑しそうに笑う彼女。
1年振りの海外の景色に圧倒されて、「遂にベトナムに来たんだ…!」と嬉しい気持ちが抑えられない。



お腹が空いていたから、3人でご飯屋さんへ寄った。もちろん彼女おすすめのお店へ。
初めて食べたベトナム料理は、海鮮と牛肉の出汁が染み出しているスープの中につるつるの麺が入っていて、そこに野菜を自分で好きなだけトッピングして食べられるヌードル。具沢山で、出汁の味がほんのりと甘くて大好きな味だった。
デザートが食べたいという私に、彼女はオレンジ色のお饅頭のようなものも注文してくれた。これがまた今までに食べたことのない味で、日本に帰ってきてからも恋しくなるくらいにおいしかった。

🦐



ご飯を食べて満腹な私たちは、ホーチミンから車で4時間かけて彼女の故郷、アンザンへ向かった。ちょうど夕暮れ時で、夕日に照らされ一面に広がるお米の畑を見ながら、「この景色は少し私の故郷と似ているな」とぼんやり思う。彼女がベトナムの歌を流してくれて、それが耳に心地よくて眠くなっていった。

🌾


夜遅くに彼女の家に到着すると、家族はみんな起きていて笑顔で出迎えてくれた。
そして一緒に夜ご飯を食べよう、と。長旅で疲れていたけれど、家族を紹介してくれたことが嬉しくって私はみるみる元気になっていった。
みんなで丸いテーブルを囲んでベトナムの鍋をつつく。私と友人の拙いベトナム語の挨拶に、みんなが笑ってくれる。
聞きたいこと、話したいことがたくさんあって、彼女に通訳をしてもらいながら会話をする。言葉はあまり分からないけれど、みんなにこにこ笑顔で、ほっとするあたたかい雰囲気が溢れていた。「本当に素敵な家族だね」と彼女に何度も伝えてしまうくらいに。
いつだったか、双子の相棒が「世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔だと思う」と言っていたけれど、この時、私も心からそう思った。



家に居着いてる野良猫のお母さん🐈‍⬛


寝る前に、彼女の妹(高校3年生)が英語で頑張ってシャワーの使い方を教えてくれた。一生懸命さがかわいくってたまらなかった。
ハンモックでくつろぐ彼女の弟(小学3年生ぐらいの年で、本当にかわいかった!)の名前を呼んで手を振ると、ニコッと笑って手を振り返してくれた。
彼女のおばあちゃんは、私と友人の頭と肩を撫でてくれた。そういうところ、私のおばあちゃんとすごく似ていたな。




次の日、鳥の鳴き声とバイクが走る音で目が覚めた。昨日の夜、彼女がベトナム人の友人を紹介してくれること、バイクで色んな所を案内してくれることを聞いていたから、わくわくが止まらない。
家の前に広がる庭には、色とりどりの花やフルーツの木が植えてあって、家の中から見るとまるでひとつの絵のように綺麗なの。



朝一緒にお散歩しようと約束していたから、少し家の前の通りを歩いて、彼女の家が所有している畑へ向かう。
近くにある幼稚園からは子供達の元気な声が聞こえて、お母さん同士が交流している。おばあちゃん達も朝からお店の前のベンチに集まって、何やらお話をしている。私たち日本人と一緒に歩いている彼女は、「どこの国から来た人なの?」と聞かれたりしている。本当に、人と人との距離が近い場所なんだね。


アンザンの幼稚園👦🏻



彼女の家の畑には、様々な植物とフルーツ、花がありのままで息づいていた。
「これはバナナの木で、収穫した後に切り倒すとまた新しいのが生えてくるんだよ」
「これは食べられる葉っぱだよ」とたくさんのことを教えてくれる。どれもが私の見たことのない植物や果物だったし、今まで感じたことのない自然で溢れていた。けれど、気温や植物の種類が違くたって、長野の広大な自然の中で育ってきた私にとってはしっくりくる場所で、すぐに大好きになった。




3人で一緒にグアバを収穫して、ベンチに座って食べた。グアバの収穫なんてしたことがないから、「いいの〜?!」と私と友人は目を輝かせていたと思う。このフルーツは外側が淡い黄緑色をしていて、シャクシャクした食感がするの。塩につけて食べるんだけれど、瑞々しい味がして本当に美味しかった。
「帰省したらよく畑に来て、ここでぼーっとするの」と言う彼女。分かる、それがしたくなるくらい素敵な場所だよね、と心の中で頷いた。


奥にちらっと見えるバナナもとってもおいしかった🍌





家へ帰ってしばらくのんびりしていると、彼女と、彼女のベトナム人の友人がバイクで颯爽と登場!
思わず「かっこいい〜」と感嘆の声が漏れる。
彼女の友人は、ベトナム語で「花」を意味する名前だと教えてくれた。天真爛漫な雰囲気だから、本当にその名前がよく似合ってる。
私と友人、それぞれバイクの後ろに乗せてもらって、いざお出かけに出発!


想像以上に風を切って速いスピードで走っていくバイク。色とりどりの花や家が過ぎていくのを横目に見ながら、アンザンのあたたかい風を感じる。なんて贅沢で楽しい時間なんだろう。何度も彼女に「楽しいね!」と話しかけてしまうくらい。


人生初バイクはベトナムで🏍️



途中で彼女のいとこも合流。いとこのお母さんに、「そんな腕出していくの?日焼けするよ?」と言われて少し焦る私。でもまあ、日本に帰ったら白くなるしいっか!と開き直って出発する。
彼女のいとこは、とても笑顔がかわいい落ち着いた雰囲気の女の子だった。名前はベトナム語で「金」を意味すると聞いて、私たちは「カネちゃんカネちゃん〜」と呼びかける。


5人で船に乗って、とある島に向かった。そこには子どもの遊び場もレストランもあって、色とりどりの花が咲いていて、楽しい場所だった。私が今まで見たことのない景色で溢れていたよ。


かわいい後ろ姿♡


サトウキビジュースを飲みながら散策していると、子供の遊び場を発見!
仕事柄子供と遊ぶことの多い私は、日本では見たことのない遊具に興味津々で、新しくできたベトナム人の友人達にどうやって遊ぶのか聞いてみる。
そうして気づいたら、子供に戻ってみんなで遊んでいた。特に楽しかったのは、タイヤに跨ってぐるぐる回転する遊具。私たちが遊ぶのを見ていた小さい女の子を連れたパパが、全力で遊具を回し始めるものだから、みんなで「きゃー」と叫んで、私たちは完全に大きい子供になってたね笑


思い出にたくさん写真を撮ったり、ハスの実の食べ方をレクチャーしてもらったり。とにかくはしゃぎ過ぎて、帰りの船に乗る頃には嬉しい疲れを感じていたのを覚えてる。




またバイクに乗って、今度はデザートを食べに市場へ連れて行ってもらう。甘いドリンクの中に、見たことのないものがたくさん入っているデザートだった。好奇心に抗えず、「これは何?」とベトナム人の友人達を質問攻めに。
いろんな種類の海藻が入っていたんだけれど、昆布が入ってるのを見つけた時には驚いたなあ。でもこれが、不思議と馴染んでいておいしかった。




「これ一杯60円だよ」
「え、安すぎ!日本だったら600円ぐらいするのに。日本で流行らせたいな。」
「将来日本でベトナム料理屋さん始めようかな」
「あれ?将来は日本の会社で働くんじゃなかったっけ?笑」

こんな会話をしながらおいしいデザートを食べるの、本当に楽しかったね。


アンザンの市場🫶🏻
このごちゃごちゃ感が好き



フルーツも買ったよ🍋
彩りが綺麗



家に帰る途中、彼女の母方のおばあちゃんのお家へ、挨拶に立ち寄った。とても優しい笑顔の方で、「上がってお茶飲んでく?」と嬉しそうな様子を見て私の心もほんわりする。
それから家に帰って、買ってきたフルーツをみんなで囲む。スターフルーツにリュウガン、マンゴー、途中で彼女が買ってくれたライスペーパーも…
ひとくちずつ食べてみると、口の中で南国の味が広がった。






彼女の故郷、アンザンで過ごしたのはたったの1日半だったけれど、その短い時間で私はここが大好きになった。
カラフルな花と建物、たくさんの種類のフルーツ、人と人との距離が近いアットホームな感じ…
そして何より、この場所で出会ったみんなの笑顔。そのどれもが心に深く染み込んで、じんわりと広がっていくのを感じる。
彼女達はここでの暮らしをとても愛していて、日本から来た私たちにその暮らしを見せられることをとても喜んでいた。



別れる時、彼女のお母さんは「また今度!」と言ってくれたし、彼女も「いつでもwelcomeするよ」とメッセージをくれた。
またいつかアンザンを訪ねたいと思う。
それまではこの旅の宝物のような記憶を心の内に閉まっておいて、好きな時に取り出しながら毎日を過ごしたい。



旅も後半に差し掛かって、これから寝台バスで4時間かけてホーチミンへ向かう。ホーチミンでは、一緒にベトナムを訪れた日本人の大親友とのふたり旅。
この冒険に溢れたホーチミン旅ももう過去のことになり、今は日本で仕事に向かう途中の電車でこれを書いている。
その旅のことも、ここに残しておこう。私にとってとても大切な思い出になったから。



次は、ホーチミンの景色と共に会おうね。



最後に、島で遊具を回してくれたあのパパにもらったビールを添えて🍻



この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?