5月、いよいよインディー500の季節 ワクチン接種が進み変わりゆくアメリカ

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アメリカの場合、ワクチンはドラッグストアで打って貰える。セイント・ピーターズバーグのCVSでは朝からワクチン接種が行われていた。予約をした100人程度が毎日ワクチンを打ちに来ているという話だった

 アメリカの自動車レース最高峰=NTTインディーカー・シリーズは4月の第3週に深南部アラバマ州バーミンガム郊外のサーキットで開幕した。休む間もなく翌週末がフロリダ州のタンパ湾沿いの街セイント・ピーターズバーグでのストリート・レースで、さらに次の週もレース。しかも、テキサス州フォート・ワースでのオーヴァル・レースはダブルヘダーというハード・スケジュールだった。本来3月に開幕戦として行なわれる予定だったセイント・ピーターズバーグのレースがアラバマとテキサスのレースの間に割って入ったからだ。

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インディアナ州インディアナポリスからケンタッキー州を経て南部の大都市ナッシュヴィルへ。テネシー州の州都だが、人口は70万人程度。工事が多く、渋滞に捕まることは避けられず

 この4レース取材は全部レンタカー利用。インディアナ州のインディアナポリスを出発して、23日間かけてアメリカの南東部をグルリと回った。3,620マイル=5,800kmプラスと、稚内と桜島を往復しても少し足りないぐらいの距離を走った。

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スポーツ・エンターテインメントを安全に運営するため、インディーカー・シリーズはメディアにもワクチン接種の機会を与える英断を下してくれた。ワクチンを打ったのはインディアナポリス・モーター・スピードウェイの中

 世界で一番長い歴史を誇るレースが、インディ500。今年はまだ観客動員数を制限する予定だが、決勝日に30万人以上を集める世界最大のスポーツイベントとして開催され続けて来ている。昨年は8月の、それも無観客での開催だったが、日本人ドライバーの佐藤琢磨が優勝。この4月に松山秀樹がゴルフのマスターズで勝ったのも凄いことだが、琢磨のインディー優勝は2017年に続く2回目だったという点でもかなり偉大な記録だ。日本での評価が相応に高くないのが悔しい。2回ともホンダ・エンジン搭載マシンでの優勝でもあったのに。

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佐藤琢磨は2020年のインディー500で優勝。彼にとっては二つ目となる”ベイビー・ボーグ”と呼ばれえるトロフィーがセイント・ピーターズバーグでのレースウィークエンド中に授与され、チーム・オーナーのボビー・レイホールにもオーナー用トロフィーが贈られた

 スケジュール変更のおかげもあって、3州での4レースはいずれも観客を入れて行なわれ、多くのファンがレース観戦を楽しんでいた。近頃のアメリカでは、ワクチン接種が急速に広がっているの強く感じる。去年の夏、トランプ政権はパンデミックを”存在しない”ぐらいの扱いにしていて感染が広がり、死者は結局50万人を超えた。それが今年の1月末にバイデン大統領に替わる一転、ワクチン接種が急速に進み、重傷者数、死者数は激減している。

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セイント・ピーターズバーグのグランド・スタンド。みんなマスクはほとんど着用していなかった。同一世帯同士で固まって座っているから……って事情もあるのだろうが

 いま、アメリカはどんどんビジネスがオープンされて行っている。街のレストランやバーも人数制限は緩めらるか、ナシにされるか……という状況。活気が戻って来つつある。
 しかし、その一方で不思議な現象も起きている。1日400万ショットを超えた時もあったワクチンが、最近は1日200万ショット以下に激減している。国が支給すると決めた数に対して、「その10パーセント以下に減らしてくれて大丈夫」と申し入れた州もあるという。7月4日までに成人の70パーセントに少なくとも1回のワクチン接種をしてもらう、とバイデン政権は言っていて、もう60パーセント近くがそういう状況にあるようだが、接種を躊躇、拒否する人たちが今でもかなりの数いるし、目標達成となるのかどうか。ワクチンが無料と知らない人がいるのは驚きだけれど事実だし、仕事を休めないから打てない人がいたり、ワクチンは悪だと騒ぎ立てている宗教もある+当然信者たちはワクチンを打たない。ワクチンにはマイクロチップが入っていて……なんていうとんでもない陰謀説を唱える人までいて、それを信じている人もいる。1回目を打ったのに2回目に現れない人が8パーセントぐらいいるという、もったいない話もある。二大政党のひとつ=共和党の男性党員の半数近くがアンチ・ワクチンなんて、もう完全に理解不能だけれど、厳然たる現実。その人たちの大好きなトランプさん、コロナに一度罹ってる上、大統領職から解かれる直前に夫婦でワクチン打ってますけど……。

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テキサスでの2レース目終了後、ガレージ・エリアでワクチン2回目の接種。こんな場所で? って感じ。翌朝、熱を測ったら37度。副反応も無し

 いまやワクチン、アメリカでは余っている。おかげで我々のような外国人にまで、”シリーズを取材する人々”としてワクチンを打って貰えた。この遠征前にインディアナポリスモータースピードウェイで1回目、テキサスモータースピードウェイでのレース後に2回目を打って貰った。フロリダで立ち寄ったドラッグストアでは毎日100人以上がワクチン打ってるという話だったし、今日行ったインディアナポリス郊外のウォルマートでは”ワクチン無料。予約要りません”というパネルが入口に掲示されていた。日本は、まだ老人にも1回目が行き渡っていないのに。

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2回のワクチン接種完了が明記されたCDC発行のカード

 ”日本人は優秀だ”とか、”コロナがここまでの感染で収まっているのは日本人のモラルが高いから”とか、”日本の技術は世界でもトップ・レヴェル”って話が日本人は大好き。でも、日本はワクチンをまだ作れてない。国も地方も問題への対処に失敗し続けて来たから1年以上経っても窮状から抜け出せていないし、アメリカから届いているワクチンを素早く国民の間に広めることもできない。日本は全然優秀なんかじゃないんで、認識を改めて改善を目指さないとならない。

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ついにインディアナポリスでは予約ナシでもワクチンを打って貰えるようになった。それも日用品スーパーのウォールマートで

 カナダでは、まずはより多くの国民に1回目の接種をという方針が採られている。ファイザーとモデルナのワクチンは2回接種が推奨されているが、1回でも効果はかなり高いという研究データがあるらしく、2回目の接種を4ヵ月後にしている。それだけ間隔を置いても効果があるんだというい。日本ではコレ、検討されたんだろうか?

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早朝スタートでインディアナポリスに向かった。ミズーリ州からミシシッピ川を渡ったらイリノイ州

 テキサスの後、4日間をかけてはゆっくりとインディアナポリスまで戻って来た。もう1日かけてもいいかな?
と思っていたら仕事が入り、金曜は早起きをして300マイルを一気に走破。そのご褒美として、インディアナポリスモータースピードウェイ内にあるホール・オヴ・フェイム・ミュージアムの地下1階を見せて貰えた。そこには歴代優勝マシンがズラリ。その存在は知っていたが、まさか自分が入れることになるとは!
写真撮影は禁止。地下室を見た証としてVIPツアー・パスも貰った。

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スピードウェイには地下室があり、貴重なレーシング・マシンがギッシリ並べられている、という話は前々から聞いていた。まさか、それを見せて貰えることになるとは。感謝感激。ベースメント・ツアーなるものも近頃はVIP用に行なわれている、とパスを貰って初めて知った

 第105回インディアナポリス500は今月末に開催される。佐藤琢磨の連覇=3勝目はなるか?

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スピードウェイのインフィールド、ターン1とターン2の間にあるホール・オヴ・フェイム・ミュージアム。これまでに104回行なわれたインディー500のウィニング・カーはすべて所蔵されている(所有権を譲られていない車両もあるけれど……)。毎年変わるテーマ別展示が素晴らしい。現在は史上最多タイの4勝を記録したリック・メアーズ特集が公開されている

以上

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