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描き方がわからない人のための観察の基礎

なぜ観察が大事なのか

観察力とは見て感じて理解する力です。
目の前にあるものを視野に入れているのはただ見ているだけです。
見ているものを理解して感じ取ることを観察といいます。
見るのは目、感じたり考えたりするのは脳です。
観察は目と脳の共同作業です。

料理人やソムリエは
甘味、塩見、酸味、苦味、旨味などの味の構成要素を
敏感な味覚で感じ取ることができなければ
おいしい料理を作ったり良いワインを選び出すことができません。
どれだけ優れたレシピやワインの知識を増やしても、
鋭い味覚がないと意味がない。

絵を描く人間にとっての観察力とは料理人の味覚と同じです。
絵を描くときも、絵の構成要素を理解して感じ取る能力が必要なのです。
そして観察力を鍛える方法がデッサンです。
何を描いたらわからない人ほどデッサンはお役に立ちます。
わからないのは観察ができていないからです。
観察ができたら描き方がわかるようにます。
「〜の描き方」を探さなくても自分で絵を描けるようになります。

どのように観察するのか・・・【方法】

では観察の基本的な方法を3つ紹介します。
詳しい練習の方法は別な記事にまとめますが
絵を描いていないときにも意識をしていると練習になります。
ものの考え方なので、何かを選ぶとき、見つけるときに
日常で活かすこともできます。

観察の3つの方法

⒈比較
⒉推測
⒊展望

⒈比較
何を描いたら良いのかわからないのは「違い」がわからないからです。
二つのものを比べると違いがはっきり見えてきます。
違いを見つける基本が比較です。

⒉推理
【推理】わかることをもとに、まだ分からないことを導き出すこと。

例えば人を描くとき、服の生地の柔らかい感じを描いていると
見た目以上にふにゃふにゃになることがあります。
それは表面の布だけを見て描いているからです。

服の中の体、体の中の硬い骨があることを意識すると
「ふにゃふにゃの布」の中にある「しっかりした体」の存在を感じます。
見えているけれど感じていなかったものがわかるようになる。
すると表面的な布の表現だけでなく、中の体を表現できるようになります。

このように隠れている形や中の構造を推理することで
リアルな表現ができるようになります。

⒊展望
展望は視野を広くして全体を見渡すことです。
全体が視野に入るように目の焦点を調節します。
速読のときの目の使い方と同じです。
離れたところから見るのも同じ効果があります。
こちらの方が簡単で確実な方法です。
視線は画面の中心と関心があるところに集まる傾向があります。
だから画面全体を視野に入れてバランスを確認するのです。

何を見るのか・・・【視点】

最後に何を観察するのか。視点について説明します。
基本を4つだけ覚えてください。
色々な要素がありすぎて何を見ているのかわからなくなるからです。
練習するときは、はじめは一つか二つに絞り込むとわかりやすい。
複雑な現実をシンプルに見るのがポイントです。
これができたら初心者卒業です。

観察の4つの視点

⒈輪郭
⒉階調
⒊形態
⒋空間

⒈輪郭

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輪郭はものや色の境目です。
実際に線は存在しないけど絵を描くとき線を描いて表現します。
目に見える存在を描くために存在しない線を描くなんて不思議だなと思う。

輪郭を見るときのポイント
①度合い=どれくらい曲がっているのか
②位置=どこが曲がってるのか
③角度=垂直〜水平
この3つに注意してください。

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①右の青い輪郭の方が曲がりが強い=度合い
②右の真ん中の下のあたりの曲がりが強い=位置
③横の赤青の輪郭は垂直に視界し、上下の緑の輪郭は水平に近い=角度

このように分けて「比較」をして特徴を理解をします。


⒉階調

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人がものを見ることができるのは光があるからです。
今までは「光」と「影」として教えてきましたが

「全体の流れ=階調」を観察する

と覚えてください。

「光と影」で説明をすると明るいところ、暗いところをバラバラの点で見てしまう。大事なことは全体を視野に入れて流れを見ることです。

光と影の流れには物理的な規則性があるから誰が見ても同じです。
誰が見ても同じだから間違えがわかりやすい。
だから訓練に向いているんです。


⒊形態

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形態はシンプルに見ると

凹=へこみ
凸=でっぱり

の二つだけです。

1の輪郭(外の境目)を見ているとわかりにくい。
2の階調(中の光の流れ)を見るとわかりやすい。

凸は光が当たりやすくて明るいことが多く、
凹は光が届きにくいから影になりやすい。
だから明暗を描けば間接的に形の表現になるのです。

形と影(階調)の区別がついていない人が多くて、
どちらかわからずに描いている人が多い。
ごちゃ混ぜになって整理できないから思った通りに描けない。
立体的に描けない原因の一つだと考えている。


⒋空間

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空間のポイントは距離と角度です。
距離=近〜遠
角度=低〜高
要するに位置関係のことです。パースの元になる視点です。

距離
大きさが同じものでも近いと大きく見えるし、遠いと小さく見える。
画面の入れ方=構図に関係してきます。
これを頭で考えて近いものは大きく、遠いものは小さく描くと
ぎこちなくなることが多い。
頭で考えたことと現実にギャップがあるからです。
距離感は理解することではなく感じることです。
実物を見て距離を感じて感覚を育てる。

模写で絵の勉強をした人は空間の感覚が鈍い人が多い。
絵も写真も平面だから空間の感覚が育たないからです。

角度
目より上にあるものは見上げているし、下にあるものは見下ろしている。
自分の目より上にあるのか下にあるのかを意識します。
そして高さが変わると見え方が変わるのですが
正面に向き合うときの形を思い込みで描いてしまうことが多い。
これは見たものを描かないで思い込みを描いているからです
人は見ているようで見ていないことが顕著に現れます。

ぼくは絵を描く勉強を通じて、人の目がいかにあてにならないかを学びました。
見ているつもりが見ていないし、ちょっとしたことで錯覚を起こします。
客観的に現実を見るのは本当に難しいことなんだと思いました。
だから観察の技術が必要で、訓練をするのです。

絵を描くときの3つの方法や4つ視点に関しての概要を書きました。
具体的な練習の方法は改めて記事にしようと思います。


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感覚は文章ではなかなか伝わらないので体験するのが一番です。

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6月26日(土)10:00〜12:00

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長所と短所をお伝えするので練習の効果も倍増します。

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