思春期の大罪(3/4)

「YUI」、「RADWIMPS」、「大塚愛」。この3名のアーティストは僕の中学時代の恋愛観を築き上げたといっても過言ではない。特に「RADWIMPS」は異常なほどに聞き込んだと思う。そして、多分この事が、僕の恋愛観に拗らせを生んだ要因である。(決して上記のアーティストを否定しているわけではありません。) ※2

今思えば、この行為自体が黒歴史のようだけど、当時は恋愛についてなにか掴むために必死だったのだと思う。(けど趣向のせいか、ピュアな恋愛を求めていたのに失恋ソングばかり聞いてた気がする。) しかし、これだけ聞いても結局、僕は恋愛とは何かという確固たるものがわからなかった。強いて言えば、拗らせた愛こそが至高であるという誤った見地だけは身に付いた。しかしこれは第三者視点から見れば、面白いのかもしれないが、当事者となると話は別だということは、つい最近学んだ。

そうこうしている内に、ついに卒業式を迎えた。

卒業式を迎えるにあたり、事前に彼女サイドにも僕が彼女に好意を持っているという情報が、どのネットワークを通じてか、暗に伝わっていた気がする。曖昧な記憶でしかないが、1,2月ぐらいからたまに彼女を見かけると、どこかお互いよそよそしさがあったし、僕が彼女と接点があると、周囲がそれっぽい雰囲気を醸し出していた。(しかしここまで来ても、彼女と会話をすることはほぼない。) 彼女側もこちらをどこかでリサーチしていたのだろうか。こればっかりはわからない。

無事卒業式が終わり、みんなが卒業証書を持って、校門前で仲良しの友達や先生と写真を撮ったり、アルバムに一言を書いたりして中学最後の瞬間を楽しんでいた。正直、ここまで来ても、僕は告白を躊躇していた。いっそのこと、このまま彼女が僕のことなんて知らずに帰ってくれれば、それか僕が友人の反感を買ってでも、家に帰ってしまえばとさえ思った。どうしようもなく、僕は最後の最後まで腹を括れずチキンだったのである。しかし、現実は僕の思いなんて度外視に進んでいく。なぜならば、僕の友達からすれば、僕が告白するこの瞬間こそが最大の楽しみなのである。僕がそれとなしに帰ろうとすると、彼らは全力で僕を止めに入り、予定通り校庭の片隅に誘導した。

僕は全く心の準備ができていない状態で彼女が来るの待つことになった。絶望的である。ここでもう一度よく考えてみてほしい。僕は彼女に好意を抱いているけど、彼女は僕の存在を知っている程度でしかない。そしてこれまで彼女と仲良く関係を築いてきたわけでもない。つまるところ、これは100%玉砕フラグである。爆発するとわかっている地雷を誰が進んで踏みにいくであろうか。それでも僕は校庭の片隅で彼女が来るのを待っている。どうやら僕の友達は彼女の友達といつに間にかタッグを組んでいて、適当に理由をつけて彼女を呼んでくるそうだ。ここまでくると後はもうなるようにしかならない。

待つこと数分、遂に彼女は僕の前に現れた。彼女も鈍感ではない。この状況を見れば、もうそれは告白されると言うことは自明であった。彼女を目の前にしても僕はどうすればいいかわからなかった。完璧に思考が停止している。しかし、改めて彼女とちゃんと向き合ってみて、なんとなく感じたことは、僕は彼女のことが好きなのかもしれないと言うことだった。緊張の絶頂の中、本当ならば、前々から気にかけてたことなどをうまく伝えることができればよかったんだと思うけれど、僕は咄嗟に「付き合ってください」とだけ言ってしまった。


一言伝えた後、即座に僕はこれはやらかしたなと思った。しかし一方で、そもそもこの告白は受け入れられるはずがなく、この後は振られて、友達に慰められ、この告白はちょっと淡い苦い思い出として終わるのであろうと思っていた。

彼女は僕の告白を聞いて相当悩んだと思う。当たり前だ。ほぼ初対面の人に、ましてや卒業式に告白されたのだから。

少し沈黙が続いた。

その後、彼女は勇気を振り絞って答えをくれた。

彼女の返事を聞いた途端、僕は拍子抜けを食らった。理解が追い付かず、不思議でたまらなかった。

告白後、僕はぎこちなく、それでいながら少し気持ちがハイな状態で、照れながら「これから宜しくお願いします」とだけ伝え、紙にメールアドレスを書いて交換し、また連絡すると伝えて、その場を後にした。

そう、告白は成功したのだ。

こうして、僕の初めて交際が始まることなる。

※2 その他に特別枠として阿部真央の「貴方の恋人になりたいのです」も加えておきたい。

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