「まだ死なないでね」
妹は父へのラインの最後に必ずこの言葉を添えるらしい。
「まだ死なないでね」
母がおもしろおかしく私に教えてくれた。
でも私は、この言葉を紡げる妹ってすごいと思った。
みぞみぞする潔さ。気持ちいいくらいの無神経。
ある程度年齢を重ねれば、親も子も誰だって意識する「親の死」。
けれども互いの思いをクロスさせるのてなかなか勇気がいると思う。
だから「親より1日でも長く生きるのがせめてもの親孝行」なんて独りよがりな言葉あるのだろう。
「死」の存在は肯定しつつも、でもそれは今じゃない、「まだ」なんだ。
娘に死を意識させられる親の気分ってどんなもんなんだろうか。
妹の死生観ってどんなもんなんだろうか。
同じように身内の死を経験し、その度に心かき乱されて姉妹それぞれに死生観を更新してきた。
きっと妹は死生観なんて意識しないで「敬具」くらいの感覚で添えているんだろうけど、余計にやっかいだ。
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