駆け出し百人一首(31)我が如く我を思はむ人もがなさてもや憂きと世を試みむ(凡河内躬恒)

我(わ)が如(ごと)く我(われ)を思(おも)はむ人(ひと)もがなさてもや憂(う)きと世(よ)を試(こころ)みむ

古今和歌集 恋五 750番

訳:私が相手を愛するように、私のことを深く愛してくれるような人がいたらなぁ。それであっても憂鬱になるのか、世の中を試してみたい。

I wish I had a sweetheart loving me as much as I love her. Then I would like to know whether I would feel sad in spite of such a precious girl or not.


非リア充、陰キャの歌という感じで好きです(笑) 彼女がいなくて毎日全然楽しくない。相思相愛の相手がいたら、もっと人生楽しいかな〜、という。
ただ、恋の進展順に和歌を並べることで恋一〜恋五を構成している『古今和歌集』において、恋五の巻に入っているということは、彼女はいたものの、自分の方ばかりが好きで、空回って、上手くいかなくなって別れてしまったのでしょう。
凡河内躬恒は重い男だったのかもしれません。


文法事項

我が如く:比況の助動詞「如し」の連用形。
思はむ人:この助動詞「む」は文中の連体形で婉曲。
人もがな:「もがな」は願望の終助詞で「〜があったらなぁ」。体言や形容詞等の連用形につながる。
さてもや憂き:「さても」の部分は「そうであっても」「それでも」という逆接的な意味。係助詞「や」からク活用形容詞「憂し」連体形に疑問の係り結び。
試みむ:マ行上一段「試みる」未然形+意志「む」終止形。


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