駆け出し百人一首(25)夏河に光を見せて飛ぶ魚の音する方に月は澄みけり(上田秋成)

夏河(なつかは)に光(ひかり)を見(み)せて飛(と)ぶ魚(うを)の音(おと)する方(かた)に月(つき)は澄(す)みけり

藤簍冊子

訳:夏の川面で、きらりと光って飛ぶ魚。それが水に落ちる音のする方を見ると、月が澄んで輝いているんだなぁ。

One summer night, a fish flashing with light jumped into the river. The sound of water guided me to see the beautiful moon.


百人一首の「ほととぎす鳴きつるかたを眺むればただ有明の月ぞ残れる」(後徳大寺左大臣)とよく似た構造の歌です。「ほととぎす……」が、聴覚→視覚と変化するのに対し、「夏河に……」は、視覚→聴覚→視覚と移り変わるのが面白いところです。
平安貴族の和歌では「夏の和歌=ほととぎす」ですが、江戸時代の上田秋成はそれに縛られていませんね。夏の夜の、一服の清涼剤のような美しい情景です。


文法事項

澄みけり:和歌の文末の「けり」は気付き、詠嘆。


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