駆け出し百人一首(27)冬枯れの森の朽葉の霜の上に落ちたる月の影のさやけさ(藤原清輔)

冬枯(ふゆが)れの森(もり)の朽葉(くちば)の霜(しも)の上(うへ)に落(お)ちたる月(つき)の影(かげ)のさやけさ

新古今和歌集 冬 607番

訳:冬枯れした森の朽ちた落ち葉に置いた霜。その上にそそぐ月の光の清く美しいことよ。

How clear today's moonlight is! It is shining on frosted decayed leaves in the winter forest.


この歌は、百人一首におさめられた父顕輔の歌「秋風にたなびく雲の絶え間より漏れ出づる月の影のさやけさ」(『新古今和歌集』秋・413)とよく似た歌です。
昔の和歌は、桜が散る(=花びらが「降る」)のに、自分が歳を重ねる(=「古る」「経る」)のを重ねるなど、歌人が自分の想いを風景に託すことが多かったのですが、これらの歌はそうした主観を排し、風景を写実的に描き出しています。これは、近代の俳句が「写生」と言って、シンプルに目に映ったものを詠もうとした姿勢に通じます。
全体として客観的な描写の和歌であるからこそ、最後の「さやけさ」(清く澄んでいること、明るくはっきりしていること)という語が強く印象に残ります。


古文単語

影:光。古文単語では「光」「姿」「影・陰」の意味がある。光の意味では、月影(つきかげ)、火影(ほかげ)などの例がある。


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