noteクリエイターファイル #6 いわきりなおとさん×井上二郎さん対談

noteクリエイターファイル」第6回、今回は特別編として、cakesで連載していた『おしえて北斎!』が6月に書籍化されたいわきりなおとさんと、noteで連載していた『芸人生活』が絶賛発売中の芸人・井上二郎さんの対談をお送りします。noteをきっかけに作品が書籍化されたお二人ですが、じつは隠された共通点があって……?

『おしえて北斎!』を子供のときに読んでいたら、芸人やってなかったかも

いわきりなおと(以下、いわきり) 今日はお会いできてうれしいです。ずっと、井上さんに会いたいと思っていたんです。

井上二郎(以下、井上) ありがとうございます。いわきりさん、思ったより大きいんですね。もうちょっと小柄な人かと思ってました(笑)。

いわきり あはは、漫画の自分はちっちゃくしてるんです。ほら、そのままオジサンに描いちゃうと読む気が……ねえ(笑)。

井上 でも、似てますね! 僕は「第一回 コルク×noteマンガコンテスト」で、いわきりさんを知ったんです。『日本美術をめぐる冒険 1話 江戸時代のコーラ瓶』を見て、こういうのが賞をとるんだろうなと思ってたら、やっぱり受賞して、連載から書籍化までいっきにと、お見事ですね!

いわきり とんでもないです。ありがとうございます。

井上 僕、いわきりさんの絵が好きなんです。レトロな感じで、歴史物と合いますよね。『おしえて北斎!』も、もう4回くらい読みました。歴史上の登場人物が、夢をかなえるためには何をすればいいのか分かりやすく教えてくれて。こういう作品を子供の時に読めていたら、いま芸人やってなかったかもっていうくらい、心に響いたんです。

いわきり うわ、泣きそうだ……。

井上 こういう漫画って、物事の羅列になってしまうことが多いと思うんです。「こういう人がいました」みたいな。それを、ちゃんと歴史を理解し噛み砕いたうえでキャラクターにして、その人物以上のセリフがどんどん出てきて……。簡単そうにやっているけれど、なかなか難しいことなんじゃないかと思って。

いわきり めちゃくちゃうれしいです。僕も、井上さんの『芸人生活』を読んですごく感動したんです。マンガコンテストに応募したのも、じつはこの本がきっかけで……。この話、ちょっと長くなってしまうんですけど、いいですか?

井上 どうぞどうぞ(笑)。

『芸人生活』が、漫画家魂に火をつけた

いわきり 僕、10代のころはグダグダ過ごしていたんですが、20歳のときにあることがあって、漫画家を目指すようになったんです。結局東京でデザイナーとして就職するんですが、漫画やイラストは個人で描いていました。そうするうちに仕事も増えてきて、フリーになったんです。やりたい仕事もわりとできて、「好きなことでご飯食うの、ちょろいな」って思っていました。

井上 いやいや、めっちゃすごいと思いますよ。

いわきり でもそれを神様が見ていたのか、30代後半に突入したとき、重い腎臓病(※2017年完治)にかかってしまったんです。しかも、進めていた単行本の話がポシャったのと同じタイミングで。

井上 うーん、それはキますね。

いわきり 元気なときなら「違う出版社に」って思うけれど、そのときはもう「クリエイターとしては生きていけない。まずは家族が安心する仕事をしなきゃ。もう漫画を描くのはやめよう」となってしまって……。そんなときに、noteで井上二郎さんの『芸人生活』を見つけて、「自分が好きなことを漫画にしてる人がいる!」ってことに感動したんです。書籍化されていたので、すぐに取り寄せて、一気読みしました。

井上 ありがとうございます。

いわきり もうすごくおもしろくて。僕も井上さんみたいに、もう一度漫画を描こうと思ったんです。その時に「コルク×noteマンガコンテスト」の告知を見つけて、応募しました。入選したらcakesで連載できて、うまくいけば単行本も出せる。本が出たあかつきには、絶対井上二郎さんにお礼を言おうと決めていたんです! だから、そういう長い階段を上って今日やっと、ここにたどり着きました。

井上 本当ですか! この話、ちょっとできすぎじゃないですか?(笑)

いわきり 本当です(笑)。これが、僕が井上さんに会いたかった理由の一つ目です。とにかく『芸人生活』は、ガッツリ僕の人生を変えた一冊なんですよ!

井上 うわあ、うれしいです。僕の漫画でそんなことを思ってくれて。

いわきり 本当に、すごくおもしろかったです。ギャグもあり、泣かすところもありで。

井上 ありがとうございます。相方がよく「嘘ばっか描きやがって」とか言うんですけど、僕の『芸人生活』も、すべて本当のお話です(笑)。

会いたかった、二つ目の理由

井上 いま僕に会いたかった理由の「一つ目」とおっしゃいましたけど、ほかにも理由があるんですか?

いわきり ええ、実は……。あ、その前に、お互いの10代のころの話をしてもいいですか? 今日は、ハタチ手前のころのお写真を持ってきてもらっていると思うんですが……。

井上 ああ、写真。持ってきましたよ。ちょうどいいのがなくて、これは16歳のころなんですけど。

いわきり 面影がありますね〜。僕も、19歳のころの写真を何枚か持ってきました。

井上 へー、これが……。あれ?

嘘のような、ホントの話

井上 (いわきりさんの写真を凝視しながら)なんか、昔の相方に似てるなぁ……。これ、撮った場所はどちらですか?

いわきり 大阪府です。

井上 ……いわきりさん、ひょっとして芸人やったことないですよね?

いわきり ……実は、写真を見たら思い出してくれるかなあと思って。

井上 え!?

いわきり 僕は、20年前のあなたの相方です!

井上 ええ!? 嘘でしょ!?

いわきり 本当です。

井上 ……ドッキリかーーーーい!!!

いわきり (笑)。だから、ずっと会いたかったんです!

井上 そうなんだ……! なんか似てるなって思って……。ええーー! じゃあ、あれから芸人を辞めて……?

いわきり そうです。これが井上さんに会いたかった二つ目の理由です。

井上 もーー!! 今日呼んでいただいた理由がよく分かりましたよ(笑)。なんか変だなって思ってたんです……。

いわきり 驚かせてすみません(笑)。

井上 本当にビックリしました。こんなことってあるんですね……!

ふたりの知られざる「芸人生活」

いわきり 当時の僕は漫画家のなり方が分からなくて、何故か芸人ならいけるって調子にのっていたんです。それで、19歳でNSCの17期生になったわけですけど……。

井上 なるほど……。いやあ、変な汗かいてきましたわー(笑)。僕、当時はいわきりさんにけっこう失礼なことをしたので……。コンビ名も、普通はお互いの名前を合わせるのに、自分の名前にしたんですよね。いわきりさんを小道具扱いしてましたからね。

いわきり あはは、そうそう。コンビは、組んでほしいとお願いしたほうが力関係は下になりますからね。僕がお願いしたから、その時点で井上さんが上、僕が下で。

井上 何をしてもいいと思ってましたからね、僕は。相当痛い勘違いをしている18歳のころで……。

いわきり それが悔しかったとかではなくて、本当にありがたかったんです。あのときに井上さんを見て、本気でプロを目指す人は、24時間ずっとお笑いのことを考えてる人なんだって分かって、そのおかげで僕は自分が好きな漫画の道にいこうと思えました。

井上 僕、そんなに考えてましたかね?

いわきり ふつうに話してても、「今のツッコめよ!」とか、「俺が笑いを教えてやる」くらいの感じで、とにかく当時の彼は尖りまくってて……。

井上 ちょちょ、これ以上はやめてもらっていいですか?

いわきり はい(笑)。今まで、本気で漫画描こうって思ったときが2回あるんです。1回目が、19歳で井上二郎さんに会ったとき。2回目が、前回話した、30代で『芸人生活』を読んだとき。2回とも、井上二郎さんのおかげなんです。だから今日は、そのお礼を言いたくて。

井上 「お礼参り」でしょ?

いわきり いやいや、本当にただの「お礼」ですよ! あのとき井上さんにヘコまされたお陰で、自分の好きな道に行こうと思えたので。

井上 じゃあ、僕はいいことをしたんですね……。いやー、騙されたぁ。普通に一流クリエイターだから、自分が呼ばれたのかと思ってました(笑)。もっと早く言ってくれればいいのに。

いわきり すみません。覚えてないと思ってたんで、覚えててくれてうれしいです。

井上 もちろん覚えてますよ! でもまさか、いわきりさんが相方だとは思わないし……。あれ、ということは、そのときから日本美術に興味があったんですか?

いわきり ありましたね。

井上 じゃあ「国宝漫才」とかすればよかったですね。

いわきり たしかに。当時は河原とか神社で漫才の練習してましたよね。

▲当時の二人が並んだら、こんな感じだったかも?

井上 ネタ見せも、なんか覚えてるもんなぁ。サザエさんのネタとかを僕が渡してね。

いわきり サザエさんのネタ!? 僕、「卵ダイエット」のネタなら覚えてるけど……。

井上 え!? それは知らない。

いわきり あなたのネタなのに!(笑)

井上 でも、本当にお互い大人になりましたね。うれしいです。

今後の活動

いわきり ところで、『芸人生活』ではNSC時代の話はあまり描かれていないですよね? 井上さんには、若いときの話を1話でも描いてほしいなぁ。

井上 そうですね、描けない話も多いですが(笑)。人の話ばかり描いちゃってるので、コンビの話とかも描きたいです。せっかく再会できたんだし、いわきりさんとも一緒に何かやりたいです。

いわきり あの、もしよければ、僕目線で当時の話を描いてもいいですか?

井上 ぜひ描いていただきたいです! あと、いわきりさんには『おしえて北斎! 2』もしくは西洋画版として『おしえてピカソ!』をやってほしいですね。英語と日本語バージョンで。

いわきり そうですね、西洋美術編も考えてはいます。

井上 じゃあ、最後に殴り合ったりしときます?(笑)

いわきり いや、やめときましょう(笑)。それよりも、このあとお茶でもどうですか。

井上 いいですね。20年ぶりの再会を祝して、ぜひ行きましょう!

▲再会の記念に、当時とは上下関係を逆にしてパシャリ


『おしえて北斎!』出版記念トークショー&サイン会
会場:大盛堂書店 3Fイベントスペース
日時:8月6日(日)15:00~16:30 (14:30開場)
ゲスト:いわきりなおとさん
※参加無料・先着50名様

お申込みはこちらから!→http://taiseido.co.jp/sbd20170806.html


いわきりなおと
文化財専門の漫画家。大阪府吹田市生まれ。日本美術、歴史、国宝マニア。
代表作はアニメ映画「楓ニュータウン」、マンガ「国宝トゥナイト」「文化財少女まるプリ」など。「コルク×noteマンガコンテスト」で入賞し、cakesで「おしえて北斎!」を連載。連載をまとめた『夢をかなえる爆笑! 日本美術マンガ おしえて北斎!』を6月23日に発売!
noteアカウント https://note.mu/iwakirinaoto

井上二郎
1977年、福岡県出身。 お笑いコンビ「チャーミング」のツッコミ。SMA所属。
キングオブコント2013、2015、2016セミファイナリスト。漫画好き。
リアルな芸人の日々を描いたマンガ『芸人生活』は、noteで発表後大きな話題となり書籍化。週刊文春「このマンガがすごい」などで紹介された。
noteアカウント https://note.mu/tarent26

構成:鈴木奏子

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