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フェードカットの山田さん

「今日は、4,700円ね。いつもありがとう。でもなんだか.申し訳ないねぇ」

山田さんは、肩をすくめながら、私に言いました。

初めて山田さんに、髪を切ってもらったのは、2年前。たしか料金は、初回限定クーポンを使って、2,200円だったと思います。

私は、短髪で、ゆるやかな天然パーマを所持しています。なので、少し伸びただけで、もみあげまわりが、ジャマイカな感じに。

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襟足が2㎝ほど伸びただけでも、雑草ボーボーな感じがするのです。他の人からすりゃ、全然気にならないよ。という自分のこだわりです。

1か月に1度は髪を切りに行きたいがために、コスパを求め、美容院、理髪店、1,000円カットといろいろ行きました。

しかし、ここという店になかなか巡りあえませんでした。


半信半疑


どこか、いいとこないかな?

ネットで探していると、ハンチング帽に、髭をたくわえ、オシャレなベストを着て、いかにも職人という感じのダンディーな佇まいの山田さんと出会いました。

「確かな技術で、あなたの要望を叶えます。わがままでもなんでもおっしゃってください。丁寧にカウンセリングさせていただきます。私にお任せください

山田さんのビジュアルとメッセージに惹かれ、すぐに理髪店を予約しました。

行ってみると、写真のままにダンディーで、60歳後半とは思えないような鍛え上げられた身体をしていました。かっけぇー。

しかしながら……お店は、お世辞にも綺麗とはいえない雑多な印象で、バーベルなども床に転がっていて、私の座った隣の鏡面には、白髪ウィッグのマネキンくんが、無造作に置かれていました。


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なんだか来る店、間違えたかも……

少し不安を感じていました。


匠の技


しかし、カウンセリングを受けた瞬間、一気に印象が変わりました。

「どんな髪型にしますか?」こんな感じが普通だと思うのですが、

髪切ってどんな印象になりたいですか?どう思われたいとかあります?まず、そのイメージを教えて欲しいんですよね」

こんな丁寧なカウンセリングは、初めて。

イメージしていたものを伝えるうちに緊張も溶けて、気が付けば仕事のこと、家族のことなど、いろいろな話をしていました。

「パリッと仕事出来そうな感じのビジネスでも、カジュアルでもいける髪型に仕上げますよ。任せておいてください

襟足にバリカンを頭に当てられた瞬間、また衝撃。

刃物の角が全くないバリカンを使っているかのように、滑らかで気持ちいい。迷いも一切ありません。

なんと例えればいいのでしょう。美女にずっと頭をなでなでされているような感じですかね。うん、気持ち悪いですね。。。でも本当です。

そこから、さらに丁寧に、慎重なバリカンさばき。襟足から、上に向かって1㎜~3㎜と美しいグラデーションを作っていくそうです。

「清潔感とメリハリが出て、カッコイイんですよね。フェードカットって言うんですよ」

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フェードカット

その後も、フェードの高さなど細かいヒアリングをしてくれて、今までにない美しい仕上がりに大満足。

家へ帰ると、奥さん、子ども揃って「髪切った?」と言ってくれました。こんなことは、初めてで、特に5歳娘が、一番喜んでくれました。

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フェードの手触りにハマったようで、常に頭をナデナデしています。


花が咲く


それから、ずっと山田さんのお世話になっています。

2年前に、勇気を出してネット広告にチャレンジしてみたら、20代のお客さんが急増したそうです

敷居の高い美容院ではなく、何でもわがままを聞いてくれる山田さんのような技術と経験をもつ安心できるバーバーを、求めていたのでしょう。

先日もカットしてもらっていて、2年前を思い出しながら、本当によかったですね。なんて話をしていました。

「人生何があるかわからないね。第二の人生が始まったようなものです。今まで、料金も妥協していたんだけど、もう自分に妥協しないことにしたんだ。こんな話してたら、ほんと泣けてくるよ……」

山田さんはうっすらと涙を浮かべながら、話をしてくれました。

お店が、休みの日には老人ホームで、ヘアカットのボランティアもされているそうです。こんな精力的な60代には、なかなかお目にかかれません。

フェードカットの山田さんは、キラキラしながら、第2の人生を駆け抜けています。きっと、みんな髪を切ってもらうだけではなく、元気をもらいに行っているのでしょうね。

でも、さすがに料金が、5,000円越えたら、考えるだろうな……。

いや、2か月ぐらい我慢するか、大事な時だけ山田さんの元へ駆けつけているはずだ。

髪を切ったばかりなのに、また、あの人に会いたくなってきた。





最後までお読みいただきありがとうございました。 いただいたサポートは他のクリエイターさんのサポートと奥さん子どもにあずきバーを買ってあげたいです。