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強襲、阻止限界点。 1/5 #こちら合成害獣救助隊

晴れてゆく視界の先には、泥と草花で出来た高い天井が見えた。ここはどこだろう。

綺麗な花だ。草いきれが香る中で視線を少し動かせば、天井に立つ生き物が見えた。器用だな。

猿のような毛並みに逞しい体躯。上腕は翼で、頭はカマキリ。合成害獣(キメラ)だ。



ーーーキメラ?

瞬間、身体中に痛みが走り、あたしは一気に覚醒する。世界がぐるりと回り、自分が高い梢の上から真っ逆さまに落下中だと認識した。なに?あれからどうなったの?何秒寝てたの?!

網膜に映る大量のアラート。記憶を整理する。不覚を取ってから5分と経ってない。あたしは自分が飛ばされてきた方向を見つめる。猶予など一切無い。すぐにみんなのところへ向かわなきゃ!

ーでも、その前に!

あたしは眼下のキメラに目を向ける。カマキリ頭のキメラは落下してくるあたしを狙って、足元まで引き絞った豪腕を振り抜く。泥が舞い、背の低い草が風圧でちぎれ飛んだ。ありったけの害意を込めた、一撃確殺の暴威。

しかしそれがあたしのアーマーを粉砕することは無い。命中する寸前、あたしは上半身に捻りを加えて回避した。人体にあるまじき速度と方向。その反動で下半身も回転させて、四足獣のような体勢で着地する。カマキリ頭はまだ腕を振り抜いた姿勢のままだ。よし、いける。あたしには、猫が混ざってるんだから!

全身のバネを解放。渾身の掌底を叩き込む。鈍い衝突音とくぐもった悲鳴。僅かに作動させたスラスターの輝きが舞い散る。直撃を受けたカマキリ頭は身体を震わせながら仰向けに倒れていく。

その巨体が大地を揺らす前にあたしは背後に回り込み、背中に捕獲ユニットを貼り付けた。即座に展開したエアバッグがカマキリ頭の身体を転倒から守り、そのまま多数の捕獲ベルトで巨体をぐるぐる巻きに拘束するのだ。

合成害獣、救助完了。だけどあたしは捕獲ユニットが一連の動作を終える前に、すでに駆け出していた。通信を開く。

<<<こちらレイ!新たなキメラを一体救助!座標を送るから誰か保護お願い!>>>

<<<レイ?!無事か?!>>>

<<<ごめん!心配かけた!状況は?!>>>

<<<これ以上は食い止められねぇ!なんなんだアイツ!>>>

<<<急いで向かうから何とかして!>>>

鬱蒼とした森の中、あたしは飛ぶように本来の作戦地点へ急いだ。事態は深刻。それなのに、なにやってんだあたし!…えぇい、切り替えろ!不覚を取った分まで倍働いてやるんだから!

【続く】

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