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『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』イスラエルのキブツと日本の食料安全保障(環境研究)

 久しぶりに訪れたジュンク堂池袋で目に止まったので購入して読んでみた。著者は食料安全保障の専門家で、元農林水産省の役人で、現在は東大教授。

 前半は、カロリーベースの食料自給率をベースに悲観的なデータが続く。例えば、37%の食料自給率とは、種やヒナはほぼ輸入、化学肥料のリン、カルムはほぼ100%輸入で、リンと尿素は中国からの輸入という前提の上での数字であること。さらに、カルウムはロシア、ベラルーシから輸入であることなど、食料安全保障の危機感が今まで以上に高まっている。さらに、日本の大規模農業は技能実習生に支えられていることから、コロナ禍で外国人の往来が途絶えると、途端に人で不足となる基盤の脆さもある。

 宇沢弘文氏によると、戦後の米国による日本占領政策の日本柱は、①米国車を買わせる、②日本の農業を米国農業と競争不能にして余剰の産物を買わせるものだった。今もこれは続いていると筆者は言う。

 これらの悲観論の末に、希望があるのは後半に紹介されている「ローカルフード法」だ。これは地域の種からつくる循環型食料自給を目指す法律で、ここには地域の在来品種の種苗を守り、活用して、種から消費までの安心・安全な循環ネットワーク作るための国や自治体の財政措置が定めされている。

 地方創生、多文化共生は、日本社会においてシステム化しなければならない領域で、さらにそこに、食料の安全保障をビルトインする必要がある、ということを本書によって認識することができた。
 同時にロシアにおけるダーチャのシステム、イスラエルにおけるキブツのシステムがその解決策のヒントになることも再認識したのである。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。