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【新刊発売】都会で「根無し草」として働くことに疲れたあなたへ #地元がヤバい本


「お前はたしかにやさしい。でもやさしいだけや。人間、強くないとあかんぞ」

大学生のとき、バイト先の居酒屋で恩師である店長にかけられた言葉だ。

店長が「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」というあのチャンドラーの名台詞を知っていたとは思えないけれど、同様に僕も知らなかったし、だからこそ「この人、なんてええこと言うんや……」と大いに感激した。

「やさしさと強さの両立」は、それ以来、僕の人生の目標となった。
京都によくいる自堕落な大学生の一人だった僕は、「強くなる」=「東京でやっていく」ことだと安易に考え、バイトを辞め、就職活動をし、東京の出版社に就職した。

東京で働いて、もう8年が経つ。
このまちは、好きで嫌いだ。
仕事自体は大好きで、その仕事をしやすいという点では好き。

でも、無機質な高層ビルがスパスパと景色をぶつ切りにし、まちのすべてが効率を最優先に設計されている点はいつまでたっても好きになれない。

本能的には、いつも東京に「疲れたなあ」と思っている。山が見たい。鴨川をのんびり眺めてぼーっとしていたい。

京都にいるときにはあったまちとの一体感が持てず、「根無し草」になった感覚が何年経っても抜けきらない。東京で働く、まわりの人はどう思っているのだろう。大学生の頃に京都で出会った大人たちは、もっとまちに根を張って生きている感じがしたけれど。

こんなことを書くと「京都は地方でも田舎ではない」という反論が各所から飛んできそうだが、やっぱり自分にとっては、京都はいい意味で田舎だったし、やさしいまちだった。高層ビルがないからか、京都ではどちらを向いても山がよく見えた。

「強さ」の大都市と「やさしさ」の地方。
どちらも、それぞれのいいところを残したまま発展していけばいい。

今日発売となった『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』を企画した背景にも、自分の中では「強さとやさしさの両立」という裏テーマがあった。

経済原理という「強さ」の物差しからは逃れられないのは東京も地方も同じ。

実際、「強さ」がなかったがゆえに地方の素敵な店を閉じざるをえなかった友人が僕にはいる。彼は、感性が素晴らしかったがビジネスが苦手だった。そもそも、大金を稼ぐことをよしとしていない節すらあった。

当然だが、お金を稼ぐことは、卑しいことではまったくない。むしろ、稼ぎの先にしかやさしさは存在しない。そう思い、地方におけるビジネスのプロフェッショナルである木下さんに本の執筆を依頼した。店を閉めてしまったその友人に、稼ぐ「強さ」を手渡したい、と思ったのが個人的な企画の発端だ。

高らかに、シンプルに宣言したい。

素晴らしい本ができた。

この本は、東京でうだつのあがらないサラリーマンをやっていた主人公が地元に戻り事業を立ち上げる様を描いた、いわゆる「ビジネス小説」だ。

「ザ・凡人」である主人公が「ヒトなし・カネなし・経験なし」の逆境から奮闘し、事業を通じて成長していく姿には、「たしかに、自分でもできるかも」と勇気づけられた。ノウハウを読んだだけでは得られないこの「実感」は、ストーリー形式だからこそ実現できたことだと思う。

一方、「ビジネス書」という観点で見ても、随所に出てくる122の解説と17の描き下ろしコラムは、申し分なく実用的だ。この「付属品」だけで、1500円の価値はゆうにある。

タイトルの「凡人」に込めたのは、「誰にでもできる」という固い意志。メディアは成功してからしか物事を報じないため、地方を活性化に導いたリーダーはいかにも最初から「天才」だったかのように切り取りだが、実際はそんなことはない。

「挑戦しては躓き、心は折れかかり、それでもやめなかったらいつのまにか『凡人』が成功者になっていた。それだけなんですよ」

と木下さんは笑いながら言った。


儲からなかったがゆえに素敵な店を閉めてしまった友人に、この本が届けばいいなと思う。

※発売を記念して、今日から木下斉さんのnoteアカウントで一部を無料公開しています。ぜひご覧ください。木下さんのTwitterアカウントはこちら。



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