見出し画像

組織のパフォーマンスを高めるためにーお互いの悩みを開示し、チームで解決策を考える「当事者研究」をやってみました

こんにちは、インクワイアの岡本です。

チームのパフォーマンス向上は、組織において重要な課題のひとつであり、これまで様々な研究が行われてきました。

Googleが行った組織研究である「プロジェクト・アリストテレス」では、心理的安全性がチームのパフォーマンスを高める成功因子であることが発見されました。

心理的安全性とは、 間違いを認める、悩みを吐露するなどの一見ネガティブに捉えられる行動をとっても「このチームならば大丈夫だ」と個々が信じられている状態のこと。

インクワイアでも、チームのパフォーマンスを高めるために、心理的安全性の向上を目的とした様々なアクティビティを行っています。

5月のオフサイト(※)ではファシリテーターとして、人の持つ可能性が広がる瞬間を捉え、伝えるメディア「soar」編集長の工藤瑞穂さんを迎え、お互いの悩みを共有し、解決し合う「当事者研究」に取り組みました。

※オフサイトの概要についてはこちらの記事をご覧ください。

経験に基づいて悩み事を解決する「当事者研究」の取り組み

当事者研究は、もともと北海道浦河町のべてるの家から始まったものです。精神障害等を抱えた方々の地域活動拠点であるべてるの家では「三度の飯よりミーティング」という合言葉があり、メンバー同士で症状や生活について話し合うことを大切にしています。

そして、話し合いの中で仲間の知恵を借りながら、それぞれが自分の悩みを自分にあった方法で解決していく。そのプロセスが当事者研究と呼ばれているのだそうです。

オフサイトでは、べてるの家での実践を参考にしてNPO法人soarがアレンジして実践している当事者研究を行ってもらいました。

画像1

まずは、ファシリテーターの工藤さんに促され、メンバーが日頃抱えている悩みを発表していくことに。

すると「部屋の片づけができない」「夜だらだらしてしまって寝るのが遅くなる」といった生活上の悩みから「タスクの優先順位がつけられない」「効率的に報告・連絡・相談ができない」といった仕事上の悩みまで様々な声があがりました。

編集を行う小山からは、こんな悩みが。

小山「テキストでコミュニケーションをとると、表情や声色でニュアンスを伝えられないので、必要以上に文面に気を使ってしまうんですよね…。特に原稿のフィードバックをする時は、ライターの方のモチベーションが下がらないように言葉を選ぶので、とても時間がかかってしまいます」

これを聞くと他のメンバーからも「自分もそうだ」との声が次々とあがりました。そこで、多くのメンバーが抱えるこの悩みについて議論をすることになりました

インタビューを通して、解決策を本人から引き出す

まずは、この課題を抱える小山に合う解決方法を探るためにメンバーが様々な角度から質問をしていくことに。

「最近テキストコミュニケーションに悩んだ具体的な出来事はありますか?」
「自分自身がテキストコミュニケーションで傷ついたり、不快な気持ちになることは多いですか?」
「相手との関係性によってコミュニケーションのしやすさは変わりますか?」

画像2

小山がメンバーからの質問に答えるうちに、どのようなポイントで悩みが発生しやすいのかが徐々に整理されていきます。

悩みが整理されてきたタイミングで、ファシリテーターの工藤さんからもこんな問いかけが。

工藤「この『悩み』によって、あなたが得ているポジティブな結果はありますか?」

普段はあまり考えることのないこの問いに対して、小山は悩みながらこう答えました。

小山「そうですね…丁寧にコミュニケーションをとるので、相手との良い関係が維持できているのかもしれません」

同じ悩みを抱えるメンバーからも「相手を気遣ったコミュニケーションをとることで、自分に対しても同様のコミュニケーションを取ってもらえるようになる」「相手のモチベーションがあがり、スムーズに仕事が進められる」といった意見があがりました。

実は、本人が「悩み」だと思っていることも良い側面があるからやめられないこともあるのだそう。悩みの悪い側面だけを捉えるのではなく、良い側面から捉える。すると、前向きな姿勢で悩みに向き合いやすくなるのだと工藤さんは言います。

また悩みのポジティブな側面に着目することで、原因となる行動をなぜやめられないのかが浮き彫りになることも。本人も気づいていなかった動機に気づくことで、本質的な改善にも結びつけやすくなります。

工藤さんからは、行動の背景にある動機に着目したこんなアドバイスがされました。

工藤さん「否定的なフィードバックをしにくいのは、もしかすると、その裏に『みんなに嫌われたくない』という気持ちがあるからなのかもしれないですね。でも、そこは腹をくくる覚悟をもてるといいのかな、と。『嫌われたらどうしよう』という自分の感情よりも、組織全体のことを考える覚悟をもつと悩みは減るかもしれないと感じました」

行動の動機を明らかにすることで、本質的な改善に結びつける

今回の当事者研究では、一人が悩みを共有すると他のメンバーから「私もそうです」「その気持ち分かります」といった声があがりました。こうしたやり取りを通して、悩みなどのネガティブな感情を伝えても否定されたり批判されないという安心感が徐々にチームに醸成されていくのかもしれません。

しかし、当事者研究によって得られるのは単なる安心感だけではありません。

悩みの背景にある自分自身の本当の動機を見つめ直し、本質的な改善に結びつけること。一人ひとりが自分の内面と向き合うための対話をチームで行うことができることーー

それが当事者研究の良さだと感じました。

今回の当事者研究での学びを生かし、これからもインクワイアではチームのパフォーマンス向上にむけた様々な実践に挑戦していきたいと思います。

==
インクワイアでは、日々の出来事や事業に関わる様々な情報をnoteTwitterで発信しています。ぜひフォローしてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?