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世界の広告に学ぶ「バズるアイデア」の生み出し方その1|特長を誇張してみる

はじめまして。Twitterで世界中の広告アイデアやデザインを紹介しているINSPI(インスピ)と申します。

https://twitter.com/inspi_com

noteでは〈世界の広告に学ぶ「バズるアイデア」の生み出し方〉というタイトルで、世界中の優れたアイデアがどのように生み出されているのか事例を交えて複数回に渡り、紹介していきたいと思います。(この記事はその連載第1弾となります。)

■その商品(サービス)の特長や、使用するメリットを誇張する

海外の広告ではとにかく商品(サービス)の特長や、使用するメリットを極端に誇張した表現が多く見られます。現実ではあり得ないような誇張したシチュエーションを描くことによって、印象に残るインパクトの強い訴求を行うことができます。(ともすれば誇大広告になる可能性も高い表現ですので注意が必要ですが。)

今回は「商品の特長を誇張した世界の広告アイデア」を18個の表現手法に分け、紹介していきたいと思います。

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1. 立場を逆転させてみる

▶︎ Sadolin 他の事例:「美術館なのに、絵画ではなく壁の方を鑑賞する客」

まずご紹介するのは「美術館に来た客が、絵画ではなく壁の方を鑑賞している」という塗料(ペンキ)会社のアイデア。20年近く前のカンヌライオンズ受賞作が初出だと思われますが、その後も世界各国のペンキ会社や塗装会社などに幾度も重ね塗りされた秀逸なアイデアです。

本来脇役だったもの(ペンキが塗られた壁)と主役(美術館の絵画)の立場を逆転させることで、手軽に商品(ペンキ)の特長を際立たせることができます。

▶︎ Live Pokerの事例:「空き巣が被害者にすり替わるほどのハッタリ力が身に付く雑誌」

"Become the king of bluff."
(ハッタリ王になろう。)

フランスのLive Poker(ポーカー雑誌)によるシリーズ広告。なぜか空き巣ではなく被害に遭った家主の方が警察に連行されていたり、KKKの集会にアフロの黒人男性が混ざっていたり。この雑誌を読むことで、ポーカーに必要なブラフが学べることを表現しています。

こちらは加害者(空き巣)と被害者(家主)の立場を入れ替えることで、雑誌を読むメリットをユーモラスに伝えることに成功しています。

2. 使用後の世界を一変させてみる

▶︎ Kelopticの事例:「印象派絵画がリアルになるほど視界がクリアになる眼鏡

"Turning impressionism into hyperrealism."
(印象主義を、超写実主義に。)

フランスのアイウェアショップ「Keloptic」のシリーズ広告。ゴッホの自画像をはじめとする印象派絵画を同社が販売するメガネを通して見てみると、まるで実物の写真のような姿が映し出されるというユーモラスな表現でした。

▶︎ Alpineの事例:「昨晩起きた大惨事に気付かないほどの睡眠をご提供」

朝起きて外に出てみると、マンションの前にとんでもない光景が広がっていた、というシチュエーション。周囲の雑音を完全に遮断するので熟睡できますよ、というメッセージを伝えるオランダ・アルパイン社によるイヤープラグ(耳栓)の広告でした。

3. シチュエーションを組み合わせてみる

▶︎ Midea Groupの事例:「犯行現場をステージ上のように丸裸にする防犯カメラ」

中国を代表する家電メーカー「美的集団(ミデアグループ)」の防犯カメラの広告。車上荒らしや骨董品窃盗の犯行現場をステージ上のように丸裸にします、というメッセージを表現しています。

4. 違和感を感じさせてみる

▶︎ McDonald'sの事例:「ハンバーガーをポテトの容器に入れるような初心者でも大歓迎」

"Students wanted. No experience needed."
(学生募集中。経験不問。)

ベルギーのマクドナルドが作ったアルバイト募集ポスター。ハンバーガーをポテトの容器に入れるような初心者でも歓迎してくれることが、ちゃんと伝わる本当に良いアイデアだと思います。

▶︎ STIHLの事例:「屈強な大男なのに、腕だけ子どものような細さ」

"All the muscles you need."
(あなたに必要な、すべての筋肉。)

世界的チェーンソーブランドのSTIHLがベルギーで実施した広告。屈強な大男がチェーンソーを片手にポーズをとっていますが、なぜか腕だけは子どものような細さ。同社のチェーンソーを扱うのにほとんど筋肉が要らないことを示しています。

5. 時間を経過させてみる

▶︎ Duracellの事例:「白骨化遺体の隣で、今もなお光り続ける懐中電灯」

米大手電池メーカーの「デュラセル(Duracell)」による広告。人間が白骨化してもなお、その隣で光り続ける懐中電灯のビジュアルで、Duracellの電池が長持ちすることを伝えています。

"Toys should live forever."
(おもちゃは不死身でなきゃいけない。)

"Some toys never die."
(決して死なないおもちゃもある。)

Duracellの広告だと他にも、電池を使用したおもちゃが白骨化してしまったり、ゾンビのように持ち主の元に帰ってくるというアイデアもあります。いずれも電池が長持ちすることを誇張した、少しホラーチックなビジュアルによる表現です。

6. ありえない場所に登場させてみる

▶︎ Häagen-Dazsの事例:「死刑囚の最後の晩餐がハーゲンダッツ」

ブラジルで制作されたハーゲンダッツの広告。電気椅子の足元には空になったカップ。死刑囚が最後の晩餐としてリクエストするほど美味しいアイスクリームであると誇張して表現されています。

▶︎ McDonald'sの事例:「森の中でひっそりと輝くマクドナルドの看板

パナマで制作されたMcDeliveryの広告。マクドナルドの宅配サービスはあらゆる場所に配達してくれる。それはつまり、森の中や岬、港湾といった遠隔地にまで店舗があるようなことなのかもしれません。

7. 極端に夢中にさせてみる

▶︎ Nintendoの事例:「ゲームに夢中になって餓死してしまうユーザー

"Don't forget to eat."
(食事を忘れずにね。)

20年近く前のゲームボーイカラーの広告(アメリカ)。「食事を忘れるほど夢中になって、とうとうガイコツになってしまった」というおかしな設定なんですが、当時寝る間も惜しんでプレイしていたことを思い出し、なんだか少しぐっとくるものがありました。

こちらは個人的に大好きなゲームボーイアドバンスSPの広告です。刑務所の面会室、ガラス越しに手を重ね合わせる映画などでお馴染みの場面で、訪れた面会者が重ねたのはなぜか足裏。どんな状況でも優先してプレイしたくなるゲーム機であることを表現しています。

2003年にシンガポールで制作された任天堂ゲームボーイアドバンスの広告。ゲームに夢中になりすぎるあまり、「赤ん坊がベッドの中で成人男性にまで成長していること」「地雷によって瀕死の重傷を負っていること」などに、ことごとく気付いていない様子が伺えます。

10年以上前に任天堂がイタリアで実施したニンテンドーDSの広告。写真撮影でなぜか後列の男子だけが全員揃ってうつむいてしまっていますこんなときまで夢中になってプレイしたくなるゲーム機ということですね。

8. 速さを誇張してみる

▶︎ Pizza Hutの事例:「電話での注文中に玄関のチャイムが鳴っている」

タイのピザハットの広告。ぱっと見では意味が分からない方がほとんどだと思いますが、電話線が伸び切っているのがポイント。配達スピードが早すぎるがゆえに、電話での注文中に玄関まで配達されたことを表現しています。

▶︎ Volkswagenの事例:「車一台見えない道路で立ち往生する子どもたち」

道の真ん中に転がっているサッカーボールをなぜか少年たちは見つめているだけで、一向に取りにいこうとしていません。どうやら近付いてくる車のスピードが速すぎるあまり、怖くて取りにいくことができないようです。その加速性能を従来と違った形で表現した、南アフリカのフォルクスワーゲン・ゴルフ R32の広告。

▶︎ DHLの事例:「差出人が封をしている横で、封を切っている受取人

物流会社のDHLがインドで実施した広告。差出人が封をしている側から受取人が封を切る様子が示されています。配達スピードを訴求するクリエイティブな表現です。

9. 小ささを誇張してみる

▶︎ smartの事例:「道路標識の指し示す先が、人すら通れないような隙間」

自動車ブランドsmartがカナダで実施した広告。道路標識が人すら通れないような建物間の細い隙間を指し示しており、同社の販売する車が超小型のマイクロコンパクトカーであることを誇張表現しています。

10. 辛さを誇張してみる

▶︎ KFCの事例:「ホット&スパイシー味のカップの横に、大量の空コップ」

KFCが香港で実施した“とってもスパイシー”な屋外施策。「ホット&スパイシーチキン」という商品のプロモーションなのですが、KFCの店舗付近にその空の容器を囲んだ60,000個にも及ぶドリンクカップを置くことで、同商品があまりにも辛すぎることを強烈に表現しています。

11. 極端に増やしてみる

▶︎ Colgateの事例:「息がキレイになり、漫画キャラのセリフが増加」

"Talk with confidence."
(自信を持って話そう。)

米コルゲート社がチリで実施した歯磨き粉の広告。漫画調なのにセリフの文字数が異常なほど多く、もはや内容を読むことすらできません。「息をキレイにすると、自信を持って話ができるようになる」というインサイトをとてもユニークに表現しています。

12. 極端なファンを登場させてみる

▶︎ Freddoの事例:「たとえ怪我をしても、そのアイスだけは手放せない」

Freddoがブラジルで出したアイスクリームの広告。転んだのでしょうか、しかし地面に倒れている子どもたちの体勢には違和感があります。どうやら頭を打ってでも、頑なにアイスだけは守ろうとしているようです。子どもたちに愛されるアイスクリームブランドであることを表現した面白いクリエイティブです。

こちらはFreddoがアルゼンチンで実施したプリント広告。子どもたちがアイスを狙って強盗に入っちゃうぐらいに愛されているブランドであることを表現しています。

こちらもアルゼンチンで制作されたFreddoの広告。タイトルは"Mourning(哀悼)" 。まるで身近な人が亡くなったかのように、地面に落ちたアイスを哀しげな表情で見つめる喪服姿の子どもたちが描かれています。

▶︎ Panasonicの事例:「切り落とした耳を繋げてでも逃したくない音体験」

"A sound experience you wouldn't want to miss."
(逃したくないサウンド体験。)

パナソニックがイスラエルで制作した過激なヘッドホンの広告。ゴッホが自身の左耳を切り落とした「耳切り事件」とかけていて、このヘッドホンを使いたいがために、ゴッホが接着剤で耳をくっつけようと試みている様子を描いています。

13. 距離を縮めてみる

▶︎ FedExの事例:「海外輸送でも、隣人に手渡すようなスピードでお届け」

貨物航空会社のFedEx Expressがブラジルで展開したシリーズ広告。外壁に描かれた世界地図はまさにFedExの物流ネットワークが世界的規模であることを示しているのですが、国から国への国際輸送であっても、まるで隣人に荷物を手渡すようなスピードで届けることができるということを伝えています。

▶︎ Trust Cargoの事例:「新鮮な魚を運んでいる飛行機を食べようとする動物」

"The freshest fish fly."
(一番新鮮な魚が飛んでいます。)

アルゼンチンの運送会社「Trust Cargo International」の広告。動物たちが飛行機ごと食べてしまいそうになるぐらい、新鮮な魚を運んでいることを訴求しています。

14. 距離を広げてみる

▶︎ Heinzの事例:「ニオイが強烈すぎて、誰も近づいてこない」

"Extra strong garlic sauce"
(非常に強烈なガーリック・ソース)

ハインツがオランダで出稿した「ガーリック・ソース」の広告。新聞の個人広告欄に載せたものですが、そのニオイのあまりの強烈さに周りに誰も近づかなくなる様子を表現しています。

▶︎ Wonderbraの事例:「電車に接触するほど胸が大きくなるブラジャー」

シンガポールで実施された下着ブランド「ワンダーブラ(Wonderbra)」の屋外プロモーション。ワンダーブラを着けると電車に接触するほど胸が大きくなってしまうので、従来の黄色ラインの後ろに自社ロゴの入った線を引いています。谷間がつくれるブラジャーとして名高い同ブランドならではの施策ですね。

15. 動かないものを動かしてみる

▶︎ SABBの事例:「共通不変の紙幣デザインが崩れるほどの送金スピード」

サウジアラビアの大手銀行SABBの広告。昨年12月にRippleの国際送金ネットワークに加入したことが明らかになった同行ですが、紙幣のデザインが崩れるほどの高速送金が売りであることを巧みに表現しています。

16. 壮大なスケールで描いてみる

▶︎ KFCの事例:「スペースシャトルから噴き出る煙はすべてチキンだった」

Adweek「2018年の広告ベスト25」にも選ばれたKFCのシリーズ広告。スペースシャトルから噴き出る煙や特撮ヒーローの背後で燃え上がる爆炎はすべてチキンで作られていて、辛くてスパイシーなメニューにぴったりのインパクトある表現となっています。

▶︎ Batelcoの事例:「街全体を剥がして、目的地を一瞬で判別」

中東バーレーンの携帯電話会社バテルコ(Batelco)によるシリーズ広告。"Batelco Directory"という同社の電話帳サービスを利用することで、レストランやホテル、病院などの目的地が一瞬で見つけられることを最高級のグラフィックス技術で表現しています。

17. 有名なキャラクターを登場させてみる

▶︎ HDTVの事例:「高解像度のテレビ放送は、白髪まで発見できる」

コロンビアのHDTV(高精細度テレビジョン放送)の広告。描かれているのは某テーマパークのキャラクターですが、拡大してみるとこんな秘密があったんですね…。

18. 有名な企業ロゴを登場させてみる

▶︎ Stabiloの事例:「蛍光ペンを引くと、Google検索のように探し出せる」

スタビロ(Stabilo)の蛍光ペンの広告。マーカーを引くことで、重要な箇所をまるでGoogle検索のように即座に探し出せることを伝えています。

最後までご覧いただきありがとうございました。