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相次ぐ中国人民解放軍の粛清~軍内「反腐敗闘争」の裏で何が?

◆宇宙ロケット軍司令官、幕僚団に続き国防部長(国防相)、前国防部長、サイバー・宇宙戦後方支援司令官など次々に姿消す…


ウクライナ戦争に世界が目をとられている裏で、中国では大規模な軍粛清が進行中だ。機会があれば詳しい分析をしたいが、とりあえず、軍トップクラスの幹部たちが連続して姿を消している状況をお知らせしよう。それだけで尋常ではないことが誰でもわかるはずだからだ。


【画像① 李尚福国防部長(国防相)】



日本メディアでも姿を消したので、拘束されたとの推測が報道されている。詳しい容疑は判明しないが、中国筋によると汚職・腐敗問題で中国共産党中央規律検査委員会によって身柄を拘束され、取り調べを受けているとのことだ。李尚福将軍は昨年10月に中国共産党中央軍事委員会委員に選抜され、ことし3月に国防部長に任命されたばかり。習近平主席の信任厚い幹部と見られていたが、8月29日に北京で開催された「中国アフリカ平和安全フォーラム」で演説した後、軍の重要会議にも姿を見せず以来2週間以上姿を消して西側から「拘束されたか」と推測されてきた。


【画像② 魏鳳和前国防部長】



前国防部長だった魏鳳和将軍も姿を消していたが、この度、人民解放軍筋が「腐敗問題による拘束」を示唆した。2代にわたる国防相が腐敗・汚職でほぼ同時に拘束され取り調べを受けるという、人民解放軍始まって以来の前代未聞の事件となっている。もちろん、それ以前に戦略兵力の要であるロケット・宇宙軍司令部関係の軍幹部が全て逮捕、処分されていることもあり、現状で軍上層部はマヒ状況だ。


【画像③ 巨乾生サイバー・宇宙戦支援後勤司令部司令官~習近平氏の左】



人民解放軍期待の新分野であるサイバー・宇宙戦展開部隊の兵站・技術開発・人員配置など後方支援活動を取り仕切る後勤司令部の司令官、巨乾生将軍もここしばらく動静が不明であったが、これも人民解放軍筋の情報で腐敗問題で拘束、取り調べ中であることが判明した。実は同司令部では昨年10月、副司令官が先立って拘束されており、ここから遡って汚職容疑を固められたものと思われる。


◆「党総書記・国家主席3期目」にして未だ軍掌握できない習近平氏の焦りが「反腐敗闘争」理由の粛清を招いた?



中国国防部報道官は定例記者会見において、個別の拘束の有無や姿を消した幹部の氏名などには一切触れず、「軍内の腐敗事件はすべて調べ、事実があればすべて処罰されることになる」と述べている。記者の質問に対する反応なのだが、事実上、軍内に腐敗事件が生じ、粛清が進められていることを認めたことになる。



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