第4回 近しい人のことも突き詰めると何も分からない


都合のいい嘘も時には必要かもしれない

このインタビュー、これまで何人くらいにしたんですか。

——ブログは3年間止まってしまっているけど、30人くらいやってます。前に、ある人に掲載の確認をお願いしたら「言葉になってしまうと、その言葉に規定されてしまうから載せないでほしい。」と言われて載せなかったこともある。結構、その言葉には考えさせられましたね。他にも色々あって、今回からは私の創作ですという形で載せることにしたんです。
今までは本当のことを書いて、会話を載せてたんですよ。自分自身のことも載ったりするじゃないですか。私は嘘をつくのが嫌なんですよ、うまいことできないし。相手のパーソナルなことを聞かせてもらっているから、自分に不都合なことも載せる。そうじゃないと相手に失礼なんじゃないかと思ってたんだけど、都合のいい嘘をつくことも時には必要なのかもしれないみたいなことを、この3年間で思った。

都合のいい嘘を入れるとして、その線引きが難しいですね。

——本当のことってきつかったり、人を傷つけたりするじゃないですか。人を傷つけない脚色。そういうものが必要なんじゃないかと、ここ数年で思ったり思わなかったりする。

北沢さん、人のそういう話を聞いてそうですね。誰かに話したいけど話せない、そのライン上にあるものを話してもらえるタイプ。

——特殊な話をしてくれる人には会うことが多い。秘密を持っている人は、秘密のままにしておくのが辛いらしいんですよ。誰かに話したい。

そうですね。僕は秘密あまりないですね。あっても身の回りの人には言わないかもしれない。自分のことだったら言わずにおける。言ったほうがいいこともあるかもしれないから、言わずにおくのは良くないのかもしれないけど。

自分の中から湧き上がるものに対して作るのなら、もう何も言えない

——見た感じは、Bさんは心身病んでなさそうだと思いました。

それはやっぱり見てわかる?

——分かる。

僕、割と健康です。ダンスやってたんです。家でもたまに踊ります。

——踊れる人うらやましいです。

誰でも踊れますよ。

——体が勝手に動いて、踊らずにはいられないみたいな感じですか。

ということではないけど、一番やってた時はそれくらいでしたね。○○ダンスやってました。

——○○ダンスといえば、アーティストの◯◯知ってますか。

知ってます。昔友達から「すごい奴がいるぞ」って教えてもらって見に行ったらとんでもなかった。うまい下手を超えたレベルで惹きつけられるものを持っていて、1度見たら目が離せなかった。

——彼はすごいですよ。表現する人として尊敬してます。みんな辞めちゃう中、ずっと続けてるし。彼はしぶといし、表現者としてのスタミナがすごい。

そうなんですよ、働きだすとみんな辞めちゃうんですよね。

——この間友達の作家と話したんですよ。「いやー、僕たちが知ってる作家で幸せそうな人いないね」みたいなことを。その友達は働きながら作家をやってたけど、体を壊して会社を辞めて、今は作家として暮らしている。医者に相談したら「鬱を治すにはアーティストを辞めるのが一番だ」と言われたらしい。でも、そう言われて辞められるものではないような気がする。

作家観にもよるけど、それで辞められるようではあまり強度のある作品にはならない気がする。

——昔、クリエーターのインタビューをいろいろ読んでて「学生の頃には何を作っていいか分からなかった」と言ってる人がいて意味が分からなかった。何作っていいか分かんなくて作るんじゃなくて、勝手にできちゃうものだと思ってたから、意味が分からなかった。

その「勝手にできちゃう」って言えるのは、割と幸福なことじゃないですか。

——見方を変えたらすごく幸福なのかもしれない。

作家の中でも、文章書いてる人で「面白い文章書くためには面白い生き方をしないと」みたいな感じになると、どんどん過激な方にいくじゃないですか。

ユーチューバーとかもみんなそう。人の目を集めるために、どんどん自分自身が過激な方に進んでいくじゃないですか。例えば○○の作品集あるじゃないですか。あれを見ると、ああいう作品の作り方じゃないと見えないものもある一方で、人の入っちゃいけないところに入り込んでいかないと作れないものを作っている。そうすると、自分も疲弊していくじゃないですか。その作品の作り方を良しとするのかみたいなことは結構考えますね。

——その辺は難しいですね。さっきの○○の作品集、私は無理だったんですが、彼はいろんなリスクがあることや、周りが見て引くと分かった上でもやらざるを得なかったんですかね。

やらざるを得なかったんであればまだいいと思いますけど、それをやればウケるみたいな感じだったらすごい嫌じゃないですか。

——すごい嫌です。自分がやらないと死んじゃうんだみたいな感じでやるなら気持ち分かります。

○○はメンタル強そうだし、そういうところに踏み込むことに対して自分が傷つかないとしたら、よく分からないけど、目の前にそういうものがあって作らずにいられないのだったら、もう自分の中から湧き上がるものじゃないですか。そういう作り方に対して批判することはできても、本人が命を削って作りだしているものに何かを言うことができるのかと考えてしまいますね。当事者でない限りは、もう何も言えないんじゃないかって。

——彼は多分やらざるを得ないタイプの人。生きてる中で、強烈な何かに出会っちゃう人ですね。

あれは極端だけど、ああいう作品の作り方が一番だと思う人、それに賛同する人もいるじゃないですか。他の作家があの人と同じ舞台で戦うとなった時に、そのやり方でやる人が増えちゃう。

——ああいう強いものを見たら影響される人いますもんね。

北沢さんがブログにあげていた作家の雨宮まみさんも、自分が傷つきつつ、それを晒しつつ、というような人でしたね。ライターの人も、自分の人生を投資して作品作ったり、自分の生活を切り売りしていくと、皆鬱になるなと。だから違うやり方で作る人が出たらいいなと。

——私がインタビューを公開するのを途中でやめたという、一番最初の話と少し繋がりますかね。インタビューで、本当のことを書いて自分が傷ついてもいいと思ってたけど、少なからず自分に負担がかかっていた。あと、周りの人も実は傷つけるかもしれないと分かったから途中でやめちゃったんですよ。

でも、何かしら発表すると誰か傷つくじゃないですか。

——影響を及ぼしてしまう。

たまたま傷つくか、たまたま励まされるか。

自分で選べないものは、褒めても相手が傷つく可能性がある

——最近体調が悪くて、特に乗り物酔いが酷くなって、電車に乗っても吐いてしまう。

中央線に乗ると気分悪くなります。

——わかります。何線だったらいいですか。

・・・メトロ。あと、山の手線は意外と害が少ない。

——病気や薬に詳しい友達に言われたんですよ。「北沢さんは根っからの鬱だから、治療するとしても対症療法していくしかない。」と。

根っからの鬱ってどんな感じなんですか。見た目ではあまり鬱っぽい感じは分からない。

——生まれた時からの鬱みたいなものです。人生を生きてる中で、職場、人間関係、家庭とか、何かきっかけがあってガクっと落ちちゃった人は、もしかしたら薬とか時間の経過とかで治るかもしれないですけど、私は根本的に他人には影響されないんですよ。全部自分の中にあるので。仕事辞めたとかこの人と関わるの辞めたとかで変わるものではない。
文章を書く仕事の人も、もともとそういう気質を持っている人が病んでいくのか、そういう仕事を選んでたまたま自分を追い込んでいくような生き方をしていたら病んでいったのか。

雨宮さんはコンプレックスが結構あったじゃないですか。

——すごい美人なのに。

でもその「美人なのに」ってすごい言われてたと思うんですよ。

——そうだ。またそれが苦しかったのかもしれない。他人が何と言おうが自分が苦しいものは苦しいんだし。

何かで見たんですけど、誰から見ても美人な人も、容姿を褒めると本人は傷つく可能性がすごくある。それに対して人を褒める時にどこを褒めれば安全なのかという話。いいなと思ったのは、「自分で選べないものは、褒めても相手が傷つく可能性がある」ということ。

——なるほど。

その人の服装を褒めるとかだったら絶対嫌な気はしないし。

——あ、それだったら、容姿を褒められて嬉しい人は、ダイエットとか努力をしていて、選べないものの上に選べるオプションをつけたのかもしれない。

かもしれないし、普通に自分がいいなと思っている部分を褒められて嬉しいのかもしれない。どちらにしろ、自分で選んだところを褒められるのは、ほとんどの人にとって嬉しい。

——イケメンですねとか言われたらどう思うんですか。

別に何も(笑)無視。・・無視はしないですけど(笑) 
昔、大学の先輩が、文化祭でボディビル選手権を見に行ったら衝撃を受けたと。あんなに生物的に強者で、筋肉がすごくて肌が黒くて。彼らを見た瞬間に、自分は生物的に負けてると思ったらしいんですよ。顔がどうとかそういう次元じゃないところで負けている。それを見てから、価値観が変わったみたいです。全然違う価値基準の中に入ったら、自分がちょっと気にしてるところなんて及ばないレベルになって、ただ筋肉の強さ、美しさに打ちのめされたと。

——日本人と一緒にいると、たまに細かい差が気にかかっちゃったりするんだけど、外国の人と話してると全く気にならなくなる。それと似てる気がする。似た体や同じ言語を使っていると細かいところが気になるけど、「私とあなたは違うんだ」という前提に立つとくよくよしない。

気にしないでもいいんだとなる。

——あの、叶姉妹とか室伏広治が好きなんです。

室伏いいですよね。武井壮めっちゃ好きなんですよね。あの世界の中で誰が見ても認めざるを得ない強さを持ってますよね。単純に見てて気持ちいい。そういう人たちを前にしたら、イケメンとか全然、ゴミみたいなもんじゃないですか。

——なんて自分は狭い考え方の中で生きてたんだろうと思いますね。

スポーツ選手とかすごいですよね。イチローとか。

——イチロー、すごいですよ!

「天才ですね」とか言われるけど「僕は準備をしているだけだ」と答えるところとか、毎朝同じカレー食べてるところとか。イチローは鬱にならないんですかね。

——イチローは鬱になる可能性ものすごくあると思う。でも全部分かった上で対処してると思うんですよ。

イチロー、鬱かもって思った時があったんですよ。鬱をすごくうまくコントロールしている人なのかもなって思ったことがある。想像してみただけですよ。

——他の人が見過ごしてるものまで見てると思うから、すごく自分のメンタルや肉体と向き合って生きてるんじゃないかと思うんですよ。スポーツ選手、ダンサーの人も精神病んじゃう人多いと聞いたんですよ。身体表現の限界を感じたり、頭の中と実際の体がついていかない時、肉体の衰えとかいろんなものがあって。

バレエとかもそうですよね。突き詰めていくと悩みは全部理想と現実のギャップから生まれるじゃないですか。ダンスとかで鳥を表現しようとして突き詰めると、自分に羽がないことに気づく。で、病む。

——どこかの国のお姫様とか妖精を想定して話が作られてるのに、自分は日本人で、骨格、足や腕の長さから違って理想と現実のギャップに苦しめられるというのを聞きましたね。

家族だろうが恋人だろうが何もわからない

どこで見たかわからないけど、日本人で鬱って人口の3分の1いるけど、実際は診断受けてない人もたくさんいるから隠れ鬱がいっぱいいるらしい。僕もADHDかもと思うんですよ。

——ADHDって、多動性・衝動性・不注意っていう特徴があるみたいなんですが、あります?

2分前に言われたことも忘れるし、100回くらい同じこと言われてもできない。でも、「ここから先がうつ病ですよ」と診断されるとしても、そこに触れるか触れないかの人っていっぱいいるじゃないですか。そうかもなと思って、忘れっぽいから、メモするようにしたりという感じ。

——グレーゾーンみたいなのわかります。言い方悪いけど、腕も足もない人だったら見た目で分かるんだけど、ほとんどの人は目に見えない。障害なのか特徴なのか性格なのかわからないし、そういうのだから苦しかったりするのかなと。

どこからが病気だよというのがわからない。実は3分の1が鬱なんですというのを聞いて、そうなんだろうなあと思いつつ、全部どうでもいいなあみたいな。

——人って一日の中で元気な時もあれば死にたい時もあるし。寝たきりになって動けなくなったらやばいんだけど。ADHDの人は自分に合った仕事をしたら才能発揮したりする。でも、ADHD傾向って皆に言えちゃう気もするからなあ。

友達で、病院に行ってて(ADHDの)診断も受けてる人の話を聞くと次元が違う。そういう人を見て「俺なんかがADHDなんて言っちゃいけないんだろうな。」と思うと、より病んでいく人もいるかもしれない。「お前それ病気を言い訳にしてるだけだろ」みたいな。

——自分でそう思っちゃうと余計苦しいですね。でも比べるのもなく、本当苦しいものは苦しいんだ!みたいな時ありませんか。

あります。またそれが人には分かんないですからね。

——理解求めちゃうから苦しいんですかね。人に「死ぬことでやっと周りの人が分かってくれるかもしれない」と話したら、「いや、あなたが死んでもみんな分からないと思います。みんな分からないことを保留しようとしますから。」と言われて、そうだなと思ったんですよね。
数年前に近所に住んでる人が自殺して、金銭関係で自殺したって皆には片付けられた。でも私が見る限り、その人は自殺する五年前くらいから昼間も家の周りを散歩してるのかぶらぶらしてて、働いたりしてる感じがなかった。その人、お金の横領で自殺したって言われるけど、本当は心病んでて苦しかったんじゃないかと思ったんですよ。みんな、言葉っていうもので固定して自分を納得させて、早く日常生活に戻りたいんだなと、その人が死んだ時に思ったんですよ。私が思ってることも合ってるか分からないし。
こんな話してたら気持ち暗くなりますかね。私は元気になりました。

大丈夫です。いい意味で他人事なので。
亡くなった親戚で、一人で暮らしていた人がいて、僕が小さい時は仲良く遊んでもらっていた。その人は子供ができなくて、僕のことを養子として欲しがっていたことを後になって知りました。でもそれって知ってても何が変わるのかって分からないじゃないですか。
自分の家族も親戚にも突き詰めると何もできない。親戚とか家族とか、恋人とかでも、分かるとか分かんないとかは関係ないですよね。何も分からないじゃないですか。

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10月22日(日)まで、名古屋 C7C galleryで個展[Bodyscapes]を開催しています。10月21日(土)19時から、アーキビストの井波吉太郎さんとアーティストトークを行います。参加無料。(予約は c7c@cmbmc.com まで。飛び込み参加も可) 
当日のトーク限定のインタビューを掲載したZINE[Bodyscapes](¥1,620)を販売します。

ギャラリーオープン時間:13:00-20:00
21日・22日在廊します。
詳細は http://c7c.jp/bodyscapes/ まで。

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