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実は同時通訳の方がカンタン??

最近はオンラインの仕事がほとんどですが、先日、久しぶりに対面の通訳案件がありました。

しかも逐次通訳、という・・・・・・

Zoom通訳の時代になってからは、ほとんどの案件が同時通訳です。もともとビジネス現場の会議の通訳では時間の短縮の意味もあり、同時通訳か、もしくはウィスパリングといわれる要通訳者のそばで会議の内容をささやく方式になることが多いです。

先日の案件はいつもお仕事いただいているクライアントの大学様からのご依頼ですが、今回はWeb雑誌へのインタビューでした。インタビューなので当然質問をインタビューする方が日本語で話して、それを私が英語にして、インタビューを受ける先生が英語で話して、また私が日本語に訳す、という流れになります。

いやはや、これがしんどかった!

普段は同時通訳なので、その場で瞬間的に判断して処理をしなければならない、という瞬発力は必要なのですが、処理をしてしまえば残りは忘れてよいのです。というか、忘れなければ次の処理ができない、とも言えます。

ところが逐次通訳でしかもインタビュー、英語で話される先生の言葉をメモを取りながら「覚えて」おき、その後日本語に訳すのですが、この「覚えて」おくということを普段やっていないので、いつもと比較して気分は通常の3倍は負荷がかかった感じがしました。

単純に負荷の大きさの違いではないですね。
同時通訳の時の負荷はテニスのダブルス、前衛で相手がボールを打ってきたら、瞬間的に前に出て「パパーン!」と打ち返すような反射運動です。あまり考える必要はないけど、普段から練習をしておかないと身体が反射的に動かない。そういう負荷です。

神経を研ぎ澄ませて反射的に打ち返そうとするので、陸上で100m走のスピードでそのままマラソンは走れないのと同じように長持ちはしません。完全に短期決戦な集中力なので、現場でも同時通訳の場合は15分、もしくはそれ以下で交代するのが普通です。

それに対して、逐次通訳ではまたテニスを例に取ると、ベースラインから長いラリーが続くような感じで、一瞬の判断も必要ではありますが、それよりも大局を見て次にどこへ打つか、戦略を頭の中で展開している、というイメージです。より俯瞰した視点がないと、話者の発言後に訳し始めることはできません。全体像を把握した上で細部も漏らさず再生する必要があるので、話のストーリーをきっちり頭にイメージとして描いておかないと、何のことだがよく分からないことになります。

話の内容を「覚えておく」ことを「リテンション」と言います。このリテンションを同時通訳ではあまり使わないので、逐次通訳を久しぶりにやると激しく消耗した感じがするのです。同時通訳になれた通訳者であれば、逐次の方が大変だ、と感じることもあります。

そう、これはどちらかというと・・・・・・有り体に言って、怠慢です!

久しぶりだったので、メモ取りもちょっともたついてしまいました。

いやぁ、お恥ずかしい😓

通訳のメモは内容を全部書くのではなく、あくまで自分があとで再生するときのきっかけになる程度のものです。私の場合、英日通訳だとメモに日本語が多いほど、出来がよいと言えます。聞きながらとっさに反対言語で訳が出てる、ということですから。あとは矢印を多用ですね〜。

今回はいつも行っている大学の話だったので背景知識は万全だったのに、1時間半の最後の頃には処理落ちを起こしてしまいました。メモはあるのに何を書いたのか瞬間で出てこないのです。なんとかリカバリーしましたが、やはり日頃のトレーニングにリテンションも足さないといけないな、と強く思いました。

通訳者がリテンションのトレーニングをするには?
昔の私なら英語ニュースなどを逐次で訳出したりしたかもしれませんが、今の私には英語のハノンがある!

仕事前の口慣らし、ならば高頻出の動詞周りが出てくる「初級」、リテンションのトレーニングなら文章も長くなって己の限界が試される「中級」「上級」ですね! 仮定法も日常で普通に出るので、口慣らしに上級の仮定法のところをやることもあります。

英語のハノンについては、以前記事を書いたのでよかったらご覧ください。全レベルの英語を使う人に効く素晴らしい英語学習書です。

こちら、収録音声はアメリカ英語ですが、もうすぐ初級のイギリス音声が提供される予定だそうです。私はイギリス音声の方がなじみがあるので、とても楽しみです。

「英語のハノン」、マジで話せるようになりたい人にオススメです。

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