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ダグマ 天国への起爆ボタン

観た。

自爆テロの順番待ちをしている二人を追ったドキュメンタリー。
一人はサウジアラビア人のアブ・カスワラ、この人はいかにも「いい人」さを全面から感じるようなナイスガイである。常に笑みを称えているけど、強がっているわけでも狂気を感じさせるわけでもなく。本当に自然な振る舞いで日常を送りつつ自爆テロの決行をまっている。

強烈な違和感と衝撃である。もう1人はアメリカ系イギリス人?の青年。こちらは「行き場を失いながらテロ組織にたどり着いた」感じがしてまだ想像しやすいというか。どこか自暴自棄な表情をしながら順番を待つ姿には薄い、薄い悲しさを感じる。その後妻の妊娠を知り、かなり苦しむのだけれどその姿も日本で日常を生きる自分には理解しやすい。小さい子供がいる、というのは生きる上で相当に強くシンプルな理由だろう。

アブ・カスワラは淡々と仲間と軽口を叩きつつ、自爆テロの準備を進める。
家族との電話後の表情にはやはり寂しさが見えるけれど、それでも精神は平穏を保っているように見える。とても理解が難しい。難しいのだけれど視点を少し変えて「自爆テロの対象が同じ人類でなく他星からきた話も通じないひたすらに残虐なエイリアンであったら」と考えると、相当しっくりとくる。昔から映画や小説でくりかえされてきた「仲間のために笑って死にゆく」姿である。

が、もちろんそんなことはなくテロの犠牲者になるのは無関係な同じく人生を生きる誰かであるのだけれど、テロ実行側からの世界というのは案外そんなものかなどとおぼろげに考えたり。

総評
おすすめ度:5 内容は重い。絵的に陰惨さはあまりなし。いわゆるバックグラウンドな描写はあまりなく、点というか日常を切り取った作品。
人間度:10 悲しいことに此方も彼方も、やはり人なのでした。
読了感:7 ネタバレなしだけどそんなに悪くない読了感。ただ何かがかわったわけではなし。