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今後の予定 4『じゃあお前は何が書きたいのか?(目的について)』2 目指すべき先行作品の一つとしての『堕天作戦』

・Why : どんな価値や目的のために活躍するのか(先行作品が垣間見せた「彼岸の星」)

(3)社会人時代:新たな小説や漫画との出会い

(3-2)『堕天作戦』

読んだ順という意味では、実は前後しますが、『堕天作戦』の話をしましょう。

後で説明する『胎界主』を布教しているときに、交換条件として示されたのがこれです。

『堕天作戦』、いろいろありますが、すごい漫画ですよ。ざっくり羅列すると、ミリタリーSFで、超能力と超生物と超構造と超知性が支配する、異種族の群像劇と流浪の不死者のロードムービーが交差する、そんな漫画です。

(なお、ここからメッチャクチャにネタを割ります。ヤバそうだと思った人は、上の説明で興味を惹かれたら、下の説明を読む前にこの記事を閉じて、何も言わずに1~2巻を読み始めてください。気が付くと全巻買っている自分に気づくはずです。全巻読み終えたらまたこの記事に戻ってきて下さい)

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主人公たち不死者、人類各地域勢力と短命超能力種族「魔人」各地域勢力の紛争、奇妙な生体兵器たち、天空に在る謎の超構造。

人類に特攻自爆奴隷としてこき使われて無気力になって、その後捕虜になって生体実験動物にされて、ずっと曖昧になっていた主人公不死者青年・アンダー。

だが、自分に生体実験をしていた当の本人である、ヒロイン魔人研究者・レコベルの言葉(後で説明しません。ネタバレになるので避けます)と、天空で見た謎の超構造の記憶を胸に、少しずつ明晰さを取り戻します。

アンダーは生体実験動物であることから脱し、今でいうインド洋沿岸、東南アジア~南アジアと思しき紛争地域を放浪します。

そこには各勢力があり、人類魔人連合勢力、極めつけの超生体兵器『竜』、そしてある小隊の群像劇が語られ、彼らがアンダーと出会い、別れ、新たな因果が発生したりする話が語られます。

1巻で「これはかなりしっかり骨太に作られていて、もう既に物語と設定の力だけで、ある程度ガッチガチに面白いことが保証されているのでは?」と興味を惹かれました。

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2巻で「あっ新キャラも最高! この作者は尖った部分と、それが刺さった穴を同時に併せ持つ、本質を取り出して一本の針のように研ぎ澄ませたようなキャラメイクをするのな!」と完全にドハマリしました。

やはり説明しませんが、作者のキャラメイクの徹底した姿勢に、わしは心底しびれたよ。こういう姿勢を目指さなければならない、とまで思ったくらいです。

そこからはもう完全に無我夢中で読みふけりました。

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3巻でも棘と刺し傷を併せ持つ非常に素晴らしいキャラが出てくるのですが、だいたいこの辺から作者の目論見というか、潜在的なテーマというか、そういうものを感じるようになります。

「人倫の美徳と制約の中にある人たちはともかくとして、人倫の美徳と制約の外にいる人たちについては、どうやったら肯定的な意味合いで『人を超えた』ことになるのか? 人倫のただの逸脱と、人倫の確かな超越を分かつものとは何か?」

そういうことなのだと私は受け取りました。つまり、『堕天作戦』は、人倫の「彼岸の星」の話だったのです。じゃあ、正に俺が読むべき物語に他ならないではないか。だったら是非やっていこうじゃないか。そんな気持ちで、さらにのめりこんでいきました。

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上記のメッセージは4巻で露骨に出てきて、

「いたことは確かだが、今はいないように見える、不死者や魔人や竜を創った、人工の自己進化する相互理解不能な超知能『超人機械』。彼らは不死者に何を望んでいるのか?」

「何やっても死なない不死者は、実は人間性に関する何らかの条件を満たすと死んでいるのだが、じゃあ死のトリガーとなる条件とは一体何か?」

「示唆されていた仮説は本当に正しいのか? その条件は、仮説としては、人間性の十全な習得、という目的があり、それが達成されたかどうかというニュアンスだったが、実はそうではなく、むしろ人間性の十全な習得で終わってしまったやつなど失敗だから破棄するという逆のネガティブな意味合いだったのではないか? つまり、そこから逆算すると、超人機械の不死者に対する要求とは…?」

という問いに、アンダーは直面することになります。

また、4巻は群像劇とロードムービーが交差する最高の展開で、強さの相性のジャンケンが目まぐるしく繰り広げられます(その中には「カラテを極めた奴が上を行く」も含まれており、本当に全く予想外のカードになったりしました)。

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2019/10/18現在、最新刊である5巻では、そんな強さの相性のジャンケンを丸ごと飲み込んで、戦場を支配できるほど戦略的にべらぼうに強い、しかも人倫をやめたばかりの逸脱者ニュービーが出てきます。彼女は戦場をメチャクチャにして、人倫の中にある愚かにしか見えない人たちを蹂躙したり、逆に愚かにも人倫ムーブを取る彼らに苛立ったりして、行きつくところまで行く、そんな暴走超特急列車めいた話が出てきます。

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今の連載が収録される、来るべき6巻では、作中推定戦略級最強個人戦力による、太陽と氷地獄のもたらす、旋風のような巨大感情を目撃することになるでしょう。そして、目的に向かって、物語が大きく動き出すことが示唆されています。

そこから先はまだ、連載を追う我々も見知らぬ、未知の領域です。

そのうち、「彼岸の星」が見えるよう、強く祈りたいですね。

何せ、アンダーの目的は、天空に在る謎の超構造に、何らかの形で今度こそはたどり着くことなのだから。きっといつかは、「彼岸の星」にも、たどり着いてくれることでしょう。

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個人的には、『ニンジャスレイヤー』が高度技術社会と管理社会体制と世界システムの、いわば「工学と社会科学の彼岸の星」を強く示していたように、『堕天作戦』は、安心や幸福や価値や規範など、広く人倫の、いわば「人文学の彼岸の星」を強く示していたように思いました。

また、人物描写について、作者は様々な人間性の「本質」を、正と負のベクトルにおいて両方とも正確に彫り出して、その形を磨き上げて先鋭化させているな、とも感じました。

そうした究極に先鋭化した本質キャラたちが、効果的に作中で活躍できるように、作者は丁寧にキャラと物語が噛み合うように調和を考えて配置している。

正直、小説の書き方の姿勢(特に究極に先鋭化した本質キャラメイクと、キャラと物語との調和)については、『堕天作戦』から体感的に学んだところが一番大きかったと言えるでしょう。

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小学館アプリ『マンガワン』で、実質無料で読めますが、読んでいると是非とも物理書籍で所有したくなってくる、そんな気持ちになってくる漫画です。

先日、WEBマンガ総選挙2019第3位を獲得し、長らく品薄だったのがとうとう書店に入るようになりました。

ということで、皆さん是非読みましょう。

(次回、「3 目指すべき先行作品の一つとしての『胎界主』」に続く。予定です。)

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