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アニメ「ピンポン」の感想

ピンポンのアニメ版はあらゆるメディアの一番最後に見たものなんですが、最後に見て本当に良かった。
原作の松本大洋先生の線を活かした線と、水彩の塗りが素晴らしい…。湯浅監督の特徴的な動きがマッチしていて、12話も見れたことが奇跡のような気さえしている。

ピンポンのアニメといえば、アニメオリジナルが挿入されているというところがかなり醍醐味になっている。主にドラゴンとチャイナ、そして彼らの所属している高校の卓球チームが掘り下げられていて、結果的に物語の質量がさらに増していた。具体的にいうと、ドラゴン周辺の掘り下げのために彼の家の話と彼女を置くことで、彼が抱えている強者としての孤独や、豪傑さの裏にある繊細さが浮き彫りになり、彼が試合前にトイレにこもることへの共感度が増したように感じた。それに対してチャイナの場合、本国から来て1度目のインターハイが終わるまでの彼の孤独を、本来彼が来日した理由である強化選手としての役割を全うしている様子を掘り下げることで彼の卓球に深みを与えていたようだった。ピンポンのアニメは全11話からなる1クールのアニメだが、そのうち終盤4話は2度目のインターハイで形作られている。上記2名の掘り下げはこの4話分への溜めとして、十分に機能していた。

それはアニメオリジナルが挿入されたドラゴンやチャイナだけではなくて、主人公であるペコやスマイルにも言える。彼らに関してはほぼ原作通りだが、最初のインターハイを終えると2度目のインターハイの例の最終決戦まで彼らは会話を交わさないので、アニメの場合オリジナルも挟むのもあってか、その時の二人の対立構造のようなものは原作以上に感じた。途中すれ違ってもどちらかが相手に気づいてないなど、決定的な描写はないにしても、各々が各々の修行をしているシーンは、同じところに目がいってるはずなのに交わることがなく、それが2度目のインターハイの決勝のための良い溜めになっていた。インターハイのドラゴン戦にて、スマイルがいつも奏でている鼻歌が、彼の作ったヒーロー=ペコの曲であることが視聴者(読者)に明らかになり、鼻歌から曲に代わる演出がある。それはずっと次回予告で流れている曲なのだ。そして彼らの決勝は最終話で行われる。まるでスマイルがずっとペコを待っているかのように、1〜10話の次回予告でペコのテーマソングがかかってるのだな…とかってな解釈をしたものの、これもきっと溜めの一つなんだろうな…。全てが「遅いよ」「これでもすっ飛ばしてやってきたんよ」に集約してる。

OPも素晴らしい。爆弾ジョニーの「唯一人」がそれの曲に当たるのだが、元からこの曲の存在は知っていて何回か聞いていたとしても、ピンポンのOPに来ることで俄然歌詞の深みが全然違って聞こえるので驚いたし感動する。OPとして聞くことで、メインのペコ・スマイル・ドラゴン・チャイナ・アクマ、そして彼らの卓球に対しての曲になって聞こえた。ピンポンで描かれている卓球は基本的に個人戦(アニメにおけるチャイナの卓球は最終的に違うかもしれないし、それぞれの練習風景を見ていると本当の意味では一人でやるものじゃないにしても)だから、サビの歌詞の一人でがむしゃらにもがき続ける様を歌われているところは本当に作中のメインメンバーに重なって熱くなる…。映像もペコとスマイルそれぞれのランニング風景で彼らの2回目のインターハイ前と重なるし…。映像の話をすると、OPのAメロの風景はピンポン球視点のメインメンバーなのが天才すぎる。試合を俯瞰する風景はその後も映るし本編でも楽しめるが、球からみたメンバーの顔は確かに試合中の顔を写すのに相応しい。

まだたくさん言いたいことがあった気がしたけど、言葉にできない無形の良さの塊になってしまっているということをこの記事書いてる時に察したので、以上にします。

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