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キチガイヒーローはデッドプールだけじゃない―『ムーンナイト/光・影』を読んで

先日、MCUで「ムーンナイト」のドラマが製作され、Disney+で配信する事が発表された。

「ムーンナイトって、だれ?」……もっともな疑問だ。ただ、最初に「アイアンマン」が映画化されたときを思い出してほしい。アメコミファン以外は「こいつ、だれ?」と思ったはず。そういう意味で、今後、ムーンナイトだって、アイアンマンクラスのポップアイコンにならないとも限らない。先物買いで、彼のことをチェックしてみるのは、どうだろう。

コミックではすでに「ムーンナイト/光」「ムーンナイト/影」の2冊が邦訳されて、小学館集英社プロダクションから発売されている。(2019年9月12日現在で、品切れ。Amazonマーケットプレイスで9000円前後になっているけど、ドラマがはじまると再版されると思うので、いまは手を出さないで!)

ムーンナイト。元傭兵の多重人格者。挙動不審で、頭の中ではいつもキャプテンアメリカとウルヴァリンとスパイダーマンが会話している。このデッドプールの偽物みたいなキャラクターを、シリアスに掘り下げたのが本作だ。

ムーンナイトは特別な力があるわけではないし、武器もチープ。お金持ちだけど、アイアンマンほどではない。せいぜい小金で元シールズのC級エージェントを雇い、ウェブシューターやウルヴァリンの爪の偽物を作らせるのが関の山だ。

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↑今後の方針を脳内キャップや脳内ウルバリンと相談するムーンナイトさん

本作での敵はカウント・ネフェリア。MARVELのヴィランの中では、大物といっていいだろう。ムーンナイトは狂気のような使命感で、格上ヴィランに立ち向かっていく。

ムーンナイトは、自分の憧れたヒーロー(頭の中にいる3人)をまねた「ヒーローごっこ」を本気でやっている。客観的に見れば頭がおかしい。意外なことに、彼はそれに自覚的である。

劇中で彼は「ヒーローって、みんないかれているんだ。そうでないと、こんなマスクを被って正義のために戦ってないだろ」という。ムーンナイトは狂っている自分を醒めた目で見て、自嘲しているのだ。その姿はいい歳をしてヒーローのコミックに夢中になっているぼくらの似姿でもある。本作がシリアスなトーンでありながら、どこかユーモラスでムーンナイトに親しみを覚えてしまうのは、そのせいなのかもしれない。

余談だが、ぼくは、マイナーキャラの単行本で描かれるアベンジャーズの面々のセレブ感が好きだ。例えば、「ジェシカ・ジョーンズ エアリアス」に出てくる「愛人宅で事をすませたあと、ハグもせずに冷ややかに部屋を出て行くキャプテン・アメリカ」とか。本作も、キャプテン・マーベルが、かつて一瞬だけ仲間だったエコーやムーンナイトを雑に扱うシーンが最高!

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