見出し画像

誰だって助けられたいし助けたいのだと思う

東京で一人で暮らしをしているその家は家賃共益費込みで3万3千円。


風呂なし。トイレあり。六畳一間タタミの部屋でひとり英語論文とにらめっこをしてみる。給湯器がないのでお湯は出ない。台所と呼べるかどうかもわからない広さのスペース。横にちょこんとガスコンロの設置場所があるのだけれど、ぼくは甲斐甲斐しく自分をいたわって料理を作ったりなんかするような人間ではない。つまりガスの契約もしていない。


34歳にして大学院に挑戦することになったド田舎のトリマー(犬の美容師)が「岡山県」と「東京都」を隔週で往復している。


毎月JRに支払うお金があればいい家に住めるし、いい車にだって乗れるだろう。年に一度は海外旅行にも行けるのかもしれない。


ぼくがそういう生活を選ばずにとても質素な生活をしている理由は「本当のこと」が知りたいから。以下はぼくが調べた「本当のこと」の中のひとつ。

イヌの皮膚についてのデータが十分とは言えない現状。色々なヒトが言う本当かどうかの詳細がわからない巧妙な嘘たち。日々耳に入ってくる言いたい放題な戯言にあきあきしてしまったんだ。


岡山で仕事をして、東京で研究をするこの生活にはまだ慣れそうにないのだけれど不安は少しずつなくなってきた。そこにはきっと誰にも負けない意思と決意があるのだと信じたい。


一年間でぼくができることはせいぜいひとつかふたつの「本当のこと」を見つけることくらい。世の中ではその一年の間に何百何千の「巧妙な嘘」がまき散らされている。それに対しては何も思わない。と言えばウソになるのだけれど、個々に批判してもなにもかわらないのだということを感じて無力感に襲われたりもした。


ぼくがこの仕事をしはじめたときから、これを食べたら病気にならないみたいなドッグフードが蔓延していたり、これを使えばどんな皮膚病でも治るとかいうシャンプーがあったり。それを見るたびにすごい効果が付与されたアイテムなんだねって、ゲームの世界を妄想した。


人間界では同業他社の批判をしてはならないというルールがあるとは思うのだけれど、ことペット業界に関してはまだその域に達していないというのがぼくの肌感覚だ。


例えば「一本の木を切り倒すのに何かが販売されている」として、人間界ならそれが斧だったりチェーンソーだったり重機だったりして「うちのほうが木を切り倒すのに良いですぜ」って競い合って高め合ってるのだけれど、ペット業界になるとひどい場合には「この折り畳み傘で木が切り倒せます!」っていう売り方してたりするんですよ。斬新ですよね。


トリマーに知識がないとそれの区別もつかなくて、みんな競うように折り畳み傘を買って木を切ろうとしたり、それをお客様に販売されていたりする。傘で腐った木をつついたら偶然倒れたみたいな事ももちろんあって。


自信満々に「この折り畳み傘で木が倒れました!すごい!この折り畳み傘が買えるのはこの地域ではうちだけ!」とかブログに書いちゃったりしてる。本人に悪気がないぶんどうしようもないなぁなんて思いながら見ています。




この問題は専門学校でシャンプーやドッグフードの成分知識についての授業がほぼないことが主因だとは思います。ぼくも多分に漏れず10年前くらいは悪い意味でピュアな時期があって、何の知識もなく普通に仕事をしていたのだけれど今思えば「無知から出るウソ」をつくことがたくさんありました。


商品の営業を受けるたびに「ウソ」を聞くことにも慣れてしまって、それが本当かどうかなんて深く考えないように・・・殺伐とした夜の海風にあたりながら「ウソ」を「本当」だと自分に言い聞かせてみたりしていた。


知識がつくたびに「仕事だからしょうがない」そうやって自分を守るために「本当のこと」がまるで見えていないようにふるまった。


知識がついてくるたびにそれをどうにかしたくて、もがいてあがいて苦しくなった末にどうやらぼくは人一倍「ウソ」が嫌いになってしまったらしい。というのも表向きの言葉なのかもしれないけれど。


そんなぼくは「なるべく多くのイヌを正確な情報で助けたい」という安易でありがちな正義感にかられて今を生きている。誰かを助ける・・・だなんてとても傲慢だと思うし、突き詰めると「ウソや大げさな文言だらけの世界が苦しくて、自分が助けられたいだけ」なのかもしれない。



そんなときに出会ったのが「soar」さんだった。


はじめてsoarさんを知るきっかけとなった記事はたしか2016年の記事。イラストレーター「ますぶちみなこ」さんの記事だった。


このときはじめて「双極性障害Ⅱ型」というものを知ったのだけれど、なんとなく自分も当てはまるなぁ・・・なんて思いながら、でもどこか自分には関係のない他人のような感覚で、この記事より奥に踏み込むことはしなかった。心の中の自分の声よりも現実の自分の状況があまりにも忙しすぎて考える余裕すらなかったのかもしれない。


心の奥では(もしかしたら自分も・・・)なんてことを思いながら、いやでもなんとかぎりぎり生きられてるし病院に行くまでもないだろう。なんて思った気がする。今もそう思っているかもしれない。


2016年に出会っていたはずのsoarさん。当時はあまり見るとだめになっちゃう気がして、とくに目にすることもなく時が過ぎて2019年になった。



このときぼくはnoteを見るのが日課になっていた。そしてどんなきっかけでこのnoteを開いたのかは忘れてしまったのだけれど、お絵描きライター「しーちゃん」という子の記事になぜか惹かれた。

とても心にひっかかる文章を書くなぁ・・・。というのが率直な感想。なんて表現すればいいのか、いまだにわからないのだけれど「感覚とロジックと言語」の間を気持ちよく移動させてくれる文章がとてもすきだ。「しーちゃん」がとても自由に、たまに不自由そうに言葉を空に投げたり砂場に埋めたり。そっと大切に飾ったり、見せようと思ったけどまだしまっておこうかな・・・なんて心象の言語化を積み重ねたり崩したりしているのがすきなのかも。んー。まだわからないや。



興味本位で「しーちゃん」の過去記事を見るとsoarさんのことについて書いてある記事があって。そこからsoarさんがいろいろな角度の「生きづらさや困難」をもった人たちを応援するような場所なんだなってなんとなく認識した。



気がづけば暇さえあればsoarさんの記事を見るようになっていた。この鈴木悠平さんの記事は何度も読んだ気がする。

自分の声を殺してしまうということ、その積み重ねによって少しずつ壊れていくということは、いつ、どこにいて働いていても、誰にでも起こりうる。その意味で、僕と、これを読んでいるあなたと、べてるの人たちは地続きで繋がっている。


とくにつらいことがあった日に読んだ。



soarさんの記事はなんていうか重たい話題のはずなのだけれど、読後感がきもちわるくなくて、押しつけがましくもなくて。少しだけ背中を押してくれる気がした。




そんなときに日本最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE」でsoarさんのプロジェクトがあることを知った。(現在プロジェクトは終了しています)

この中ではとてもたくさんの「soarとは」が詰まっていました。その中でもとくに共感度が高かった部分。


soarは、届けるべき情報を届けるべき人に読んでいただくために、非営利型で運営しています。
①本当に必要な情報だけを届けるために、企業等の広告記事を行わない
②美しいデザインで読んでいただくため、バナー広告の掲載をしない
③困難がある人が無料で、すぐに情報を読めるよう、限られた有料会員の方だけが閲覧できる仕組みは導入しない


何かを運営していくにあたって「お金」は必ず必要となってきます。だいたいの場合は「スポンサー」からお金をもらうだとか「記事に見せかけた広告」で収益を得たりします。(それが悪い事だとは思っていません)スポンサーは一時的な集客だったり金銭面ではメリットがあるけれど第三者から金銭を頂くことで不自由になるということがよくある事をぼくは知っています。



ぼくの場合はペット業界でセミナーを開催したり登壇する場面もあるのですが受講費だけでは運営ができないこともあって、メーカー様から「スポンサー料」としてお金を頂いて商品説明の時間をとるなどしていたこともあり、あたりまえだけれどスポンサーメーカー様にとっての不都合な話しがNGだったり、実際のモノよりもとても良いモノのように宣伝していたり・・・すごくやりにくかったのを覚えています。


誰かのお金をあてにしていては自由な表現ができなかったり適切な情報が届けられないということを知りました。そして自分ひとりではお金の問題をクリアにすることも難しいということを知りました。情報を過不足なく届けるためにはどこにも頼らずに自力でやるしかないんだとも思うようになりました。


話しをもどしてsoarさんではクラウドファンディングのほかに月に1000円からなれる「サポーター」制度があって、これもすごくいいなぁと思います。



ぼく自身の体験もあってsoarさんの「大口のスポンサーに頼らずに少額でもたくさんの人に支えられるメディア」になると言論の自由も担保されながらどこの企業の思想にも偏ることなく素敵な運営ができるんだと気づかせてもらえました。これは誰かを攻撃するための方法ではなくて「正しいことをやわらかく」伝わってほしい場所に確実に届けるための最善手なんだと気づかせて頂きました。


そんなsoarさんがクラウドファンディングに挑戦中だったのだ・・・。








「推しは推せるときに推せ」





ぼくの心の中のオタクが「今しかない!!!」と叫んだ。




気づいたら支援していました。ぼくの物語を綴っていただけるコース!!!


とはいえ純粋な支援だったのか?と言われたらそうでもなくて。


めちゃくちゃに「下心のある支援」です。


あの何度も読み返した記事・・・鈴木悠平さんに会える!!!


完全にただのファンです。アイドルの握手券のためにCDを爆買いする方々のことはもうぼくはバカにできないのです。


いやまて、握手どころじゃない。二時間もしゃべれるんだ。すごい。やばい。尊い。(語彙力の低下)



超絶なファン心理から応募したのだけれど、このプランで支援したのにはもう一つ理由があった。



人生で初めてのインタビューをsoarさん・・・いや、どうしても鈴木悠平さんにお願いしたかったのだ。(真面目に)



はたから見るとぼくはこの数年「ワーカーホリック」みたいな状態で仕事をしていて、よく「なんでそこまで仕事がんばれるの?」とか「トリマーが研究なんてなんでやってるの」とか言われることがあるのだけれど「わかんないですね~」なんて誤魔化したりしていた。


ぼくが今やっていること、これからやろうとしていることに熱量がある理由みたいなもの。それはあまりキレイな理由でもないかもしれない。だけど確実にそれがきっかけだったことは自分ではわかっている。


ぼくが自分から誰にも言えずに抱えている「どうしてそこまで頑張るのか」と「ウソをつくことにとても嫌悪感を示すのか」ということを誰かに聞いてほしかったのだと思う。文章を書いて伝える能力だとか、しゃべる言葉のチカラだとかが自分になくて誰かに頼りたかっただけなのかもしれない。



それでも誰でもよかったわけじゃなくて。soarさんだから。鈴木さんだから頼みたかった。一度もお会いしたことがなかったのだけれど、完全に信頼できると思ったんだ。









ぼくは「皮膚の研究を通してイヌやイヌに関わる全てのヒトの力になりたい」という無謀な旗をかかげて今年の2月に株式会社を設立しました。


この会社でのルールは「誰にも嘘をつかない」


社内にも、販売先にも。仕事に関わる全ての人に。


その出発点をぼくの言葉で、鈴木さんのチカラをお借りしてみんなにお届けできたらいいなと思っています。


安っぽいお涙ちょうだい劇場なんかにしたくはなくて、とくに自慢することでも誇れることでもなくて。誰かを敵にしたいわけでもなくて。少しだけみんなには知っておいてほしいことをお届けしていきます。



最後に、この場で恐縮なのですが、今回のクラウドファンディングで支援総額1000万を越える快挙!soarの皆様、本当におめでとうございます。


リターンの日程調整をメールでこまやかにして頂けた代表の工藤さん、ただのガチファンのインタビューをしていただいた鈴木さん。本当にありがとうございます。これできっとまだぼくは走っていけると思います。


インタビュー後にも仕事の面で今後の道も示していただき誠にありがとうございました。ひきつづきよろしくお願い致します。




突然ですが、soarさんを見習ってぼくのマガジンはこれからほぼ無料で読めるようにしていきたいと思います。(いいと思ったことはすぐ取り入れるタイプ)


それでも応援してくれる人は購読を続けて頂けると嬉しいです。とはいえ応援して頂ける方にはそれなりのことを・・・とも思っているのであまり広く届けたくない記事やオフラインでの交流をするときに有料欄に書いたりしていこうかなと思います。ちょっとでも応援してやろうかな~って人は新規購読をしてくれるととても嬉しいです。要するにファンクラブです。


月額1000円のご支援。ほとんどはきっとイヌの皮膚の研究費でふきとばすとは思います。サポートのプラスがあればそれでおいしいごはんを食べます!笑


しょうがねぇ応援してやるか!!!っていう方は「いぬのしゃんぷーや」を今後共よろしくお願い致します。



って締めくくるはずだったんだけどこれ書いてる間に「推し」こと今回インタビューして頂いた鈴木さんがまためちゃくちゃ画期的なことをはじめられたので宣伝させてください。

社会的マイノリティ当事者の方々が参加しやすい環境づくりと同時に、講師となるゲストの方々にとっても新たな問いや示唆が得られ、分野横断的なつながりが生まれるコミュニティをつくることも大切です。

応援よろしくお願いします!!!!(どの立場から言ってるのか)


ここから先は

880字

¥ 800

取材費や研究費に使わせて頂きます。おなかがすいたらぼくの晩ごはんがアップグレードします。