アセット_5

「勉強の方法や参考書籍」についてお答えしました。

初めまして。いぬのしゃんぷーやさんこと、トリマーの野間です。記念すべき第一回目の質問に対してお答えしました。宜しくお願いいたします。


さて、今回いただいたご質問はこちらです。




ということで、今回はぼくの“勉強方法”についてお答えしていきたいと思います。



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まず初めに、皆さんは「勉強」と言われてどのようなものを思い浮かべるでしょうか。



○本をたくさん読むこと?
○机に向かって参考書を開くこと?
○たくさん単語を覚えること?



こんな風に、「勉強」と言われて学生時代のことを思い出す人は少なくないはずです。



しかし、ぼくらはトリマーです。日々働きながら、限られた時間で知識を身につけていかなくてはいけません。その中で、ぼくがトリマーの勉強に必要だと思っていることが、次の3つです。



1. 「聞く」こと
2. 「読む」こと
3. 「体験する」こと





1. 「聞く」ことから学ぶ

この話をするにあたって、はじめに昔話を2つさせてください。


一つ目は約11年前、ぼくが学校を出てトリマーになりたての頃のことです。右も左もわからない若造のぼくは、根拠のない自信にだけは満ち溢れていました。


誰よりもうまいトリマーになってやる、誰よりもお客様から支持されるトリマーになってみせる、誰よりも、と。



しかし、当時のぼくは知識も経験も浅く、いつしか一日一日をミスなく終えることで精一杯になっていました。そんな状態でプロのトリマーとしてお客様の前に立っていました。



お店にとっても、お客様にとっては新人もベテランも、みんなプロのトリマーであることに変わりはなかったからです。




こんな状況で、新人のぼくは「何故なのか分からないけど、先輩に言われたから良いのだろう」とお客様に商品を勧め、「やったことないけどできると言わないと任せてもらえない」とお客様が指定したカットをなんとなくできたフリで乗り切っていました。




ぼくは就職先を決めるとき、どうしてもこの人の下で仕事がしたい、と思い面接を受けましたが、こんなハリボテで中身のない毎日を送っていました。


間近でどんなに素晴らしいカットが見られても自分に吸収することができない、商品が良いと言われても何故いいかまでは分からない、そして、できないのは全て自分のせいでした。



先にも言った通り、ぼくには根拠のない自信だけはあったので、プロと自分の差に愕然としましたし、自分が何も分からずに業務をしていることが恥ずかしくてたまりませんでした。


そこで、どうにかしようと取った行動が「一番身近な人に嫌がられても聞く」ということでした。




「嫌がられても聞く、鬱陶しいくらいに」




これ、当たり前のように聞こえますがとても難しいです。先輩や上司がぼくの質問に答えてもお給料は上がりませんし、時間だって奪うことになる。


話しかけ辛い状況であるなら尚更です。しかし、これがぼくの「プロのトリマーの勉強」の第一歩でした。



二つ目、これはぼくが自分のお店を始めて5年目頃、とあるシャンプーメーカーが店舗へ営業に来ました。



その営業は「うちのシャンプーはどんな子に使っても安心安全です。汚れ落ちも抜群で仕上がりも最高です。臭いも取れるし、有名なトリマーさんにもご愛用いただいているんですよ!」




・・・・・・。




今思えば馬鹿らしいですが、当時なんの判断基準ももたないぼくはそれを鵜呑みにして購入してしまいました。その決め手もお粗末なもので、




「半径〇〇〇メートルまでの店舗には同じ商材は売りません!地域で独占してください!」




というメーカーの売り文句を受けてのことでした。




これ、お店としてはそのシャンプーが本当に良いもので、周辺のライバル店には置かないという約束がされたなら飛びついてしまいますよね。




だって、「うちはまわりの店と違って特別なシャンプーを使っています。ここでしか売っていないんですよ。」ってお客様に言えちゃうんだから。




恥ずかしいことですが、この時のぼくの頭にあったのは、犬のことではなく店の利益のことでした。




そんな経緯で購入したシャンプーなのですが実際に使用してみると



○よく来店する犬の毛質がパサパサになってきた。
○使用した後に犬の痒みが増す。
○傷のある手に触れるとすごく痛い。
○嫌な臭いは消える。



安心安全を謳ったメーカーと、お店で起きていることに食い違いがあることに気付き始めました。




そんな中、ある一頭の皮膚がみるみる悪くなってきました。

(当時の写真:掲載許可済)




背中はフケだらけ、四肢の皮膚は薄くなり赤く、粉を吹き、耳のフチは脱毛し痒みがある状態になってしまいました。


この子のトリミングをさせていただいてから、始めてのトラブルでした。フードも生活環境も一切変わっていない、変えたのはシャンプーだけでした。



すぐに問い合わせるも、メーカーからは



「今までそんな話しは聞いたことがない。うちのシャンプーのせいではない。」



と返答されてしまい、メーカーの言うことを鵜呑みにしていたぼくは目の前が真っ暗になりました。どうしてこうなったのか、何が原因なのか分からないままでは、お客様に説明もできません。




そんなぼくが頼ったのが他のトリマーさんたちでした。




聞いてみると、他の店舗でも同じような問題が起きていること、関東ではすでにメーカーが問題視されていることが分かりました。(良いとする意見もいただきましたが、大半はマイナスイメージのものでした。)



「他の店でも起きているんだ・・・。」そう思った瞬間に肩の荷が下りた気がしました。




この時、自分一人で何も分からないままシャンプーに疑問も持たず使い続けていたら、もしかしたらぼくは今トリマーではなくなっていたかもしれません。



後に詳しく記載しますが、この時お世話になったある方のお陰で、この子は別のシャンプーを変えただけですぐに元の綺麗な状態に戻ることができました。



この事件でぼくは、「無知は罪だ」ということを、大切なお客様を危険に晒すことで、思い知ることとなったのです。



*********




ここまで読んでいただいた通り、ぼくはこれまでたくさん失敗をしてきました。これは苦労自慢をしたいわけではなく、ましてや同じように苦労しろと言いたいわけでもなく、




分からないことは分かるようになるまで聞く」こと、




そして「知っていそうな人に聞く」ことが「トリマーの勉強」の第一歩だと伝えたかったからです。




ですから質問者様は、その初めの第一歩を踏み出したと言ってもいいでしょう。ここから二歩三歩と歩みを進めていく上で、「知っていそうな人に聞く」ことがさらに重要になっていきます。






知っていそうな人


自分で全ての知識を得ようとするには膨大な時間が必要です。働いているなら尚更、効率的に情報を得て自分のものにしなくてはいけません。



ぼくは、知りたいことを知っている(知っていそうな)人に聞くことが勉強の第一歩だと述べましたが、この「知っていそうな人」というのは、



「自分と親しい人」や「業界で有名な人」というわけではありません。




先程のシャンプー事件の話に戻りますが、当時のぼくは誰に聞いていいかも分からず、「SNS」を使って大胆にもシャンプーを名指しして助けを求めました。



当時は藁にもすがる思いでしたが、このような多くの目がある場所で闇雲に意見を求めることは、リスクが高いのであまりお勧めできません。現にぼくも、その時多くの方からお叱りやご心配のメッセージをいただきました。



結果としてぼくは師匠とも呼べる方に出会うことができましたが、必ずしも良い方向に転がるわけではないということを、一つ心に留めて置いてください。



さて、SNSにシャンプーのことを質問したぼくのところには、ありがたいことに多くの方からメッセージや電話がきていました。



そのメッセージの大半は、「うちはこうだった!」「これを使ったら良くなる!」「良く知らないけどそんなに悪いシャンプーじゃないのでは?」「やり方が悪いんだよ!」など、根拠のない感情的なものや、ぼくの状況には当てはまらないかもしれない不確かなものばかりでした。



自分と同じ状況の人がいるということでぼくの気持ちは軽くなりましたが、それでは何の解決にもなりません。



そんな時唯一、「そのシャンプーの成分分かって使ってる?」と声をかけてくださる方がいました。



それがぼくの師匠、(株)ファインズコーポレーションの藤木翼氏との出会いでした。彼は元トリマーで、人間用のシャンプーの企画開発を経て、大分の別府市にあるアニマー湯というペットサロンにて、商品販売のマネージメントをされている方です。



彼のこの一言が、ぼくをスキンケアの道へと導いてくれたのです。



何かを問うためにはその道のスペシャリストに聞くのが一番の近道です。ですが、そのスペシャリストは必ずしもトリミング業界の目上の人というわけではないのです。もっと言えば、別の業界の人かもしれません。





「聞く」場所を得るためにセミナーを受ける



最近ぼくも講師としてトリマーさんの前に立つことが増えたので、ぼくがこの話をすると「結局自分の利益の話か」と思われるかもしれません。




ですが、セミナーは講師のノウハウを数時間で取得できるものであるのは元より、「聞く」学びにおいても大きな役割があるのです。




お話しした通り、ぼくはSNSを使用して質問ができるスペシャリストに出会うことができましたが、もしかしたら間違った情報を与えられていたかもしれません。ですから、直接会ってその人の話を聞くセミナーは、文字だけの情報よりよほど多くのことを知ることができます。




ここで重要なのが、ぼくも含めその講師の言っていることを全て鵜呑みにしないことです。




「この人が良いって言っていたから良い」ではなく、「この人が良いとする根拠はなんだろう?」と疑問を持って受講してみてください。




そして、知りたいことができたときに質問できる相手を沢山ストックしておいてください。もちろん、ストックと言うのは「親しくなる」ということではなく、「知っておく」ということです。




とは言っても、どんなセミナーに参加して良いかはじめから分かる人はいません。参加するうちにある程度の判断はできるようになるかもしれませんが、それにはより多くのセミナーや講師の情報を得ておく必要があります。




そんな時こそ、FacebookやTwitterなどのSNSを利用してみてください。ぼくに尋ねていただければ、ぼくの注目しているセミナーや講師の先生をご紹介することもできます。そんな風に、ツールの良いところを使い分けて、より多くの判断材料を得ることが大切です。




忘れないで欲しいのは、もしもの時、トリマーに知識がないことで被害を被るのは、ぼくたちが一番大切にするべき「犬」です。是非多くのセミナーを受けて、多くの人と出会って、「聞く」ことができる窓口を沢山持ってください。








2. 「読む」ことから学ぶ


これはご質問にあった通り、本や文献を「読む」ことによる勉強です。勉強と言われて一番想像しやすいものですが、これもただ本を読んだだけでは勉強したことになりません。読む本の種類、そして読み方にもポイントがあります。




なお、今回はぼくへの質問ですので、参考書籍や論文などは主にスキンケアに関してのものをご紹介していきたいと思います。




さて、一般的に本を手に入れる場所といえば本屋さんでしょうか。ぼくも漫画が大好きなのでよく本屋さんへ通っています。が、はっきり申し上げますと、一般の書店に置かれている本で参考になるものは殆どありません。




なぜなら、一般的な書店に並んでいる本は執筆者の「主観的な視点」により語られるものが多く、「客観的な視点」を欠いているからです。読み物としては面白いですが、それらを参考に何かを判断することはできません。




この「客観的な視点」を持つために、読んで欲しい一冊が



「原因と結果の経済学」です。(←クリックで飛べます)



「スキンケアの本を紹介すると言っておきながら、はじめに紹介する書籍が経済学の本って…?」




あなたは今こう思ったはずです。




しかしこの「客観的な視点」は、今後書籍や論文を読むときだけでなく、セミナーを受ける時にも重要になってきます。




例えば、「朝食をとっている子は学習意欲が高い」というデータがあったとします。この場合、「朝食をとれば頭がよくなる」とは必ずしも言えませんよね。



では、「脳のエネルギー源としてブドウ糖が必要であり、朝食を積極的に摂ることで脳が働く」という理由をつけるとどうでしょうか。



もちろんこれも、「朝食をとれば成績が良くなる」という相関関係はあるとは思いますが、「朝食をとるから必ず成績が良くなる」とは言えないですよね。



このように、相対関係と因果関係は分けて考える必要があるのです。



つまり「客観的な視点」を持つということは、この相対関係と因果関係を分けて考えること、と言えます。そして、この相関と因果の関係について初心者でも分かりやすく学べるのが上記の書籍なのです。



ここまで読み進めたあなたには、この入門書の重要性がきっと分かると思います。是非、一見自分に関係ないと思える本であっても、読んでみてくださいね。



では改めて、スキンケアに関するぼくのお勧めの書籍をご紹介していきたいと思います。



スキンケアの勉強を0から始めるのにお勧めなのが以下の2冊です。

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