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【読書感想】Yuming Tribute Stories

■ 初めに

なるべく物語の核心に迫るような感想は避けたいと思っていますが、ネタバレを踏みたくない人は、ここで記事を閉じていただければと思います。

YUMING TRIBUTE STORIES

松任谷由実デビュー50周年記念オリジナル小説集。
ユーミンの事が好きな6人の女性作家が、それぞれタイトルを選び書き下ろした短編集となっている。収録は楽曲の発売順で「小池真理子 / あの日にかえりたい」「桐野夏生 / DESTINY」「江國香織 / 夕涼み」「綿矢りさ / 青春のリグレット」「柚木麻子 / 冬の終り」「川上弘美 / 春よ、来い」

どちらかと言うと、私より母の方がユーミンが好きで「その話を聞いていたら、ユーミンのあの曲を思い出した。」など時折、会話に出てくることがある。青春時代をユーミンと共に過ごして来た母に比べれば薄い物だが、私もユーミンが好きだ。物語を感じる楽曲は聴いていて楽しく、多種多様な少女漫画を読んでいるような感覚にもなる。この本に収録されている曲は「春よ、来い」しか知らなかったが、名だたる作家達とユーミンの掛け合わせに、胸が躍り迷わず手に取った。

事前に曲を聴く→小説を読むという形で読み進めていた。
短編集のため、それぞれの話に対して簡単に感想を書いていこうと思う。

小池真理子 / あの日に帰りたい

前述した通り事前に曲を聴いていたが、それでも根底にユーミンに対して明るいイメージを持っていた私は、この話の衝撃さに驚いた。
激動の時代。自分にとっては歴史の教科書で知るような他人事に感じる時代だ。感覚的に得たものが多く抽象的な感想になってしまうのだが、とにかく衝撃的な内容で、人が一生を過ごす間に時代はこんなにも変わるのかと、そんな時代ならではの出来事なのだろうか?それでも心は進みきれずに「あの日に帰りたい」なのかと思った。楽曲の人物のバッググラウンドを描いているような話だった。

桐野夏生 / DESTINY

歌詞に忠実な登場人物、ストーリーというよりかは「DESTINY」を基に、新しく作られたコミカルな物語になっている。異なっている物語になっているのに、この物語を読んでいると不思議と「DESTINY」の曲調を感じた。

江國香織 / 夕涼み

曲のように穏やかな雰囲気なのに、どこかゾクっとする物語だった。夕涼みのシーンが特に印象的で、行ったことのない見たことのない場所のことなのに、ハッキリと頭の中にフィルムのように浮かんだ。

綿矢りさ / 青春のリグレット

私の中で1番のお気に入りは、この「青春のリグレット」だ。曲中に出てくる場面も登場するなど、恐らく6つの中で1番楽曲に忠実に描かれている。私はこの物語の主人公に共感は出来なかったが惹かれた物語だった。綿矢さんの解釈が歌詞の間にスッと入り込み、小説として埋められていくような感覚を味わった。

柚木麻子 / 冬の終わり

「冬の終わり」がキッカケに生まれる友情の物語。自分の想像を超えてどんどん大ごとになって戸惑う気持ちと、色々な人を巻き込んで生まれる交流に、主人公の気持ちも分かるのだが、優しい気持ちになった。

川上弘美 / 春よ、来い

不思議さと現実の辛さが合わさった物語。この本を買ったのは冬だったが、この物語を春に読みたいと思い、冬の間にひたすら「春よ、来い」を聴いて春が来るのを待っていた。
私は川上さんの作品が好きで、数は多くないが他の作家さんに比べで何冊も読んでいたので出てきた感想だが、川上さんらしさと、ユーミンの「春よ、来い」2人の個性が合わさった物語だなと思った。特に最後のシーンが好きで、私も同じように願った。
春が来るのを待って読んだが、曲のタイトルから分かるように「春よ、来い」は春になっていなく春を待ち侘びるという物だった。買った冬に読むのが正解だった。読むタイミングを間違えたのだけは心残りだ。

文章を書く以外に「読書感想」として”何か”をする。と決めていたので、今回は真っ赤なカニ缶を描きました。誰がなんと言おうと、これはカニ缶です。

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