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有馬記念 23 ふりかえり

ラップグラフ

タイトルホルダーの中盤の緩みが少ないワンペースな逃げ。地力が問われる真っ向勝負となった。

レース展開

序盤

 スタートは全馬揃って出ましたが、その中でも大外スターズオンアースの飛び出しが目立ちました。しかも、馬の気持ちを優先させるルメールジョッキーにしては珍しく、積極的に促して前へ取り付こうとします。

 逃げるかどうか注目されていたタイトルホルダーは、いつも五分以上のスタートを決める彼にしてはあまりいいスタートではなく、そのかわり横山和生ジョッキーが全力で押してハナを主張します。

 結果、内枠を利してタイトルホルダーが先頭を奪い、2番手にはスターズオンアースがつけました。期待通りにタイトルホルダーが逃げたことと、そして大外のスターズオンアースが予想外に番手に収まった隊列に、場内がどよめきました。

 その後ろ、ハーパーとプラダリアが3番手につけ、続いてシャフリヤール、アイアンバローズ、ウインマリリンが並んで先行集団を形成。それをタスティエーラが追いかけます。

 中団にはソールオリエンス、ディープボンド、スルーセブンシーズが並び、1馬身後ろからライラックが続きます。

 後方集団は、ドウデュースがゆったりと出て後方2番手。ホウオウエミーズとヒートオンビートがそれに並走。最後方にジャスティンパレスと、人気を集める2頭は後ろに構えました。

中盤

 スターズオンアースは、スタート直後に負荷をかけたことを考慮してか、2コーナーでペースを落として体力を温存。馬群もそれに合わせてペースダウンします。

 しかしそこで緩めないのがタイトルホルダー横山和生。淡々と同じリズムで走り続けます。向こう正面に入ったところで5馬身ほどの差をつけました。周囲のいたるところから興奮の声が上がります。いいぞ!そのまま!!

 2番手変わらずスターズオンアース。3番手にはプラダリア。内からシャフリヤールが続きます。ハーパーは少し下げてその後ろ。外からはスルーセブンシーズが押し上げ、アイアンバローズとウインマリリンより前に出ました。

 中団ではタスティエーラがマイペースに追走。その外をヒートオンビートが交わし、ソールオリエンスが内で脚を溜めます。そしてディープボンドの外を、手応えたっぷりにドウデュースが進出。武豊が後方集団を飛び出してまくっていくこの感じ。かつて何度も経験したような。あっこれヤバいやつだ。

 3コーナーに入り、遅れてジャスティンパレスが猛然と追い出し、ホウオウエミーズとライラックは後方に取り残されました。

終盤

 4コーナーを先頭で駆け抜けるタイトルホルダー。その差はまだ4馬身。誰もがもう一度見たかったタイトルホルダーの勇姿に、お願い!!がんばれ!!!行ける!!!!と祈りの声が悲鳴になって響きます。

 最内では2番手のスターズオンアースが、馬群を従えてギリギリまで追い出しを待ちます。

 しかし、もの凄い手応えの怪物が一頭。夕日を跳ね返してドウデュースが、大外をまくってタイトルホルダーとスターズオンアースを射程圏に収めます。思わず声が出ました。ドウデュース勝ったわこれ。

 中山の直線は短く、200mを切っても先頭はまだタイトルホルダー。それをスターズオンアースとドウデュースが一歩一歩差を詰めてきます。差は2馬身ほど。

 残り100mを切ったあたりでタイトルホルダーはついに捕まりました。それでも馬券内の3着を信じて応援の声はやみません。

 ラストはスターズオンアースとドウデュースの叩きあい。地を這うような低い姿勢でドウデュースが抜け出し、人馬一体の走りで勝利!!

 2着には、不利とされる大外枠からわずか半馬身まで粘ったスターズオンアース。3着に、ジャスティンパレスの猛追を凌いでタイトルホルダーが残しました。

感想

 終わってみれば、ジャパンカップの掲示板から、有馬記念に出走しなかったイクイノックスとリバティアイランドを抜いた3頭が、そのまま馬券となりました。この2戦が、頂上決戦にふさわしい戦いだったことを物語っています。

ドウデュース

 内枠からスタートをそろっと出て後方を追走。向こう正面で進出開始して、4角で先頭を射程圏に入れる走りは、まんまディープインパクトのコース取り。さすが武豊。それに応えるドウデュースの器の大きさを、改めて強く印象づけられるレースぶりでした。

 これまで、同期かつダービーで下したイクイノックスが世界の頂点に駆け上がるのを横目に、ドウデュースは凱旋門賞で惨敗して以降、ドバイターフでは足元不安で出走取り消し。秋天ではデビューからずっとタッグを組む武豊が負傷。直前に初めての乗り替わりと、不運が続いていました。

 しかし、消耗の激しい現代競馬ではハードと言われている秋古馬三戦を完走。しかも、一戦ごとに調子を上げていくタフネスぶりで、鞍上が武豊に戻ったタイミングで、馬も人も復活の勝利。出来すぎたストーリーですが、これぞ有馬記念といった結果になりました。

 今年いっぱいでターフを去りゆく馬が多いなか、来年の現役続行も宣言され、名実ともにトップホースとして、これからの日本競馬を引っ張っていく存在です。

スターズオンアース

 保持タイトルこそ桜花賞とオークスの2つだけですが、あらゆる条件で好走を続け、未だ4着以下なしの女傑スターズオンアース。ここでも大外枠のジンクスを打ち破る快走を見せました。ルメールマジックが発動したとはいえ、それに応える実力がないとできない芸当です。

 ジャパンカップでは、やはり大外枠から斤量が2キロ軽い最内枠のリバティアイランドに0.1秒差まで迫っており、正直、リバティアイランドくらい強いかしれないと思っています。

 枠の運や、わずかな展開の綾で、この先いくらでもG1勝利を積み重ねられることでしょう。来年も楽しみです。

タイトルホルダー

 G1の舞台で、他馬を大きく引き離しての果敢な逃げ。そして4角で沈むことなく、最後まで懸命に脚を伸ばす姿。誰もがもう一度見たかったタイトルホルダーを、引退式を控えたラストレースで見事に披露してくれました。

 凱旋門賞以降、この馬らしくないレースが続き、春天ではまさかの競走中止。そのまま引退という選択肢も挙がったようでしたが、よくここまで調子を取り戻してくれました。

 スタートさえいつも通り決まっていれば、勝負はもっともつれたはずです。負けて強しを印象づけるレースぶりで、やはりタイトルホルダーは強かった!

ジャスティンパレス

 春天1着、宝塚3着、秋天2着という馬柱は安定感があり、この馬が本格化したことを意味しています。力がなければG1でこれだけ馬券に絡むことはできません。

 しかし、レース前に「強い相手を正面からねじ伏せた経験はまだない」と評したように、自分から動いて大きいレースを勝ったのは、2着にディープボンドが入った春天だけでした。それだけに、超一線級相手には少しだけ分が悪いと思っていました。

 結果は4着と悲観するものではありませんが、ジャスティンパレスの強さを示す内容ではなく、むしろ前3頭の実力を引き立てる形となりました。

 来年はもう一皮剥けて、ドウデュースとともに薄くなった古馬戦線を盛り上げていってほしい馬です。がんばれジャスティンパレス!

シャフリヤール

 日本よりも海外で走ることが多くなったシャフリヤールですが、香港での頓挫を機に、急遽有馬に参戦してくれました。8番人気と低評価でしたが、それを覆す走りで掲示板。一線級の力のあるところを見せてくれました。

 母はわりとアメリカンな血統ですが、ベルモントSを勝ったシアトルスルーの血はやはりスタミナがあります。母系の奥にいるリボーからも底力を受け継いでいそうです。

 来年も現役続行という噂が流れているのは嬉しい限り。できれば日本でその勇姿をたくさん見たいものです。

タスティエーラ

 ダービー馬三頭のうち、唯一掲示板を外してしまいましたが、勝負どころでジャスティンパレスに被せられる大きな不利。むしろそれで6着なら大健闘といったところで、安易に世代レベルが低いと決めつけられません。

 先輩のダービー馬二頭が揃って現役続行。タスティエーラの来年は捲土重来の年になることでしょう。

ウインマリリン

 有馬記念を最後に引退するウインマリリン。この着順に来れたことには驚きました。順調な競走馬生活を送れていれば、エリザベス女王杯くらいは勝っていたことでしょう。それだけに香港ヴァーズでG1馬になったときは嬉しかったです。

 初年度の配合相手はタイトルホルダーとのことで、二頭の仔をまた有馬記念で見せてほしいです。

ソールオリエンス

 イクイノックス引退後は、ソールオリエンスにキタサンブラックのエースとして頑張ってもらわないといけません。今回は内枠で不自由な競馬となり、結果を出せませんでしたが、まだまだ奥を秘めています。

おわりに

 有馬記念という大レースを現地観戦できたのは幸せでした。それもガラス張りの暖かい席で、ぬくぬくと半日を過ごせたのは快適すぎました。また来年もここに来たいです。倍率20倍の席だから、もうこの先20年当たらないかもしれませんが。

 タイトルホルダーの引退式まで見届けて、ほんとにこの馬のファンだったんだなあ、としみじみ思いました。寂しさはありますが、故障して春天で下がっていったシーンを思い出すと、無事に種牡馬になれてよかったと、安心の方が大きいです。

 2023年の種牡馬リーディングとなったドゥラメンテの最初の後継種牡馬ですし、人気も非常に高い馬ですから、良質な花嫁をたくさん集めることと思います。いつか産駒に出資したいですね!

ありがとうタイトルホルダー!


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