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ジャパンカップ2022海外馬血統 2/2

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グランドグローリー 

グランドグローリーの父は、ダンジグ直系のオリンピックグローリーです。1400mから1600mのG1を4つ勝った名マイラーで、ジャックルマロワ賞にも2度参戦し、それぞれ2着と3着でした。ただ種牡馬成績は今のところ奮わず、G1馬はグランドグローリーを含む2頭に留まっています。ただ、リファールやシャーリーハイツといった日本でも活躍馬の多い血を持っています。

グランドグローリーの母父は、ミルリーフ直系のデイラミです。ミルリーフは凱旋門賞を含む2000mから2400mのG1を6勝した中長距離馬ですが、マイルでも通用するスピードを内包しており、直系にはミホノブルボンの名前も並びます。偉大な父祖の影響を受けたデイラミも、1600m~2400mのG1を7勝した距離不問の名馬でした。

グランドグローリーの血統的な特徴は、アルザオとライトオブホープという、リファール産駒の全兄妹の3×3クロスを持っていることです。つまり、リファールの4×4になります。リファールは、日本競馬に大きな影響を与えている血で、ディープインパクトやハーツクライの母系に入り、主に瞬発力・加速力を強化します。先日の秋天を制したイクイノックスも、父系と母系あわせて3本のリファールクロスを持っており、上り32.7という驚異的な切れ味を見せてくれました。

グランドグローリーの話に戻りますが、リファールのクロスだけでなく、ミルリーフの5×4というクロスも持っています。ミルリーフ(その産駒シャーリーハイツ)の血はタフネスを底上げしますが、サドラーズウェルズほどの重さはありません。言ってみれば、サドラーはタフネスを爆発的に強化する反面、素軽さを減殺しますが、ミルリーフは素軽さを維持しながら、タフネスを補強できるという印象です。

ここまで見てきたように、グランドグローリーの日本適正は非常に高いと考えます。それを実証したのが昨年のJCで、人気以上の5着に健闘しました。今年のジャパンカップを最後に引退し、社台ファームで繁殖牝馬入りというのも納得の血統背景です。

テュネス

テュネスの父は、ミスプロ直系のグイリアーニです。祖父テルテュリアンからドイツで活躍する父系ですが、さらに一世代さかのぼるとミスワキの名前が出てきます。ミスワキは、日本においてはJCを制したマーベラスクラウンの父でもあり、オネストの項で紹介した名牝アーバンシーを輩出しました。母父としては、グランドグローリーの項で紹介したデイラミ、そして日本では何といってもサイレンススズカなどの活躍馬を送り出しています。テュネス自身は、ミスワキから数えると3世代もの時を経てはいますが、日本で通用するスピードを備えていても不思議ではありません。

テュネスの母父は、トイルサムというハイペリオン直系の種牡馬です。ハイペリオン系は、日本では初代アイドルホース・ハイセイコーを生み、世界的にも数多くの活躍馬を送り出し、一時はこの世の春を謳歌した血脈でした。しかし、現代では衰退著しく、日本での活躍馬もセイウンスカイが最後となっています。

トイルサムは、傍流に追いやられたハイペリオン系の中から、1980年代の終わりに唐突に現れた名スプリンター・カドゥージェネルーを父に持ち、自身も11番人気から1400mのG1・フォレ賞を制して種牡馬入りの道を開きました。残念ながらトイルサム自身は超一流のスプリンターとは言えませんが、こうして血統表に入ると、とかく重厚になりがちなドイツ馬にあって、珍しく軽さを主張するアクセントになっています。

テュネスの半兄は、昨年の凱旋門賞を勝ったトルカータータッソですが、サドラー直系のアドラーフルークを父に持つ兄よりも、ミスワキ直系のグイリアーニを父とするテュネスの方が、どちらかといえば日本に適応できる雰囲気があります。とはいえ、ドイツで培った血統自体がどこまで日本に通用するかは、まったくの未知数です。

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