勝つか、負けるか。生きるか。死ぬか。2023年J1昇格プレーオフ 東京ヴェルディ対ジェフユナイテッド市原・千葉プレビュー&ジェフのシーズン振り返り

毎度おなじみいぬゆなでございます。
ついに明日に迫った2023年J1昇格プレーオフ準決勝。もう一試合はすでに今日行われ、清水0-0山形という結果になり清水エスパルスが決勝への勝ち上がりを決めました。ジェフにとって2017年以来で久しぶりとなるプレーオフですので、自分もいろいろとまとめてみました。動画での煽りVが流行ってる中で時代に逆行するテキスト中心のプレビュー。最近こういうのを書く人より読む人の方が変わり者なのではないかと思うんですがどうでしょう。最後の方のジェフとヴェルディの思い出を振り返る部分では動画も貼り付けてるんでそういうのがいい人はそこだけ見てください。レッツゴー。

小林監督からジェフサポーターへのリクエスト

「対ヴェルディ戦、味の素スタジアム。おそらくジェフを愛するみなさんがこの一体感を生み出すため、自分たちの背中を押してくれると思います。
もしかしたら、ホームチームよりも多い黄色のもの、もしくはユニフォームを身に着けたジェフのサポーターが、ヴェルディのサポーターよりも多くスタジアムに足を運んでいただき、まるで自分たちのホームのように戦わせてくれるんじゃないかと期待しています」

これは今シーズン最終節終了後セレモニーでのジェフ千葉小林監督の言葉です。なんだかんだありましたがプレーオフ準決勝のチケットは順調に売れていて、3万人台の観客数となりそう。券種の売り切れ具合などを見るに、ジェフサポの方がヴェルディサポより多い可能性は十分あるという売れ方になっています。

人数に関しては蓋を開けてみないとわかりませんが、サポーターが監督に託されたリクエストは「ジェフのホームのように戦わせる」こと。ジェフサポーターの人数はフクアリと同じくらい揃うはず。アウェイのスタジアムではありますが、あとはいつも通りやるだけです。

小林監督は就任当初から「一体感」「当たり前のこと、やるべきことを当たり前にやる」みたいな発言を繰り返していて、今年のジェフ流行語大賞があったら間違いなくノミネートするんですけども、開幕当初同じことばっかり言ってるその様子はサポから見ると覇気のない監督みたいな受け取られ方が強かったと思うんですよね。なんかいつも元気ねえなこの人みたいな。

それがいつの間にか言葉に力が宿ってきたし、外向け意外のチーム内でのコミュニケーションも熱血的なやり方を使うようになっていったらしいし、シーズン終盤はサポーターをアジテートして観客動員数を右肩上がりで回復させるようにまでなりました。勝つための手段を模索し続けている監督という印象が強いですが、サポーターもその可能性を上げる1つの武器だというのが伝わってくる。シーズンを通して一緒に成長し、サポーターを"使える"ようになった監督というのはJ2降格以来はじめてに近いのではないかと思います。ジェフサポは存分に使われていきましょう。

ジェフ千葉の2023レギュラーシーズン

2023年のジェフは結構暗黒な雰囲気から始まりました。コロナ禍で難しい舵取りが求められた三年間の尹晶煥政権が終わり、ヘッドコーチから昇格の新人監督が就任という「よくわかんねーけど失敗しそうなパターン」で小林監督が誕生。外国籍選手ゼロかつ若手中心でやる気が伝わって来ない補強。Jクラブ全体の中でも観客数の回復がかなり遅めだったのは、こういったなんとなくの閉塞感によるものでもあったでしょう。

アウェイで長崎との開幕戦は小森のゴールで勝利したものの、ホームが続く山形戦は先制しつつも逆転負け、群馬戦は前半4分に武颯にやられるなどして2-2の引き分け、アウェイ秋田戦はコーナーキックから相手のヘディングでフワッと上がったボールがゴールに吸い込まれてそのまま0-1で負け、その後なんと第9節まで勝ちなし。その9節はアウェイで藤枝に3-1とボコられ、この試合がターニングポイントになりました。

この時点でジェフは21位。開幕後未勝利が続いていた徳島と一緒に無惨に降格する未来しか見えなかったのですが、どっちもここから立て直すことができました。本当によかったね。ちなみに降格した大宮はこの時点で4勝5敗の14位でした。その後ジェフ勝ち点3を配給したし天皇杯でもどうぞどうぞと道を譲りましたがなぜ降格しているんでしょうか。

その後は勝ったり負けたりができるようにはなっていったのですが、第20節のアウェイ水戸戦で4-1とボコられ21節ではアウェイでいわきと0-0、22節ではホームで大分と1-1という結果に「あれ、なんかやっぱ上位に行くのはキツいシーズンかな~新人監督だし来年勝負やな~」みたいな考えが脳裏をよぎり始めたところが第二のターニングポイント。そこからは複数得点をしっかり獲れるし、負けても次の試合で勝てるようになりました。

この時期にクラブ記録タイの7連勝を記録。エスナイデルと小林慶行がこの記録持ってるっていうのが運命というか皮肉というか。点を獲って獲られてって部分を見ると小林サッカーにエスナイデルみを感じる部分もゼロではないんだけど、当然エスナイデルみたいな法令違反レベルのハイプレス・ハイラインを敢行するわけではありません。行けるところではプレスに行きますが、ヤバそうなら撤退もできる。開幕当初はロマン寄りでしたが二度のターニングポイントを経て現実味がある戦術に落ち着いた、ってイメージです。

どの解説者もライターもシーズン序盤からずーっと「千葉は良いサッカーをしている」「こんなに勝てないのが不思議でしょうがない」みたいなこと言ってましたし、ゴール期待値が2を超える試合も結構あったんですが、序盤は全然勝てなかった。良いサッカーとは勝つサッカーのことであり、小林サッカーは楽しいけど勝てないサッカーなんかな~ユンサッカーで楽しくなくて勝てないサッカーを見てきたからまだマシと言えばマシなんやが……と思い始めていましたが、成績のほうが追いついてきた感があります。ありがたいことです。

実はシーズン後半戦の21試合はジェフが13勝4敗4分でリーグ首位。前半戦とのギャップを考えると、いま最も調子を上げてきているクラブとも言えます。プレーオフは勢いだけでは勝ち上がれないですし、7連勝で滑り込んだ勢い満載の2017年は見事に爆散したジェフですので、オラオラな感じのマインドセットよりは監督の言うような「やるべきことをやる」というのがちょうどいい塩梅だと思いますね。

補強についても振り返っておきましょう。夏にJ3の今治から獲得したドゥドゥが完全にフィットして完全体となったジェフ。彼の獲得がなかったら勝ち点いくつ減ってたかわかりません。もう一人の外国籍選手メンデスは無所属だったところを獲得したのですが、何ヶ月か行方不明で本当に獲得したの?嘘リリースだったのでは?という感じでした。DFラインにデカいやつが必要なとき出てきてくれるのは助かりますね。

オフのころを思い返せば、レンタルの田中一樹は京都では出場機会が限られていて「なんかよくわからん選手だけどどうなん?」という感じだったのがいつの間にか右サイドをスピードでブッちぎりまくる無双状態に突入していました。ちなみに彼は開幕戦で途中出場し、わずか7分のプレータイムで退場して試合後号泣し、恒例となったゴール裏をバックにした勝利の記念撮影では正座で写るという離れ技をかましました。なんかかわいいやつだねという評価を得て、その後谷澤達也のチャントを受け継ぎました。田中を完全移籍させられないと来年とても困ると思うので京都さんそんなに吹っかけないでくださいマジで。

いわきから加入の日高大は前評判通りの活躍。いわきで鍛えた筋肉は伊達ではないようで、なんか知らんけどずっと走ってます。左足のキックも強烈で、FKのとき右足は田口、左足は日高というのは相手チームにとってはかなり嫌なんじゃないかと思います。身長が意外にも低くて168センチなのはある意味チャームポイントかもしれん。

呉屋大翔は前線の目玉補強だったはずなんですが小森との2トップが機能せずワントップに戦術変更もあり、シーズン5ゴールとちょっと期待外れ。ただ小森の大活躍があり出場機会が潤沢ではなかった中で終盤調子を上げてきているので、プレーオフでヒーローになる確率は結構あると思います。

あと椿直起がジョーカーとしてベンチに入ると思われるので、出たときにはゴールに絡んでもらいたいですね。いつの間にか相手を抜いている系ドリブルは見てて気持ちいいのか気持ち悪いのかわかんなくて好きです。

ジェフとヴェルディの間の因縁

さて、プレーオフ前に盛り上げようと思って両クラブの間にある因縁を探してみたんですが、ないんですねこれが。オリジナル10同士、カテゴリも大体一緒だったので何かしら因縁につながるような大きな出来事があってもおかしくないんですが、ない。思いつかないしググっても出ないし多分ないんだろうなと思ったけど、ツイッターで聞いてみても本当にない。出てくるのは「思い出」ばっかりでした。教えてもらった思い出をいくつかご紹介します。

・1993年8月7日 川崎2-1市原(厚別競技場)
リトバルスキーがコーナーキックから直接ゴール。なおその後カズとビスマルクのゴールで市原は逆転負け。

このゴール、この動画に入ってると思ったら入ってなかった。CKの直接ゴールって結構あるんやな

・1996年4月15日 市原1-0川崎(市原臨海競技場)
延長で中西永輔がボールを手に当てながらアシスト。かわされたラモスはブチギレ。しかし中西がハンドを認める発言をしたことで後日1試合出場停止と罰金処分を食らったそうな。(Wikipedia情報)

・1996年11月19日 市原1-5川崎(市原臨海競技場)
試合開始13秒でカズがゴール。その後カズのハットトリックもあり川崎が勝利。ボロ負けすぎる。

・2004年5月5日、東京V2-1千葉(味の素スタジアム) 森本貴幸がJ1最年少記録となる15歳11カ月28日でゴールを決める。しかもこのゴールのアシストは小林慶行。森本は2013年の夏にジェフに移籍してきて結構活躍してくれた。ケンペスと出場機会を争って良い競争になってた印象だけど、たまにやるツートップが破壊力しかなくて大好きだったわ。

誰かが記録更新してくれない限り未来永劫晒され続けるジェフユナイテッド市原・千葉

・2008年12月6日 ジェフ千葉が奇跡の残留の裏で東京Vが降格(長くなるんでリンクからWikipediaでも読んでくれ)
ジェフが大逆転勝利をおさめたのがFC東京であり、そのときの監督が現東京V監督の城福浩であるというのも縁ですな。FC東京はACL出場圏内に入るために得失点差も考えてずっと前がかりだったというのはあとから知って運命の悪戯を感じた。ヴェルディを降格させるためにわざと負けたみたいな陰謀論、当時2ちゃんとかで書かれてたりしたんかなあ。

・2011年11月20日 東京V1-0千葉(味の素スタジアム) 巻誠一郎が恩返しゴール。この試合ミリガンが退場してるのが懐かしすぎる。元気かな。

ジェフ戦に向けたチラシ配りを新橋で行う巻誠一郎。NTRやろこんなもん……

・2015年11月8日 千葉1-0東京V(フクダ電子アリーナ)
今度は森本が恩返しゴール。そして未だに全く意味がわからないのですが、ゴールセレブレーションでGK岡本と森本が熱いヴェーゼを交わしました。

森本が点を取った際はキスしようと“約束”していたという

・2016年6月12日 千葉2-2東京V(フクダ電子アリーナ) 東京Vが2点差を追いついた直後に平本一樹が佐藤優也を吹っ飛ばし退場。1点目のあと佐藤優也がボールを抱え込んだところをヴェルディの選手が引っ剥がしに行こうとしたという伏線がありつつでしたが、優也は前年までヴェルディ所属だったんですよね。シンプルに嫌いな相手にボンバータックルかました感もあってすごい試合でした。つーかこれレボリューション元年の試合ですね。この記念ユニは着用試合の戦績が悪すぎてフクアリのメイン側のゴミ箱に1枚捨てられてました。両クラブのOB戦も行われた25周年記念マッチがこうなるっていうのが非常にジェフという感じでしたね。

何度見てもギブミーレッドカードという感じのタックルですごい

・2018年2月25日 東京V2-1千葉(味の素スタジアム) 開幕戦の前半9分に増嶋竜也が退場。エスナイデル政権下で、開幕してからずっと誰かが退場してた(エスナイデル自身を含む)時期ですね。

DOGSO以外のなにものでもないファウル

・お互いOBが監督と強化部長
小林監督はヴェルディOBですし、ヴェルディの江尻強化部長は言わずとしれた「エジリズム」の人です。ジェフで監督コーチを何年やっても昇格できなかった江尻さんがヴェルディで昇格したら我々はもう立ち直れないかもしれません。

こちらでラストです。

まさかの高木義成さんがリプくれました。ジェフユースのセレクション落ちてたのは知らんかった。ジェフとヴェルディの因縁じゃなくて完全に高木さんとジェフの間の因縁ですが、引退後ツイッターで過激なツイートを連発してる高木さんの念は結構届きそうで怖いです。


さて、Jリーグ発足からずっとJ1に在籍し続けている鹿島と横浜F・マリノスはリーグ戦で68試合対戦しているようですが、ジェフとヴェルディはカテゴリが違ったのが2006・2007・2009の3年間だけなのでJ1で34試合、J2で28試合、合計62試合対戦しています。もちろんお互いに最多対戦カードとなります。そりゃ思い出が多いわけだわ。

ジェフから見てJ1では14勝19敗1分。J2では7勝9敗12分。なんやかんやで負け越してます。J2でのヴェルディは「圧倒的な強さかと言われるとそういうわけではない年が多いけど、しっかり勝ち点取りにくるよなあ」って感じの印象なんですが、引き分けの多さからくる印象でしたね。

どちらも市原→千葉と川崎→東京とホームが変わってますし(広域化と移転で全然違うけど)、古豪の凋落という意味でも共通点はある。ただ、コロナ禍で2000億円の赤字を出しても撤退の兆しなんて無かったJR東日本が親会社のジェフと、一時期はずっと消滅危機と言われていてピッチ外のことで翻弄され続けてきたヴェルディではその中身は全く違います。

10節はフクアリで39節は味スタで2-0から大逆転負け。ホームではブワニカのゴールで逃げ切ったんですけど、直近のアウェイ戦がキツかった。2-0からPKもらって失敗してからの逆転負けなんでダメージ大きい感じがしたんですよね。でも実際は次の試合ホームいわき戦で勝ってますし、最終節ホーム長崎戦1-3で負けたので明日は勝つ法則。リバウンドメンタリティや!

ということでいろいろ書いてきましたが今回の試合、味スタのアウェイゴール裏中央部が天井のガラス割れそうなせいで使用不可になってて、チケット販売時にそのあたりの説明書きを読み飛ばした人がブチギレてそれに応戦するヴェルディサポみたいな感じになって、その流れで小競り合いもたくさんあり特に因縁めいたものはなかったジェフとヴェルディの間においては過去一番レベルでピリついてるサポが出てきたというのが一番の因縁ということで、明日は怪我なく過ごしましょう。お後がよろしいようで。

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