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ASKAプレミアムコンサートツアー『Wonderful World 2023』レビュー

ASKAは、もう完全に吹っ切れた。
そう感じさせられるコンサートだった。

「吹っ切れた」とは、ASKAが以前、コンサートツアー『-higher ground- 2019>>2020』を振り返り、語っていた言葉だ。
それまでは、ASKAの中に昔の楽曲、チャゲアスの楽曲をあまり数多く披露してこなかった。ニューアルバムを引っ提げて、その中の楽曲を中心にライブツアー。それが定番だったからだ。

中でも長年の大きな呪縛。
CHAGE and AKSAのライブで映える楽曲は、また2人でライブをするときのために。
そんな呪縛からの解放を示したのが『-higher ground-』での「RED HILL」「HEART」「BIG TREE」解禁だった。

それでも、ASKAにはまだ解禁しきれない楽曲が残っていた。
今歌いたい曲をチャゲアスのシングルにしようと攻めた「Trip」、チャゲアスブームの火付け役となった「太陽と埃の中で」、演歌フォークのイメージを覆すべくレコード会社を移籍して発表した「モーニングムーン」、チャゲアスのデビュー15周年記念曲でもあり、2人をイメージしたジブリ短編映画で有名な「On Your Mark」。

これらの楽曲は、きっと温存していたのだろう。新生CHAGE and ASKAのために。
それをついに『Wonderful World 2023』で解禁した。

ASKAの最後の呪縛を解き放ったのは、YouTube上にアップされた南行徳中学校合唱部の「太陽と埃の中で」だと私は思っている。
ASKAは、2021年12月にその動画のコメント欄でこう綴っているからだ。
「歌ってくれて、そして見つけてくれてありがとう。
今、決心したよ。よし、引き受けよう」

これを機にASKAは、「太陽と埃の中で」をセルフカバーして、芸歴15年以上が対象のお笑い大会『G-1グランプリ』テーマ曲として提供した。そして、ニューアルバム『Wonderful World』の1曲目を飾ったのである。
そんな経緯までもが、まさにWonderful Worldだ。

解禁はチャゲアス曲だけではない。復活後に発表した中で最もチャゲアスの雰囲気を感じるポップな名曲「東京」も、ついに披露となった。
この曲は、ASKAソロデビュー30周年を記念したASKAソロ人気曲投票で数々の名曲群の中に割り込み、堂々の7位。

それほどの人気曲ながら今までライブで披露されてこなかった。その理由は、明かされていないが、私は常々CHAGE and ASKAで歌ってほしい曲と語っていただけに、ついにこの曲まで・・・という想いが強い。

この「東京」ではイントロの主メロが原曲のような管楽器ではなく、バイオリンに変わっていて、情緒溢れる構成だった。チャゲアス時代の楽曲についても言えるのだが、このライブでは生楽器の演奏を前面に押し出して、同じ空間で人が奏でる生音を楽しんでもらえるようになっていた。

このコンサートで最も気になったのが、終始ASKAが楽しそうに笑顔を絶やさなかったことだ。
こんなに楽しそうにライブステージを繰り広げるASKAは、いつ以来だろうか。
いろんなことを吹っ切れた充実さが歌声も含めていろんなところに好影響を与えているように感じられた。

そして、このコンサートのもう1つの魅力と言えば、地球や世界という大きなテーマになっていることだろう。
オープニング1曲目がインストの「Touch the earth」。
「地球に触れる」という意味を持つこの曲は、地球の様々な大自然を神秘的に撮影した映像とともに流れる。
人工物や人間ではなく自然の雄大さを映し続けるその映像は、地球の素晴らしさとともに人間の儚さをも浮かび上がらせる。

そして、次々と披露される楽曲を聴いていると、人間と自然が密接に関連して描かれている楽曲が多いことに気づく。自然を比喩としても、ふんだんに使用している。これもまたWonderful Worldなのだ。

さらには、新たな試みとして中盤でASKAが最も大きな影響を受けたデイヴィッド・フォスターの名曲が2曲。
世界最高峰の名曲「To Love You More」は、何とASKAの娘、宮崎薫が歌唱。この記述だけ見ると、親馬鹿だな、と思われるかもしれないが、宮崎薫のステージを視聴すれば、その人選に納得せざるを得ないだろう。
彼女の歌唱は、細かな部分までしっかり歌い込んできたであろう努力が垣間見えて、その豊富な声量と確かな技術で、世界を魅了できるほどのボーカリストと言っても過言ではない。

「You Raise Me Up」は、ASKAが歌唱。
この楽曲も、自然を比喩で使用していて、山の頂を希望の象徴として、嵐の海を困難の象徴して描いている。ASKAは、主人公に力を与えてくれる人の存在への感謝を、時に繊細に、時に壮大に歌い上げていく。

今回もまた、様々な新しい試みが追加になって、過去最高のコンサートを更新したと言ってもいいだろう。

ファン待望の「On Your Mark」を披露した後、最後のMCでASKAは、こう語った。
「やりたいことが次から次へと出てくる」

1つのことをやり遂げたら、すぐ新しいことを始める。
今回のライブ映像作品も、Blu-rayだけでなく、新たにTravel TVでストリーミングとダウンロードの双方を配信発売。しかも、Blu-ray購入者は、シリアル番号入力により無料でその配信作品を視聴できる。

ASKAは、そうやって常に音楽の最前線を走り続ける。
その次へ、が今から楽しみで仕方ない。

『Wonderful World 2023』曲目
-Opening-
01.Touch the earth
02.Trip
03.自分じゃないか
04.地球という名の都
05.こんなふうに
06.憲兵も王様もいない城
07.LOVE SONG
08.風の引力
09.どうしたの?
10.青い海になる
11.C-46
12.はじまりはいつも雨
13.しゃぼん
14.To Love You More kaoru(セリーヌ・ディオンcover)
15.You Raise Me Up(デヴィッド・フォスターcover)
16.僕のwonderful world
17.東京
18.太陽と埃の中で
19.モーニングムーン
20.どんな顔で笑えばいい
21.今がいちばんいい
22.On Your Mark
23.I feel so good
-Ending-

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