平成の音楽を振り返る② ~ビーイングブーム~

 「ラブ・ストーリーは突然に」と「SAY YES」のダブルミリオン達成が「ドラマ主題歌は大ヒットする」という法則を作った。フジの月9が一世を風靡したほど、当時のフジテレビの影響力は大きかった。

 そんなフジテレビに匹敵するほど、大きな影響力を持ったのが音楽制作会社ビーイングである。
 ビーイングが一躍有名になったのは、「おどるポンポコリン」である。TUBEの「シーズン・イン・ザ・サン」を作曲して頭角を現した織田哲郎は、1990年(平成2年)にアニメ『ちびまる子ちゃん』の主題歌「おどるポンポコリン」を作曲し、B.B.クイーンズが歌ってレコード大賞に輝く。

 そこからビーイング創業者の長戸大幸は、ドラマに関わらずテレビ番組主題歌、CMソングを手掛けて、幅広いタイアップ獲得戦略で音楽業界を席巻する。

 そんな長戸大幸が特別扱いをしてまで、重宝したのが天才作曲家織田哲郎である。
 織田哲郎は、ビーイングのメイン作曲家として、1992年から数々のビッグヒットを連発する。
 織田がビーイングで制作した楽曲のうち、90万枚以上を売り上げたのは、下記の楽曲群だ。

「おどるポンポコリン」B.B.クイーンズ 1990
「いつまでも変わらぬ愛を」織田哲郎 1992
「世界中の誰よりきっと」中山美穂&WANDS 1992
「負けないで」ZARD 1993
「揺れる想い」ZARD 1993
「このまま君だけを奪い去りたい」DEEN 1993
「愛を語るより口づけをかわそう」WANDS 1993
「世界が終るまでは…」WANDS 1994
「瞳そらさないで」DEEN 1994
「突然」FIELD OF VIEW 1995
「碧いうさぎ」酒井法子 1995
「恋心」相川七瀬 1996
「マイ フレンド」ZARD 1996

 限られたアーティストではなく、多岐にわたるアーティストの楽曲を手掛け、いずれもヒットさせていることに驚く。

 その象徴がDEENに提供した「このまま君だけを奪い去りたい」だろう。

 当時、DEENは全く無名のグループで、しかも、このシングルがデビュー曲だった。

 にも関わらず、ビーイングは、「このまま君だけを奪い去りたい」をDEENに歌わせ、NTTドコモのポケットベルCMソングという大きなタイアップを獲得する。

 さらに驚くべきことに、この楽曲は、129万枚のミリオンセラーとなり、一躍DEENを日本を代表するアーティストに押し上げた。

 ビーイングブームの伝説のピークは、1993年6月28日のオリコンシングル週間チャートだろう。
 何と、ビーイングの楽曲が1位から6位までを独占するという前代未聞の記録を樹立したのだ。

1位:「刹那さを消せやしない」T-BOLAN
2位:「裸足の女神」B'z
3位:「揺れる想い」ZARD
4位:「果てしない夢を」ZYYG, REV, ZARD&WANDS
5位:「君が欲しくてたまらない」ZYYG
6位:「夏を待ちきれなくて」TUBE

 この年、織田哲郎は、作曲家として年間シングル売上が1300万枚以上という驚異的な記録を作る。
 若者の興味がオリコンシングルチャートに集中する、というメガヒット時代が訪れたのだ。

 そんなメガヒット時代の申し子が、ビーイングにおいて自力で売れる楽曲を作り続けたB'zである。

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