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【第2弾】宅地建物取引士【③宅建士になると得すること】

こんにちは。
都内でひっそりと生きる専業主夫です。


続いては、宅建士の資格を取ると具体的にどのようなことで得をするのかということについて、業界未経験で宅建を取得し、その後不動産業界で3年間の実務経験を持つ私の実体験をもとに解説します。

前回の記事はこちらからどうぞ。



③宅建士になると得すること

1.資格手当がもらえる、副業ができる

宅建を取得すると、不動産会社では手当が出ることが多いです。相場としては、5千円~3万円くらいのようです。中には5万円も付く会社もあります。仮に毎月5万円の手当が出れば、年収が60万円増えることになるので非常に大きいですよね。

また、不動産会社の営業マンは基本給が少なく、インセンティブで稼ぐ給与モデルであることが多い(事務はインセンティブがない)ので、例え毎月のインセンティブがなくても会社に所属しているだけで月収がその分プラスになることは大きいといえます。

では、なぜ不動産業界において宅建を持っている人がそれほど手当がもらえるかというと、宅建士は必置資格であるからです。名前のとおり、宅建業を営む会社(不動産会社)には必ず宅建士がいなければなりません。

宅建業の事務所には、以下のとおり専任の(当該事務所で常勤する)宅建士の設置が義務付けられています。

・業務に従事する者5名に1名以上の割合で成人の宅建士を設置する
・欠員が出た場合は、2週間以内に必要な措置を取る義務が生じる

この措置を怠った場合には、指示処分の対象となる(宅建業法65条1項)だけでなく、業務停止処分を受けることもある(同条2項2号)。また、罰則(100万円以下の罰金)の対象ともなりうる(同法82条2号)。

宅建業法より抜粋

例えば、社長と従業員を合わせて5人だけの会社の場合、1人だけ専任・成人の宅建士がいる必要があります。なお、これも勘違いしている人が多いのですが、この1人とは社長(代表者)である必要はありません。

弁護士や司法書士、税理士など通常、資格業は代表者がその資格を所持していなくては事務所を開設することはできません。しかし、宅建業の場合、代表者が資格を持っていなくても宅地建物取引士を雇うことで宅建業の免許を取得することができます。

これも、世の中に不動産会社が多い原因の1つなのですが、つまり宅建を持っていると「独占業務」の代行の副業ができるのです。

宅建士には「重要事項の説明(法35条)」や「重要事項説明書への記名」「37条書面への記名(法37条)」という独占業務があり、これらは宅建士でないと行えません。

前述のとおり、不動産業者には5人に1人は専任の宅建士を配置する義務がありますが、このラインギリギリしか宅建士を用意していない不動産業者では宅建士が足りていないケースがあります。

特に土日や、1~3月といった繁忙期は宅建士が不足することが多く、このような場合に不動産業者はアルバイトやパートとして宅建士を雇います。

なお、時給としては900~1500円くらいが相場のようなので、大きく稼げるとはいえませんが。また注意として、あくまで専任の宅建士である必要があるので、すでに別の会社で宅建士として従事している人は副業はできません。


2.他の士業に比べて費用対効果が高い

そもそも、宅地建物取引士は元々「宅建建物取引主任者」という名称でした。しかし、平成27年4月からは「宅地建物取引士」と士業化されることになりました。

代表的な士業としては「弁護士」「税理士」「司法書士」「行政書士」「社会保険労務士(社労士)」などがあり、それらの士業と同様の枠組みになったということです。

士業化された背景には、今まで以上に責任や義務を強化する目的がありました。「信用失墜行為の禁止」「必要な知識及び能力の向上の維持」「従業員の教育」といった新たな文言が付け加えられ、さらに暴力団員は欠格事由に該当するため、宅地建物取引士の登録を受けることができなくなりました。

このような責任や義務が増えたということは、それだけ不動産を巡る詐欺や事件が増えていることを意味します。前述のとおり、大手不動産会社の担当者でも詐欺被害に遭うことや、日常の業務でも売主や買主、その関係者とのトラブル(紛争)に巻き込まれることもしばしばあります。

最悪の場合、裁判になり業務停止や廃業になる可能性もありますので、もし独立を検討する場合は、「最低でも3年程度」は不動産会社で「宅建士として」契約・決済も含めた「実務経験を積む」ことを推奨します。


また、宅建士は他の士業に比べ費用対効果が高いことも強みです。費用対効果が高いとは具体的にどういう意味か解説します。

第1に、他の士業に比べると試験の難易度が低く、合格しやすいという点があります。以下は、他の士業との勉強時間の比較になります。

文系最高峰の資格である弁護士や公認会計士とは全く比較になりませんが、難易度が近いとされる行政書士と比べても半分程度の勉強時間で合格することができます。

司法書士ともなると3,000時間と、数年単位での勉強が必要になります。さらに、会社で働きながら合格を目指す場合は勉強時間が確保できないことから、それ以上の年数がかかるといえます。

それにもかかわらず、独占業務や必置義務があることで、不動産業界に限れば宅建士の資格が最も重宝され、就職(転職)にも有利といえます。


第2に、宅建は独学で合格を目指すこともできる試験です。宅建士や行政書士においては独学で合格する方も多いのですが、それ以上の難易度の社労士や司法書士ともなると、独学での合格は難しくなります。その場合は予備校や通信講座を受ける必要があるのですが、多額のお金がかかります。


以下は、大手予備校での料金相場の比較です。

●弁護士・公認会計士・税理士・・・80~100万円前後
●司法書士・・・40~60万円前後
●社労士・・・20~30万円前後
●行政書士・宅建士・・・10~20万円前後

ちなみに私はフォーサイトという通信講座で取得しましたが、5万円前後の費用で、教育訓練給付制度を使ったので、当時は受験料の20%がキャッシュバックされた覚えがあります。


当たり前ですが、たとえ大手予備校で有名な先生の講義を受けたとしても、合格できるかどうかは本人の努力次第です。

そして、仮に合格できた場合でも稼ぐ(=資格への投資費用を回収する)ことができるかどうかは別の話です。

何年もかけて難関試験の受験勉強をして結局合格できず、多くの時間とお金を無駄にしてしまう人や、弁護士や公認会計士になれば楽に大金を稼ぐことができると勘違いしてしまう方が大勢います。

また現在、このような士業職は飽和状態にあるといわれています。士業は会社員のように定年がなく、さらに高齢化により年々平均寿命は伸びています。そのため、高齢の弁護士や税理士が大勢現役でいるわけです。

先ほどの客付け会社と同じくプレイヤーが多いほど稼ぐことは難しくなり、そういった実務経験豊富な先生と同じ土俵で戦うことは大変です。

さらに、士業職は将来的にAI(人工知能)により代替される懸念もあります。これにはさまざまな意見がありますが、現状に限っていえば、あくまで事務処理的な分野に限られます。

弁護士を例に挙げると、AIは六法全書の内容や過去の判例を記憶することは得意です。なので
「刑法○条の内容は?」「この事件で似たような判例はあるか?」という質問に対して回答することはできますが、弁護士の仕事はそれだけでは務まらないですよね。

詐欺事件であれば民事裁判での勝訴を目指すより、金銭の回収を目的として意図的に和解に持ち込むといった、ケースバイケースで対応することはまだまだAIには難しいと思います。

その分、宅建士は勉強時間や難易度の割には就職(転職)しやすく、稼ぎやすい資格であるといえます。これが費用対効果が高い理由です。


今回は以上となります。

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