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2023年4月後半日経平均相場の振り返り

①  日経平均チャート

4月後半相場を振り返ると、日経平均株価は7日から18日まで8営業日続伸し1200円近く上昇し、短期的な過熱感が意識された。

②  個別株と騰落レシオ

上げを主導したのは商社株や内需関連株が上位だが、その後買いが一服し、相場の膠着感が強まった。
東証プライム市場の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割って求める騰落レシオ(25日平均)は25日に146.53%まで上昇した。
そして日経平均株価は22年8月以来の高値を8カ月ぶりに更新した。
しかし、買われすぎの目安とされる120%を上回っており、指標面での過熱感もあり、利益確定の売りが出て短期敵に調整した。

 ③  日米経済指標

4月下旬以降は日米とも主要企業の決算発表が相次ぎ、日銀の金融政策決定会合(28日に現状維持で発表済み)や米連邦準備理事会(FOMC)も控えているため、マーケットの方向感を見極めたい投資家が多く、27日までは積極的な売買は手控えられたという所であろう。
しかし28日は、日経平均、日経225先物共に前日比で3.7%と急上昇を記録。
この要因としては、
1, 日銀が金融政策を引き続き緩和的に維持する方針を示したことに好感
2, 米国の利上げペースが緩やかになるとの見方が疑われたこと
3, 外国投資家からの買いが増加したこと
4, 日本国内の企業業績の好調や円安の傾向に好感
などが挙げられるだろう。

今月のトピックスとして二つ紹介しておきたい記事がある。

 ④  自社株買いとは

それは自社株消却が過去最多となったことである。
自社株(自己株式)とは企業が自ら保有する株式のことで金庫株とも呼ぶ。
議決権はなく、貸借対照表の株主資本のマイナス項目として計上される。

⑤  M&Aとは

役員や従業員への報酬に活用したり、M&Aの際の対価として使ったりすることができる。
消却すれば発行済み株式数がその分減ることになる。

⑥  自社株の消却過去最多

日経新聞社22年4月~23年3月の上場企業の自社株消却を集計したところ、前年比45件増の302件だった。
社数ベースでは33社増の271社となり、件数、社数ともに過去最多となったのである。

⑦  自社株買いROE変化

企業が自社株を積極的に消却している要因は、自社株の市場への再放出懸念を払拭するためだ。
企業が自社株買いをすると株主資本が減額され、純利益を自己資本で割った自己資本利益率(ROE)が上向く。
投資家のROE改善要請を受けて企業の自社株買いは増えており、22年度は前年比17%増の約9兆4000億円と過去最高だった。
積みあがった自社株を消却すれば市場に再び放出されることがなくなり、ROEが低下する恐れがなくなる。

⑧  東証再編での変化

もう一つは22年4月の市場再編で上場維持基準として流通株式比率が導入された。
流通株式は企業の自社株や大株主・役員の保有株などを除いた株式。
これを上場株式数(自社株を含む発行済み株式数)で割るのが流通株式比率で、自社株を消却すると計算式の分母が小さくなり比率が上昇する。

⑨  流通株式比率

プライム市場で35%以上、スタンダード市場とグロース市場で25%以上が求められる。
旧東証1部の上場廃止基準では5%未満だった。
東証の上場維持基準には、流通株式に株価を乗じて求める流通株式時価総額もある。
プライム市場で100億円以上、スタンダード市場で10億円以上、グロース市場で5億円以上が求められている。
発行済み株式数に株価を乗じて求める発行済み株式時価総額と異なり、自社株を消却しても影響がない。
企業が大規模な消却に踏み切りやすい環境になっている。

⑩  ノルウェー政府年金基金

もう一つは世界最大級の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金が今年の株主総会から、女性取締役がいない日本企業の取締役会議長などの選任に反対すると表明した。
女性取締役ゼロの企業は経営陣が選任されないリスクが出てくる。
今後企業は対応に迫られそうだ。
ノルウェー政府年金基金の資産運用を担うノルウェー銀行インベストメント・マネジメント(NBIM)は2022年末時点で1兆2600ドル(約170兆円)の資金を運用し、そのうち日本企業は1533社、合計640億ドル分の株式を保有する。
海外投資家の日本株保有の約4%に相当する。
投資先のうち、約300社で女性取締役がゼロという。
東証プライム上場1829社のうち、女性取締役がゼロの会社は383社ある。
NBIMは多様な考え方が議論を活性化させ、取締役会の質を高めるため、男女どちらも30%以上いる取締役会が望ましいとしている。

⑪  日本の女性取締役比率

日本企業の女性取締役比率は平均1割と他の先進国に比べて遅れている。
NBIMは欧米で20年から女性取締役ゼロの企業の取締役選任に反対している。
現在は男女各2人以上の取締役がいないと、経営陣の選解任に反対する方針を打ち出している。
日本ではまず最低1人の女性取締役の登用を求めている。
今後欧米と同じ基準を適用する可能性もある。


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