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モノゴトを見る目〜今までと違うものが見えるようになりたいなら美術館に行きなさい。その7

「日本刀の華 備前刀」2019年5月22日

今日の一品は、静嘉堂文庫美術館所蔵 曜変天目 (稲葉天目)。

中国の建窯で作られた茶碗のうち、通常は黒く焼き上がるところ、何千個、何万個に1個だけ、七色に輝く茶碗ができあがる。

この奇跡の茶碗は、世界に3つだけあるのだが、驚くべきことに、その3つとも日本に現存する。日本では、この茶碗を曜変天目とよんで珍重してきた。

曜変天目のうち、稲葉家に伝わったものが世田谷の静嘉堂文庫美術館で公開されている。



稲葉天目は、想像より小振りだった。午前中の日差しを受けたからか、白い斑点ばかりが目立つ。

顔を近づけてよく見ると、奇跡の茶碗は、青く輝いていた。見る角度をちょっと変えると、同じところが白や黄に輝く。

ちょっとずつ角度を変えて、茶碗の周りを回りながら、じっと茶碗を見つめていると、その美しさから全く目を離せなくなっていく。

曜変天目には見事という表現は当てはまらない気がする。見事という言葉は超絶技法のような卓越した技量を讃える言葉のように思うが、曜変天目は、何か、自然の美しさを見ているような気にさせられる。

いつか、自分の手のなかに収めて間近で眺めてみたい。

曜変天目の話ばかりだが、そもそも「日本刀の華 備前刀」という日本刀の美術展が主である。

日本刀の美術展は初体験である。日本刀は、人を殺すための道具という認識が強かったので、不吉なもののようにとらえていた。曜変天目をきっかけに日本刀の名作に触れ、美しい工芸品 (ないし美術品) としての世界を垣間見ることができた。

入り口付近の、日本刀の見方というガイダンスがありがたかった。特に刃文は、パッと見た刃文だけでなく、見る角度を変えながら眺めることで、キラキラと輝く刃文も見えてくる。このキラキラが見所の一つという事であった。

展示されている日本刀のキラキラを逐一見ていくと、色々なタイプがあることが理解できてくる。そのうち、あのキラキラより、このキラキラの方が好き、みたいな事になってくるもので、素人ながら、一文字吉房太刀 (いちもんじよしふさたち) の、重花丁子乱れ (じゅうかちょうじみだれ) が、派手な美しさで、最も心に残った。

今まで全く見えていなかったものが、ちょっとだけ見えた気がした。

静嘉堂文庫美術館 2019年6月2日 まで。

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