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燃え尽き症候群

タイトルの通り、何にも力の入らない今日この頃です。

と、noteを更新しない言い訳を呟いたところで、みなさん、こんにちは。

私にとって一番苦手な季節の到来とともに、つい気分までネガティブになってしまいます。でも確かに、燃え尽きた感はあるのです。
というのも、とにかく走りに走った一年間、なんとか五百亀記念館開館10周年の事業をやり切った。というような感じなのです。
正直、辛かったし、苦しかった。なにせ、時間がなさ過ぎる。
焦りと重圧の日々。
でも、その苦しみを乗り越えやり遂げた達成感、喜びは何事にも代えがたい……なんて気分にもなれない。
逆に、これからもその苦しみが続くのか…と思うとゾッとする。
それくらい本当にしんどかった、、、のです。

そんな私の心を癒してくれたのが、展覧会に協力していただいた皆様や鑑賞していただいた方々の温かいお言葉の数々。本当にありがたいです。
褒められてその気になるタイプの単純な私にとって、何よりのご褒美をいただき、元気を取り戻しました!

展覧会ポスター


さて、開館10周年を締めくくる今回の展覧会「安藤義茂の眼」のこだわりは、なんといってもここ!

刀画で描く「女」たち

安藤が、水彩画においても、紙面を削ることで、油彩画同様の効果を得ようと生み出した「刀画」という技法で最も多く描いた「女」たち。ほんの一部に過ぎませんが、これらを整然と並べただけでは「伝えたいことが伝えきれない」と思い切りました。とにかくやってみないとわからない。「何を伝えるか」というテーマとともに、「どのように観せるか」ということへの挑戦でした。

結果、賛否両論あり(笑)

「品がない」と言われようが、私には狙いがありました。
そんなに長くならないと思いますので、作品を鑑賞しながら、今回もどうぞお付き合いください。

※刀画とは
画紙を刀で削り、ミミズ腫れしたような刀痕に見られる、繊維の断たれたところや、ももけた(毛羽だった?)ところに、墨や色が浸透することによって、紙を立体的に表現する描画技法。
「削る」だけでなく、刀で描くとも表現しているように、刀は油絵具の白の役割を持つとか。
先に画紙を削ったり、描いた後に削ったりと、技法は様々。
刀、紙、筆、墨、色彩を使用して描くが、安藤は、特に紙質にこだわった。そう。

安藤が、刀画を始めた初期の作品です。

安藤義茂《花飾りの少女》刀画/モノクロ
昭和19年 個人蔵

目力強め。
ですが、少女のあどけない表情が、モノクロの絵に柔らかさを与えています。


こちらも安藤の代表作の一つ。

安藤義茂《花一輪》刀画/カラー
昭和23年 個人蔵

なんて美しい。惚れ惚れしますね。宗教的でさえあります。



安藤義茂《女》刀画/カラー
昭和20年 個人蔵

見ていて飽きない愛らしさ。癒されます。



安藤義茂《花飾りの女》刀画/カラー
制作年不詳 個人蔵

うーん。なんとも静けさが漂う作品です。



安藤義茂《女の顔》刀画/カラー
昭和30年 個人蔵

うつろな眼。削りも大胆です。



安藤義茂《暗い女》刀画/カラー
昭和27年 個人蔵

ぎゃーーーーーーー(゚Д゚;)



と、安藤が表現した「女」の眼はさまざま。ですが、これらは全て、女性が持つ「無垢な眼差し」であると、今回、私は敢えて表現しました。
というのも、安藤が画家としての天寿を全うしたその背景には二人の女性の存在が大きいと感じたからです。

安藤とともに朝鮮に渡り、慣れない生活で体調を崩し、異国の地で亡くなった冨美子夫人。
冨美子夫人亡きあと、「描くことのみに集中すること」を結婚の条件に安藤の画業を支え続けた百子夫人。
たったの2行で書き尽くせることではありませんが、彼女たちの存在なくしては、安藤は画家として生きられなかった。ということは、多くの研究者の方々も言及されていることですが、今回、私も実感しました。

無垢とは、単にピュアと表現されるだけの言葉ではなく、これらの「女」に表現された「眼」は、どれもが女性のもつ本来の無垢な視線。

美しく、愛らしい「女」よりもむしろ、暗く、恐ろしい「女」の「眼」の方が、力強く生命力に溢れています。

そんな彼女たちが安藤に向けた「眼」を通して、今度は安藤が自身の「眼」で表現したのが、生涯のテーマといっても過言ではない「女」だったのではないか。

と直感。

今回の展覧会名を「安藤義茂の眼」としたのは、そういった意味を込めました。生命の輝きというと、きらきらとした美しいイメージを抱きがちですが、ど根性で生きてきた私には、がむしゃらに、はいつくばって懸命に生きることの方がしっくり落ち着きます。
困難な時代とともに、悩み多き人生を、懸命に生き抜いた安藤だからこそ、「あらゆる生命を慈しむ眼差しで描き続けた」ということをお伝えしたかったのです。

「感動オクアタワズ」

感動せずにはいられない。

洋画家でも日本画家でもない画家・安藤義茂の世界観です。
会期残り一週間。ぜひ、ご鑑賞ください。

ふぅ。予告に反して長くなりましたね。

22日には、大阪のご遺族がご来館くださるとのこと。
光栄です!

さて、冒頭の写真ですが、これは、西条市北条にある、鎌倉時代の武将・河野通有創建の「長福寺」の山門です。

安藤さんの御先祖様は、河野家の菩提寺「善応寺」を守護する武士の家柄であったとか。ご縁を感じ、訪れました。

そして、こちらは、南北朝時代の武将・河野通堯公のお墓。

河野通堯公墓 佐志久山(西条市安用)

立派な五輪塔です。


ん?後ろに見える背の高い木はもしや…?

芭蕉ではないですか?

こんなところに芭蕉が…!

はっ。そうだ。「芭蕉布展」の開催が間近に迫っている。




……。





どうか私に、頭と心の休息をください。

ではまた。


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